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ラフネの造花  作者: 面映唯
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 ――優しい人が困っていたからやった。


 新聞の二面には大きなゴシック体で書かれていた。佐久平駅で人身事故――写真には立ち往生するE7系はくたかと、ホーム内に蔓延るマスクの警察関係者、広げられるブルーシート。縦見出しには、「東京の女子高生、佐久平駅で男性を人身事故に誘導」と書かれている。


 記事には事件の概要が書かれていた。援助交際の現場を目撃された女子高生、窪田夕夏が、男性、瀬尾(せお)(はるか)を態々佐久平駅にまで連れてきて殺したとのこと。


「見られたのが恥ずかしかった」

「誰にも広めてほしくなかった」

「なかったことにしたかった」

「だから殺すしかなかった」


 あくまで援助交際だと女子高生は言うが、その供述はまるで同意のない性行為後に嘆かれる女性の本音――と記者は綴る。


 夕夏はテーブルに置かれた雑誌を手に取る。いつの間にか男の姿(人身事故当時の服装)に戻った瀬尾から手渡された週刊誌には、もっと事細かく書かれており、当然だが、新聞よりも憶測を含んだ表現が多く記載されていた。


「彼女は身寄りがなかった」

「親代わりだった祖母をこの歳で介助」

「ワーキングプア」

「チャイルドソルジャー」

「小学生の弟のために高校中退」

「制服は援助相手の趣味」


 どれも被疑者の生活環境、家庭環境についてだった。環境がすべてものを言い、人の性格も人生も全て決めてしまうような書かれ方だ。


 環境を整備すれば――トンボでグラウンドを馴らすように環境も凹凸をなくし、ふかふかにすれば本当に何もかもうまくいったのだろうか。


 うまくいく――その「うまく」の基準は、どの程度で、誰が決めるものなのか。完璧な人生など存在しないのなら、彼らの望んだ、彼らの見ている女子高生の生活環境とは。


 よくて、ないものねだりじゃないか。



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