違和感の正体
ごめんなさい、いつもの頭痛が。
本日二回になってしまったので、明日、お詫び四回......は無理なので、三回を二日で許してください。
「こんな夜にどうしたんですか? ロードさん」
聖女様の声が聞こえた。
それは後ろから、鈴の音のように。
心がどきりとしてしまったのは、きっと急に声をかけられたからだろう。
「早く寝てしまったので、もう眠れそうになくて」
「あぁ、分かりますよ。私も眠れない夜は何度もあります」
聖女様は隣に座った。
距離は一気に縮まった。
「ロードさん、私は、とても驚きました」
「どうしたんですか、急に」
驚いたことが、何かあっただろうか。
そう思い、どんどんと思いだしていると――――そういえば、一つあった。
「作戦の時に、そういえば......」
思いだした限り、それしかなかった。
他に何かあっただろうか? と思いだしていると、聖女様が「それです」と俺の思考を遮った。
「そうなのです。何も、感じなかったというのですか?」
俺はその時を必死に思いだす。
何かあっただろうか......と必死にその時の状況を思い出す。
あの時は......確か、聖女様がセリフとともに、バフをかけて、俺も影からバフをかけて、あのギルド所属の集まってくれた人たちが、バフを受けて――――?
その時、ある違和感が脳裏によぎった。
そしてすぐにその違和感に気付いた。
「バフが、重ね掛けされた?」
バフは、基本的に重ね掛けをすることが出来ない。
それは、魔法としての性質で、覆せない法則だったはず。
だというのに、あの時彼らはなんと言っただろうか。
――――「さっきよりも、強い力を感じる」――――
俺が後出しで魔法を使用したから、普通は俺の魔法が優先されて、さっきと同じ力になるはずだ。
だというのに強くなったというのは、その理由しか考えられない。
「そうです。バフが、重ね掛けされたんです」
そして、聖女様からの肯定が入った。
「バフというのは、基本的に重ね掛けできない。それは、一人一人の魔法の質が違うからです」
聖女様から、説明を受ける。
魔法の質が違う、それは一人ひとりの持つ魔力は、どれも規格化された魔法を使用できるくらいには統一性こそあるものの、どれも違うというものだ。
例えるならば、パレットに出された色とりどりの絵具は、どれも絵具であり色だが、混ざりあったその色に同じものは一つとない、というものだ。
「繊細なバフは、その影響を強く受けます。だからこそ、私は驚いているのです」
俺も、恐らく聖女様が抱いている可能性に気付いてしまった。
それは――――
「限りなく、二人の魔力の質が同じ」
「その通りです。聖女と呼ばれる私と、ほとんど一緒」
俺は聖女様のほうを向いた。
聖女様の顔色は白黒のこの世界ではわからなかった。だが、その表情は微笑んでいた。
「私は、正直運命だと思いましたよ」
聖女様は、空を眺める。
俺も空に目を向けた。
月はまぶしく光を下ろし、星は周りを踊っている。
こんな風景を、二人で見られるとは。
「運命、ですか」
「運命でしょう、ただでさえ、聖女と認められるほどに特異な質なのに、そしてその聖女同士でもこんなことはなかったのに」
そして、聖女様はある言葉を、口にした。
「ロードさん、もし、あなたが良いと言ってくれるなら、ある魔法を試したいと思っています」
「ある魔法、ですか」
その試したい、という言葉から、突飛な発想と仮説によって成り立っている考えだということが考えられた。
「内容だけでも、聞いてもよろしいですか」
どんなことを言い出すのか、俺には想像もつかなかった。
だが何か言っても、きっと大丈夫だろうと、きっと世界のためになると、そう思っていた。
そして二人しかいない中、もし成功すれば世界を揺るがしかねない魔法名を口にした。
「神位生命蘇生儀式魔法『リザレクション』」
その言葉だけで、俺には十分だった。
次回更新は明日1/31の深夜帯予定です。少々お待ちください。




