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鎧のような礼服

「ふぅ......お待たせしました」


やっとアミリアさんが落ち着いたようだ。

俺は部屋に入り、渡された服を広げて確認をする。


「やっぱり......服の重量ではない気がするんですが......」


「まぁ、最初はそう思いますよね。私も鎧かと思いましたし......」


その服は、装飾やら貴金属やらが付けられた服が重ねられているというつくりをしているため、重量がかさんでしまうのにも納得だった。

鎧、という表現はその通りだと感じていた。重量は皮の鎧ぐらいあるし、体の大事なところには金属が多く集まっている。守るためではないとはいえ、鎧のような役割を果たしている。


「着るのにどれくらいかかるでしょうか」


「そうですね、もう着替えてしまいましょう」


「そんなに時間がかかるものですか......」


今はまだ昼だというのに、もう夜の礼服を着るのかと思うと流石に驚く。

が、その言葉をアミリアさんが否定した。


「このままだと、異教徒と間違われても仕方がないですからね。それに――――いえ、何でもないです」


そういえば。

俺の服は、白い服こそ着ているが教会のそれではない。

食堂では人が多かったから注目こそされなかったんだろうか。


「そうですね、でもこれで動き回るのは......」


「まぁ、大丈夫ですよ。そこまで動く予定もないですし。式が終わればすぐに脱いでしまっても問題ないですから」


それなら大丈夫か。

どれくらいの時間なのかはわからないが、体感が昼、三時頃だと告げている。

これから夜――――七時くらいまで待つのは大変だが、動くにしても動かないにしても、その服を着ておいて損はそこまで無いということだ。


「わかりました、ちょっと着替えますね」


そう言って暗にアミリアさんに部屋から出て行ってほしかったのだが、アミリアさんは動く様子がない。


「あの、着替えたいんですが......」


「大丈夫です。お手伝いしますから」


アミリアさんはにっこりと、俺の持っている服に手をかけた。

まぁ見られるものは既に見られている――――可能性の話だが――――から、今さら着替えようとそこまでって話か。

見ただけで着替えて、どこか間違えたら二度手間だし、ここはお願いしておくか。


「よろしく、お願いします」


それでもまだ恥ずかしい。


「えぇ、お任せください」


少し顔を赤くして、アミリアさんは服を広げた。






「これで終わりです」


「はえ......」


服を着替える、と思っていたが、上からどんどんと重ねていく着方をするため、インナー系を脱ぐことはなかった。

それでも難解な着方をするものが多く、正直いてくれて助かった。


「ありがとうございます。これで式まで待てば――――」


「そうですね、待つ時間があれば――――」


アミリアさんは、どこか申し訳なさそうな表情で目をそらし、頬を掻いた。

そして数秒後に、その理由が明らかとなった。


「失礼します」


ノックと共に、案内の女性が来た。

何を言いに来たのか、と思った瞬間だった。


「礼服もしっかりと着られていますね。では式を行います」


......え?

困惑するしかなかった。


式を行う、と聞こえた。


「今、何時ぐらいだと思います?」


「てっきり四時ぐらいかと」


「やっぱり、でしたか。今はもう七時なんですよ」


俺は唖然とするしかなかった。

あれだけ身についていると思っていた技術が、完全にあてにならなかったからだ。

だが、仕方のない面もある。

試練のせいで、そもそも起きた時間がわからず、三日後という情報だけだった。

そしてこの環境。時計はもちろん、日の光も入ってこない閉鎖空間。


結果、情報修正されることなく、自分自身の体内時計が狂っているまま進んでしまったと。


「これは鍛錬のし直しか......」


時間を知ることが出来る何かを手に入れるか、身に着けるしかない。


「さて、式に行きますよ!」


アミリアさんに背中を叩かれる。

バンとは鳴らず、ポスン、と音が鳴る。

これはアミリアさんの力故か、礼服の防御力故か。


「わかりました」


きっとどっちもだろうな、と思いながら、俺は「案内します」と先導する女性の指示に従うのだった。

投稿ミス陳謝。

次回2/3の夕方更新です。

これから物語の加速をできれば、と思っていますので、「前置き長ったらしいな!」と思った方も、気長に、もう少し読んでいただけると幸いです。そう言う癖なんです。許してください。

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