精神的に成長した気がする
この子をつれていくのはちょっと難しいよな。俺にはこの後あいつらの様子をこっそり見守り、危険にさらされたら人知れず守るという大事な任務が控えているのだ。でもこの子をここにおいて行ってまた危険な目に合わせてしまうのもなんか違う気がする。そうなると、この子も一緒に連れて行けばいいんじゃないか? 完璧だ。この子にも恩を売れて、さらには仲間も助けれてしまう。これ以上ない案ではないか。よし!! これでいこう。
「いいだろう。俺についてこい。一緒についてきてる間は俺が守ってやる。しっかり俺について来いよ」
「ありがとうございます。この恩はきっと返します。期待しててください」
「そうか? まあ、いつかお願いするよ」
おっと、それはそうと、あいつらもそろそろ着いた頃じゃないか。ここは全体的にモンスターのレベルが高いからな。早く様子を見に行くとするか。
「ちょっと、俺は元パーティメンバーたちの様子を見に行くからついてきてくれ」
「了解しました。でも、なんで元パーティメンバーの方の様子を見に行くんですか? もしかして……ストーカーなんですか?」
「ちげぇよ。昨日俺を追い出したばかりで、高難度クエストに挑もうとしてたから心配でさ。危なくなったらこっそり助けてやろうと思ってるだけだ」
「ずいぶん仲間思いですね。それなのになんでパーティから追放されるようなことになってるんですか? 私はパーティを組んだ経験がないのでピンとこないんですがこんないい人を追放するなんてなかなかですよ」
この子の中では俺はいい人になっているらしい。まあ、助けたみたいな感じになっててされに護衛までしてあげてるんだからな。いい人くらいにはなっててもらわないと困るってもんか。
「まあ、全部話すと長くなるから、かいつまんで話してやるよ。まず俺はAランクパーティのキャプションベーに所属していたんだが、まだ仲間たちが俺のレベルにおいついていなかったから、戦闘には参加せず指示を出すだけの役割だったんだよ」
「はあ、それはちょっとうざいですね」
急に辛辣!! 俺傷ついちゃうぞ!! 今日会ったばかりのレリーナでこの反応だったら、二年間もそれに耐えていたモロヘイヤたちはものすごいストレスになっていたんじゃないか? 俺もちょっと反省しよう。
「しょうがないだろ。俺が戦闘に参加してもあいつらのためにならないんだからさ!! 俺だって一緒に戦いたかったけど我慢して指示役に徹してたんだぞ」
「ヘーシンさんの言い分はわかりました。確かにレベルのかけ離れた人が戦闘に参加して一瞬で終わってしまうなんてことはなんの経験にもなりませんからね。でも、それを仲間の方にちゃんと説明してたんですか?」
「してたぞ。まだその時じゃないって。毎日のように言っていたんだ!!」
まだその時じゃなかったのは事実なんだ。俺はあいつらと一緒に戦いたくて、成長してほしいと思ってこう言ってきたんだからな。
「逆に自分がそれを言われる立場になって考えてみてください。毎日毎日指示だけで戦闘にも参加せずにまだその時じゃないってばかり言っている人をヘーシンさんはどう思いますか?」
「……うざい。くそぉ!! 俺はこんなにもうざいやつだったのか。そりゃ、モロヘイヤが怒り狂って俺のことを追い出すわけだ。俺は二年間もあいつらにこんな仕打ちをしていたというのか?」
「え!? 二年間も戦闘に参加せずまだその時じゃないって言ってたんですか? 正気ですか? 私だったら一か月と持たないうちに寝込み襲って亡き者にしていますよ」
いや、殺さなくてもいいじゃないか。でもそのくらいのことをしていたということか。はあ、こうやって人の意見にも耳を傾けるってのは大事なことだな。おかげで俺一人だったら、一生気が付くことができなかったことに気が付かせてもらった。これで、あいつらともう一度パーティを組める日がぐんと近づいたな。きっと間違いない。
「ありがとう。俺はこんなにもあたり前なことにも気づかずにあいつらにひたすら不快な思いをさせていたんだな。今度あいつらにあった時は俺の真の実力を披露してパーティに戻してくれってお願いしてみることにする」
「やめておいたほうがいいと思いますよ。本当の実力なんて見せたら、この二年間、心の中で馬鹿にしてたんだろ、みたいなこと言われて逆効果になる未来が私には見えます」
「そんな馬鹿な。戦闘に参加したとしても俺にはもうキャプションベーに戻ることはできないっていうのか?」
「もう一度相手の気持ちになって考えてみてください。二年間も指示ばかりでまともに戦わないでパーティから追放した人が実はとんでもない強さでしたって帰ってきてヘーシンさんは素直に受け入れることができますか?」
なんだそいつ。とんでもないな。自分だったら余裕で倒せる敵にもう少しだ頑張れ!! とか言って応援してたらなお最悪だ。ちなみに俺はやっていた。
「馬鹿にしていたとしか思えないな。はあ……俺はこんなにもあいつらのストレスの種でしかないのか」
「落ち込む必要はありませんよ。これから新しい仲間を見つけてパーティを組めばいいじゃないですか。気を取り直して下さい」
「でもあいつらのことを忘れて、ほかのパーティなんて無理だ!!」
「忘れろなんて誰も言ってませんよ。切り替えて行くんです。前に進まないといつまでたってもこのままストーカー生活を過ごすことになりますよ」
そうだな。俺もリセットして新しい人生を進み出さなくちゃな。