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まだその時じゃなかっただけなんだ

「いまだ!! モロヘイヤ!! とどめをさせぇぇーー!!」


「うおりゃーーーー!!! これで終わりだーー!!!」


 俺の指示に完璧に反応したモロヘイヤの上段からの斬り下ろしがニードルスネークの最後の足掻きにけりをつけた。


「やったわね、モロヘイヤ。これで私たちもAランクパーティに昇格よ」


「ああ、ポンピン。これもみんなで協力して頑張って来た成果だ。今日も攻撃魔法が冴えわたってて最高だった」


「おいおい、俺のサポート魔法も貢献してることを忘れんじゃねぇぞ。モロヘイヤ、ポンピン」


「もちろんわかってるさ。カポンスのサポートがあってこそ最高のパフォーマンスがだせてるんだから。ヘーシン以外の誰がかけてもこの結果にはならなかったと思う」


 ほい? この雰囲気で俺以外ってなんぞ? 俺は役に立っていないってことか?


「そうね。結局こいつはこの二年間一番後ろで腕組んで偉そうにしてただけだしね? ヘーシン」


「いつも言ってるだろ? 俺が戦闘に参加してしまったら、お前らのためにならない、まだその時じゃないって」


「せっかくのお祝いムードなんだ水をさすのはやめてくれヘーシン。ほら、みんなもギルドに帰って報告するまでがこのクエストだ。それさえ終われば僕たちは自他共に認めるAランクパーティになることができるんだ」


 少々納得いかないが、ここでごねるほど俺も子供ではないつもりだ。今日はめでたい日なのだ。俺も酒でも飲んで目一杯

浮かれよう。






「おめでとうございます。これで冒険者パーティ【キャプションぺー】の皆さんは晴れてAランクパーティに昇格です。これからはこの町の冒険者たちを引っ張る存在として頑張ってください」



「「「「おおおおおぉぉぉーーーーー!!!!!」」」」


 ギルド中の冒険者たちが歓声を上げた。


「ついにこの町からもAランクパーティがでだぜ!!」


「2年前はまだひよっこだった奴らだなぁ。先を越されちまって悔しいなぁ!! 頑張れよ」


「俺はまだお前らのことを認めたわけじゃないからな!!」


 思い出せばこの二年間は激動の日々だった。冒険者ギルドの門をたたき、必死の思いでクエストをこなす毎日。くじけそうになるたびに俺がみんなを諭してやったっけな。


「ありがとう!! 僕たちはこれからは伝説の冒険者、Sランクパーティを目指して頑張るよ!!」


「「「「おおおおおぉぉぉーーーーー!!!!!」」」」


 最後のモロヘイヤの言葉に今日一番の歓声が上がり解散となった。





「「「「かんぱーーーい!!」」」」


 俺たちは、昇格祝いに酒場へと足を運んでいた。


「苦節二年……長かったな……」


「どの口が言ってるのよ。ヘーシンは腕組んで偉そうに指示出してただけでしょ」


「ほんとだぜ? いつになったら真面目に戦闘に参加するって言うんだよ?」


「だから言ってるだろ? 実力がはるかに上の俺が戦闘に参加してしまったら、お前らのためにならないって、まだその時じゃないんだ」


「うるせぇぇぇーーーーー!!」


 突然の叫び声に俺たち三人は反射的にモロヘイヤの方を向いた。

 いつも冷静で頼れるパーティリーダーのモロヘイヤが一体どうした? 別段うるさい客なんていないっていうのに。


「みんなすまない。ちょっと冷静さを欠いてしまった。ポンピン、カボンス。二人に提案があるんだ。ヘーシンは僕たちのパーティに必要ない、クビにしようと思う」


 モロヘイヤ一体何を!?


「ヘーシンはこの二年、ただの一回たりとも戦闘に参加すらしていない……おかしいとは思わないかい?」


「確かに、ヘーシンはなんていなくても何も変わらないわ」


「言われて見ればその通りだぜ」


「待ってくれよ。今はまだその時じゃなかっただけなんだ」


「うるせぇぇぇーーーーー!! もうそのセリフは聞き飽きたんだ!! 僕はヘーシンのそのセリフを聞くたびに頭の血管がブチ切れそうな程にムカついて仕方ないんだ。なにがまだその時じゃないだ!! 2年間もなにもしないでよくまだそんなふざけたことが言えるんもんだ。どうせ、大した強さでもないのに引っ張りすぎて収拾がつかなくなってるだけだろうが!!」


「違うんだ聞いてくれ。本当にまだその時じゃなかっただけなんだ」


「まだ言うかーーーー!!! ……もういい、僕の目の前から消えてくれ。これ以上は耐えられそうもない」


 モロヘイヤの圧力にただただ俺は従うしかなかった。


「悪かった。俺がどうかしていた。次からは戦闘に参加させてくれ。ただまだその時じゃないから、いきなり全力でってわけにはいかないが……」


「殺す!!! こいつを殺すーーーー!!!」


「やめて、モロヘイヤ!!」


「おい!! それは洒落にならねえって!! ヘーシンお前早くどこかへ行け。ほんとに殺されるぞ」


 俺に襲い掛かろうとしたモロヘイヤを二人が抑えてくれた。

 まさかこんなにもモロヘイヤにストレスを与えていたとはな。俺は一度距離を置いた方が懸命だな。


「わかった。俺は出ていくよ。だが、その時が来たらきっと帰ってくるからな!!」


「うがーーーーー!!!!」


 尚も暴れるモロヘイヤを背に俺は夜の街へと歩き出した。



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