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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第五章

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大ルアジュカ山脈編ー10





「おいっ、お前ら! 危ねぇからもう少し下がれや!」



 現場を仕切っている白髭のドワーフが馬鹿でかい声で注意を促す。



 念の為もう一度ぐるりと辺りを見渡し誰もいないのを確認すると、手に持っていた火炎瓶に火をつけ小さな穴に勢いよく放り込むと、ドワーフは急いでその場を駆け下りた。



 ――次の瞬間



 白い閃光と共に耳をつんざく様な激しい爆音が鳴り響き、巨大な岩盤が土煙を上げ崩れさった。



 ドワ娘と俺は岩陰に身を隠し言われた通り両手で耳を覆っていたのだが、それでもしばらくの間鼓膜の奥がキーンと鳴っていた。



 大ルアジュカ山脈に到着した翌日、早速採掘作業が始まっていた。


 作業現場は昨晩拠点にした場所から数百メートルしか離れていない切り立った断崖の麓。


 どうやらここから北側に向けて掘り進めていくようである。



 「それにしてもまさか爆薬を使うとはな」



 辺りを覆っていた土煙はあっという間に山風に流され、目の前には大きな穴がぽっかりと開いていた。



 「こんなに大量の爆薬を使うのは最初の方だけですぜ、旦那。そうさな。あと二、三回使ったらあとはそこからずっと手掘りの作業ですぜ。あれを鉱山内で使おうもんなら全員生き埋めになって死んじまう」

 

 「そりゃ、確かにな。それで鉱脈まではどれくらいありそうなんだ?」



 「そうじゃな。ここから数十メートルも掘り進めればお目当ての物にたどり着けるじゃろ」



 「鉱脈ってのは大体地下四千メートルくらいの割れ目や断層に沿って出来るからな。この山脈の麓から向こう側に真っすぐ掘っていけば、まぁまず間違いねぇだろうよ。


 ――おいっ! ザック」



 「は、はいっ! 親方」 



 「こっちの作業はこのまま進めておくからよ。そっちはそっちで拠点の設営、坑道の補強に使う木材、それからトロッコもちゃんと準備しておけよっ!」



 「はい、わかりました」



 「んじゃ、旦那。そういう訳だからこっちの事は俺たちに任せて大船に乗ったつもりでいてくれいいぜ」


 「あぁ、助かるよ」



 「おぅ! てめぇら姫様がいるんだ。いつも以上に気合入れてやるぞっ!」



 「「「おう!」」」



 威勢のいい掛け声とともに男衆はつるはしを担ぎ山の斜面を駆け上っていく。


 さすが土の民ドワーフ族。皆頼りになる。


 慣れない作業に最初は戸惑っていたサビーナ村の若い衆も徐々に慣れてきたのかお互い声を掛け合いながら生き生きと働いている。


 

 「こうして違う種族が協力し合っているのを見ると父上のしようとしていることが間違っていないと、そう思える」



 「あぁ、そうだな。トールキンにも見せてやりたかったな」



 「そうじゃな」



 「さて、ここは彼らに任せて俺たちは俺たちに出来ることをしますか」




 一先ず拠点に戻った俺とドワ娘は作業の邪魔にならないよう、端の方で地図を眺めていた。



 「ギムリたち木材調達班が伐採しながらここまで道を造るのに早くて半年。人員の補充が出来そうなら食糧や資材の補充と一緒に来てもらうようラフィテアに頼んであるから……、いやそれを計算に入れたとしてもこれ以上期間を短くするのは無理か」


 「そうじゃな。鉱山もいくらドワーフ族とは言え一日に掘り進められる距離は精々5メートルが良いところじゃ。ノジカの書いてあったものを全部揃えようとするとやはり同じくらい時間はかかるじゃろう」



 「そうだな。そればかりはしょうがない」



 となるとだ。



 今いるこことギムリ達が拠点にしている場所にはそれなりの宿泊施設は必要になってくる。まぁ、その辺も一応織り込み済みなわけだが、この先もっと長期に渡って使う事も考えないといけない。


 その他にも輸送やらなんやらと色々問題があるわけだが、その辺は取り敢えず先送りにしておくとして、いま俺たちが解決しないといけないのはまずあの問題からだ。



 そう農業用水の確保

 


 雪解け水が長い年月をかけこの大ルアジュカ山脈地下深くに浸透し、この大陸全土を潤している豊穣の水。


 多少なりとも地下水はオルメヴィーラにも流れてきてはいるようだが、大地を潤すには到底及ばない。


 そこでドワ娘の魔法で地下深くにある水脈の流れを調べてもらい、川や海に流れ出てしまっている地下水を何とかしてオルメヴィーラ領地に通すのだ。



 「本当にそんな事出来るんだろうな?」



 「おぬし相変わらず心配性じゃの。わらわが大丈夫だと言っておるのじゃ。もう少し自分の婚約者を信頼した方がよいと思うぞ」



 「誰が婚約者だ」



 とは言えここはドワ娘を信じる他ない。


 魔法を使って水脈の流れを変えるか。そんな事考えたこともなかった。


 いや、その前にそんな事簡単に出来たら色々と問題が起こりそうな気もするが……。


 いまは深く考えるのは止めておこう。



 「じゃ、早速だけど頼む」


 「うむ、任せておけ」



 ドワ娘はそう言って立ち上がり開けば場所まで移動すると、量膝、両の掌を大地に付け祈りを捧げ始める。


 「豊穣たる我らが女神フレイ、フレイヤ。使徒たる我ら大地の民に神のご加護を与え給え。大地を見通す神の御目。その奇跡を今ここに。不遮断の眼光―アンブストラクト・サイト―」



 どうやら魔法は無事成功したようで、ドワ娘が魔法を唱え終えると彼女の全身が淡い光に包まれていく。


 手をついたままの彼女はゆっくり目を開くと両手を地面につけたまま話しかけてきた。



 「どうじゃ。おぬしもわらわが見ている景色見て見るか?」


 「そんなこと出来るのか?」


 「うむ。出来るぞ。わらわの両の肩に手を置き、目を瞑ってみるがよい」


 「わ、わかった」



 俺はドワ娘の背後に立ち四つん這いになっている彼女の肩にそっと手を置くと、何故だかドワ娘は急にくすくすと笑いだした。



 「何がおかしい?」



 「いやなに、なかなかに卑猥な体勢だと思っての。こんな昼間のしかも野外で何をやっているのかと誰かに勘違いされないかと心配になっての」


 「誰が勘違いするんだよ! いいからやってくれ」


 「そんなに怒る出ない。茶目っ気じゃ」


 「あのなぁ」


 「では気を取り直していくぞ」


 「あぁ、頼む」



 そう言うと俺はゆっくりと両目を閉じた。


 実はこの魔法自体を見るのは今回が初めてではない。



 いま採掘班が作業に勤しんでいる場所も実はドワ娘の魔法“不遮断の眼光”で事前に探知してもらっていたのだ。


 どうやってドワ娘が鉱脈や水脈を探しているのか、多少なりとも興味はあったが実際この目でこうやって見ると何とも摩訶不思議で言葉では表現しがたいものがある。 


「――どうじゃ、ちゃんと見えておるか?」


「あ、あぁ。すごいなこの魔法は」


「そうじゃろ、そうじゃろ」



 瞼の裏にドワ娘が見えている景色が投影されている訳なのだが、その景色たるや。いま立っている場所から数十、数百メートル下の水脈を俯瞰している感じというのだろうか。勿論途中には何重もの地層があるはずなのだが、余計なそれらは全て透過され水脈だけが鮮明に視認できている。



 「この魔法、地中や山の中なら大抵のものは見通せるのか?」


 「そうじゃな。女神さまの力の及ぶ範囲なら可能じゃ。ただ使用者の能力によって視認できる距離や明瞭さには差が出るじゃろうな」



 「なるほど」


 「さてこれで水の流れもわかったし、そろそろ終いにするぞ」


 「あぁ、分かった。ありがとう」



 そう言ってドワ娘の肩から手をどけると瞼の裏に映し出された景色は一瞬で消え去ってしまったが、その代わりと言っては何だが目を開けると眼前にはしたり顔の少女の顔がそこにあった。



 「どうじゃ。少しはわらわを信じる気になったかの?」


 「そうだな。少しだけ、な」


 「むぅ。相変わらずいけずじゃの」


 「はいはい、俺はいけずだよ。……それより水脈だ、やっぱりオルメヴィーラの方角には流れてなかったな」

 

 「うむ。この大ルアジュカ山脈を起点として一つは真東の方向に。もう一つはオルメヴィーラ領とエンティナ領の丁度境の方角に流れておったの」


 「そっから先の流れを見るには移動してまた魔法で調べるしかないんだよな」


 「そうじゃな。魔法の有効範囲にも限界はあるからの。ただ今回それは必要ないはずじゃ」


 「そうなのか?」

 

 「オルメヴィーラ領の縁に沿って流れている水脈の水源地に赴いて、流れを変えてやれば良いのじゃ」


 「何度も聞くようで悪いんだが、それで本当に成功するのか?」


 「多分の」


 「多分って、あのな」


 「元々地下には降った雨水が流れる小さい地下水脈が毛細血管の様にいくつも張り巡らされておる。今回はそれを利用して領地まで水を運ぼうとしておるのじゃ。確かに一度では難しいかもしれんが何度か方向を調整してやれば、きっと上手くいくはずじゃ」



 「あとは実際やってみないと結果がどうなるかはわからない、か」


 「まぁそういう事じゃな」



 仮に失敗したとしてもまた別の方法を考えればいいか。


 一人じゃ無理だとしても、全員で知恵を絞れば何かしらの解決策だって見出せるはずだ。



 「ドワ娘」


 「なんじゃ?」


 「なんかグダグダ言って悪かったな」


 「別にわらわは気にしておらん。おぬしは色々と背負っておるものがあるからの。あれこれ気をもむのも仕方ない事」


 「そう言ってもらえると助かる」


 「わらわを誰だと思っておる。至極当たり前の事じゃ」


 「頼りにしているぞ、フレデリカ」


 「うむ、わらわに任せておくがよい」


 「上手くいったら何かお礼をしないといけないな」


 「ご褒美とな? それは今から楽しみなことじゃ」


 「ちゃんと成功したらの話だからな」


 「そんな事はわかっておる。ではご褒美の為にも一肌脱ぐとしようかの」


 「ご褒美の為なのかよ。まぁいいや。で、まず何をすればいい?」


 「水脈の流れを変える為、魔法で地殻を破壊して進路を塞ぐんじゃが、いかんせん使用する魔法の射程距離がそれ程長くない。じゃからポイントの直上まで移動して魔法を行使せねばならん」


 「という事はまたこの中を探索しなきゃならないって事か」


 「まっ、そういう事じゃな」



 二人の視線の先、そして二人の指は地図中央ルアジュカ樹林のど真ん中を指さしていた。


 






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