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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第六章

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エンティナ領編ー6







 「領主様、お時間よろしいでしょうか?」



 シーナの入れてくれたホットオレンジティーを片手に今月の収支書に目を通していると、心なしか元気のない様子のラフィテアが書類を抱え脇に立っていた。


 「ん? どうした?」


 「はい、実は例の件の調査が終わりましたので、そのご報告を」


  例の件?


 一瞬何のことか分からず頭の中をぐるりと一周したが、目の前の書類を見て直ぐに思い出した。


丁度一ヶ月ほど前にラフィテアに頼んだエンティナ領及びドウウィンの調査報告書だ。


 「で、どうだったんだ?」


 「はい、マルコの言っていた事にほぼ間違いはないと思われます」


 「そうか……」


 「領地税は調査を開始してからこのひと月だけでも既に二度も上がり、物価の上昇も続いています。ドウウィンの住人の数もおおよそですが半分程度にまで減少していて、今も流出が止まらない状況です」


 「だろうな。ドウウィンはエンティナ領の中では二番目に大きな街なんだろ?」


 「はい。エンティナ領にはドウウィンの他に領主エンティナ・オバロ・ベータグラムの屋敷があるマグレディーがあります。他にも小さな村がいくつか点在していますが、大きくはその二つと考えて問題ありません」


 

 「エンティナ領の領主はドウウィンの現状をちゃんと把握しているのか?」


 「さぁ、どうでしょう。それに関してはわかりかねますが、あの男の事です。ドウウィンの税収が極端に落ち込まなければ然程興味を示さないと思います」


 ……あの男?


 「そう言えばラフィテア、以前エンティナ領主の元で働いていたと言ってたよな」


 「はい」


 「という事はエンティナ領主の事を知っているんだよな?」


 「えぇ、存じています」


 「オバロ・ベータグラムはどんな人物なんだ?」


 「どんな……そうですね、一言で言えば利権や権力にしか興味のない私利私欲の塊みたいな男です。今回の件も起こるべくして起こったと言えるかもしれません」


 「私利私欲の塊ね。そんな奴がよくエンティナ領の領主をやってこれたな」


 「非常に残念な事ではありますが領主は基本世襲制ですから。貴族の家に生まれたというだけで何の才がなくとも領主という将来が約束されているのです」


 「頭の痛くなる話だな。そこに暮らす領民が不遇でならないよ。それにしても今までよく問題にならなかったな。もっと前から今みたいな状況になっていてもおかしくなかっただろうに」


「先代のエンティナ領主は領民からも慕われ、国王も全幅の信頼を寄せた傑物でした。当時彼を慕ってエンティナ領に仕えてきた人たちが支えていたのでしょう」



 「なるほどな。となるとその縁の下の力持ち達でもどうしようもなくなったのか、それとも彼らがエンティナ領を見限ったのか」



 「それはわかりませんが、元来オバロは家来の進言に耳を傾けるような男ではありません。皆、陰ながら上手くやっていたのでしょうが……」


 「そうか。ところでクロマ商会は何か言ってきてはいないのか? 一応ドウウィンはクロマ商会の本拠地だろ?」


 「実はその事でラック様に一つご報告があります」


 「なんだ?」


 「はい。そのクロマ商会なのですが、先日クロマ様がお見えになってドウウィンからこのオルメヴィーラ領にクロマ商会の拠点を移させてほしいとのお話がございました」


 「そりゃ構わないけど、そんな簡単にドウウィンから離れていいのか?」


 「拠点を移すと言ってもドウウィンで商売は続けると思います。ただこれだけ領地税が上がり、領民が減るとなると拠点を置くメリットは殆どないのでしょう」


 「向こうがそれで良いならこっちとしては歓迎だけどな」


 「ではクロマ商会に返事をしてもよろしいですか」


 「あぁ、よろしく頼む」


 「かしこまりました」


 「ドウウィン及びエンティナ領に関しては、一応現状について王国に報告しておこうと思う」



 「よろしいのですか?」



「あぁ、念のためにな。魔族との戦いの最中、わざわざこんな事で王国が動くとは思えないけどな。忙しいところ悪いんだけど、さっきの調査書をまとめておいてくれないか」


 「はい、近日中には」


 「ありがとう、ラフィテア」


 エンティナ領主オバロ・ベータグラムか。


 このまま何もなければいいんだが……。




 ――トン、トン、トン


 ん?


 「失礼します、領主様」


 

 丁度ラフィテアの報告が終わったタイミングで、ノックする音に続き扉が開きシーナが一礼し部屋に入ってきた。



 「どうしたんだ、シーナ」


 「あの、領主様にどうしても面会したいという方がいらっしゃってるのですが……」


 「俺に面会?」


 「はい」


 俺、何か約束してたか? いや覚えがないな。

 

 ちらっとラフィテアに目をやるが、彼女はスケジュールを確認すること無く首を横に振った。


 「どうしますか、領主様」


 「そうだな。どうしてもって言うんだろ? 何か重要な話かもしれないし、シーナ通してやってくれ」


 「わかりました」


 「ちなみにどんな人だった?」


 「えーっと黒い服を着ていて、背の高い灰色の髪とお髭の男の人でした」


 「そうか」


 どうやらオルメヴィーラの領民ではないようだ。


  俺はその面会希望の客人とやらを迎えに行くようシーナに手で合図すると、彼女はその場で一礼し部屋を出ていった。


 「灰色の髪に髭の男性、まさか……」


 「ん? どうしたラフィテア」


 「いえ、何でもありません。ラック様、私はこれで失礼いたします」


 「ラフィテア、悪いんだけどラフィテアもいてくれないか?」


 「よろしいのですか?」


 「あぁ。その方が俺も助かる」


 「わかりました」




 少しして廊下の向こうからシーナともう一人の足音が近づいてきた。


足音が扉の前で止まり軽いノックに続きゆっくり扉が開くと、そこには如何にも紳士風の老齢の男性が立っていた。








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