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就職希望:治療院

 そして、今に至る。

 所持金は三枚の銀貨――――節約して生活費一、二日分――――程度と、荷物が安物の杖一本とローブ二着とインナー二着。金になりそうな物はなく、これから生活するのは至難である。

 とはいえ、これから戻って「生活費をくれ」とか言えるわけもなく、とりあえず宿代を節約するため致し方なく夜の街をさまよっている。


「どうしようか......」


 俺の得意な魔法が回復とバフという完全な後方支援型ということもあり、ソロで戦うことはもちろん、信頼関係が重要なバフを日の浅い人に任せるということもほとんどない。

 魔物と一対一で戦った日には――――相手にもよるが――――負けることが目に見えている。


「どうしようか......」


 誰にも届かないつぶやきをしたところで無駄なことくらいはわかっている。

 だけど、呟かずにはいられなかった。


 大通りを歩く。

 裏路地を歩けばこの時間帯、どんな面倒ごとに巻き込まれるか分かったもんじゃない。

 本来はこの時間帯は表通りですら安全とは言い難いものの、致し方ないから歩く。

 ぐぅぅ、と腹の虫が鳴る。

 そういえば、パーティーの装備を修理していたから夕食を食べていなかった。

 思いだした瞬間、どんどんと空腹はひどくなっていく。


「金はないってのにな......」


 いくらぐちぐちと言っても仕方ない、と、とりあえずギルドへと足を運ぶのだった。




 ギルド。

 よく言えば何でも屋、悪く言えば雑用。

 街を壊しかねない魔物――――人類の敵を倒しに行ったり、商人の護衛と言った王道な仕事から、薬草採取という子供のお使いのような仕事や下水道の清掃だったり、必要だが、誰も好き好んでしないであろう仕事も回ってくる。

 まぁ仕事、と言っているわけで、もちろん報酬として幾分かの金銭が受け取れるため、日々そこに通って依頼を受けて、その報酬で生計を立てている人が大勢いる。

 俺もその、一人だった。


「まぁ、追放された以上討伐依頼は受けられないからな......」


 二十四時間営業しているギルドの、依頼一覧を見てため息をついた。

 後ろにある時計を見て、またため息を吐く。短い針は二を指していた。つまり夜もやっと峠を越えたあたりなのだ。人はもちろんほとんどおらず、パーティーを組もうにも誘う相手がいない。

 朝になるまでまだまだだな......と、異世界の勇者がかつて伝えた技術である時計を見て、ため息を吐いた。

 とりあえず腹の虫を収めるか、とギルドに併設された酒場に入る。

 数時間前までは客がいたのだろう、酒臭さが未だに漂っている中、俺は一人注文を入れた。


「スープ一つ」


「あいよ」


 不愛想な返事が奥から聞こえた。

 スープはこの酒場でも最安値を誇るメニュー。味付けは野菜の切れ端の出汁。

 一つだけで腹の虫が収まるか、と不安になるものの、今何も入れないよりはましだ、と腹に流し込む。


 もういっそのこと定職を探すか......? と思い、何か思いつくものを挙げていく。


「治療院......孤児院......闇医者?」


 いくつか、候補を挙げてみる。も、そもそもバフがそこまで長続きする魔法ではないため定職にするのはまぁ無理だ。

 他は......と考えてみるも、特に思いつかない。

 が、正直孤児院に俺みたいな男を養うだけの資金があるとは思えない。

 というのも、あの施設は基本的に寄付によって成り立っているからだ。

 俺は脳内から孤児院という選択肢をいったん消して、とりあえず明日は治療院に向かってみることにする。




 翌日。俺はすぐに治療院へと向かった。


「いらっしゃいませ、どうされましたか」


 神官服の女性が受付をしていた。

 一応、宗教的なものを兼ね備えた治療院のようで、しっかりと服を着こなしていた。

 俺は宗教はそこまで熱心ではないが......ここに入信しないといけないとかだったらどうしよ。

 なんて無駄な考えを一度放り出して、受付の女性に問う。


「今治療員を雇ってたりとかしませんか?」


 どれだけ遠回しに聞いても意味がないので率直に聞いてみる。

 すると「少し待ってください」と、神官服の女性が裏側に入っていく。

次の話は1/20午前を予定しております。

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