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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第六章

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エンティナ領編ー24






 間一髪のところでセレナの剣撃を受け止めたシエルはすぐさま彼女の剣を振り払うと反動で体勢を崩しかけた彼女を見逃すことなく、すかさず追撃の一手を放っていた。



 「領主様、ご無事ですか」


 「あぁ、悪い。助かった」


 「セレナ様の技のキレ、スピード、威力どれをとっても本来の物には遠く及びません。本来ならわたし如きが彼女の剣を止めることなど出来はしないのです」



 つまり、彼女がもし本気を出していたら、今頃俺はゲームオーバーになっていたって事か。


 

 「領主様、どうかくれぐれもご注意を」


 「わかった」



 

 

 セレナと対峙してからもう既に十数分が経過しようとしていた。



 俺たちが何とか彼女と渡り合えているのは彼女のその単調な戦いぶりにあった。



 彼女の剣技はまさに一流そのものではあったが、まるで糸に繋がれ操られている人形の様にただただひたすら攻撃を繰り返すのみ。


 そこに駆け引きなど一切存在しなかった。



 だが、それでも俺たちはその圧倒的な力の前に彼女を捉えきれずにいた。




 



 風魔法“風鎧”ヴェント・アーマー




 ヴェント・アーマーとは中級の風属性魔法で、風の鎧を纏い斬撃などの攻撃から身体を守る防御魔法である。



 風鎧を纏ったラフィテアは剣に手を当て地面を蹴り上げるとセレナに対し正面から真っ直ぐ突貫していった。


 「ラフィテア!」


 叫び声が虚しく響く中、臆することなく飛び込んでくるラフィテアにセレナは小剣を構えると躊躇うことなく頭上から地面に向かって神速の一閃を放ってみせた。



 本来なら音速を超える一撃はラフィテアの剣がセレナに届く前に彼女の息の根を止めているはずだった。

  

 しかし、剣先がラフィテアの身体に触れようとした瞬間、彼女を守るように幾重にも包む風の鎧がセレナの剣を受け流し無理やりその軌道を変えさせたのだ。


 セレナが剣を振るうと同時に放たれたラフィテア渾身の一撃は無防備となったセレナの身体を今まさに捉えようとしていた。






 「――くっ!」




 低いうめき声と共に左腕からぽたぽたと赤い血が止めどなく地面にしたたり落ちている。


 セレナは右頬についた小さなかすり傷など気にも止めることなく、ただ淡々とした表情でラフィテアの前に立つと、とどめを刺すべく剣を大きく振り上げた。

 

 

 ヴェント・アーマーによって致命傷を避ける事に成功したラフィテアだったが、いかに風鎧と言えどセレナの斬撃を無効化するには至らなかった。



 軌道の逸れた小剣はラフィテアの命を奪うまでには至らなかったが、左肩から腕にかけて風鎧ごと身体を切り裂き彼女に深手を負わせ、一方体勢を崩したラフィテアの一刀はセレナの右頬にかすり傷を負わすのが精いっぱいだった。



 

  

 「フレデリカ!」



 後方に待機していたドワ娘が俺の合図とともにすぐさま魔法の詠唱を始めると、それと同時にラフィテアを助けるべく俺とシエルは左右から挟み込むようにセレナを強襲した。



放たれたシエルの剣は難無く交わされ二撃、三撃と虚しく空を斬っていく。続けざまに放つ二刀の斬撃も彼女を捉える事は叶わなかったが、手を休めることなく続く二人の猛攻にここに来て初めてセレナは一歩一歩後退し始めた。



 決めるなら今しかない。


 

  好機とみるや二人の斬撃は更に激しさを増し、今まで小剣一本でいなしていたセレナにも徐々にではあるが綻びが見え始めた。

 


 竜巻の様に飛び交う三人の斬撃。


 無数の傷がお互いに刻まれていく。



そして遂に、防戦一方となっていたセレナの足がピタリと止まり、その刹那、ドワ娘の魔法がセレナを捉えた。



 一瞬大地が波打ったかと思うと氷の様に固く冷たかったはずの地面が突然泥深くじめじめした底なし沼の様に変貌しセレナをゆっくり呑み込んでいったのだ。

 


 「シエル、離れるんだ!」


 「はっ!」



 掛け声とともに後方に大きく飛びのくと、セレナただ一人沼地に足を掴まれ身動きが取れなくなっていた。



逃げ出そうと藻掻けば藻掻くほど彼女足は深く沈み込み、地面から伸びた無数の手が踝を掴み、あっという間に膝上まで大地に囚われしまっていた。



そして気がつけばぬかるんだ地面はコンクリートの様に固くなり、そこはまさに大地の牢獄と化していた。



 


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