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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第四章

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ドワーフ王国のドワ娘姫ー27







 俺とノジカそれにドワーフ達を乗せた馬車がオルメヴィーラ領に向けガラドグランを出発してから、もうかれこれ数日が経とうとしていた。



 ナウグリム王との約束で30数名のドワーフの職人達が技術指導のために同行してくれている。


 彼らは彫金、石工、鋳造、鍛冶、錬金、木工、裁縫など、あらゆる分野においてドワーフ族の中でも指折りの職人達だ。



 「まさか、こんな大所帯になるなんて思ってもみなかったね」


 「あぁ。俺がサビーナ村を出発した時はたった一人だったからな」



 これだけの人数を気前よく貸してくれたナウグリム王に感謝しかない。




 「ドワーフ達の力を借りるんだから、他のどの都市にも負けない街にしなくちゃね」



 「あぁ、もちろんだ。ってそういえばノジカって建築家だったな」



 「えぇっ!? 忘れてたの? いくら何でも酷いよ」



 「冗談だ。冗談。忘れるわけないだろ」



 「本当かなぁ……。まぁ、いいけど」



 「頼りにしているからな、ノジカ」


 「うん、任せて! なんだか今から楽しみになってきたよ」

 


 久々の仕事に建築家としての血が騒ぐのか、オルメヴィーラ領に到着する前からやけに張り切っている。





 ガラドグランで見知った新しい建築様式は彼女にとって大きな刺激だったらしく、ノジカは馬車の中にいるほとんどの時間を設計図の制作に費やしていた。



 「クロマ。サビーナ村まであとどのくらいだ?」



 「そうですな。何事もなければあと2,3日といった所でしょうかね」



 「随分かかるんだな」



 「そりゃそうですよ。私たちのいたドワーフ王国は大陸の南端ですから」



 クロマはやけにご満悦な表情で馬車の天井に描かれた地図を指さしてみせた。



 「ねぇねぇ」


 「ん? どうした?」

 


  紙に向かって筆を動かしていたノジカが手を止め、クロマに聞こえないようにそっと耳打ちしてきた。


 「さっきから何であんなにニヤニヤしてるの? クロマ、良い事でもあったのかな?」



 「さぁな」



 「絶対何かあったんだよ。クロマがタダで馬車に乗せてくれるなんてどう考えても変だもん」


 

 相変わらずノジカも変な所で勘が鋭い。これも猫人族の特性なのだろうか。


 まぁ、ノジカが怪しむのも当然と言えば、当然だ。


 いくら顔見知りとはいえ、守銭奴の商人が金銭を要求しないなんてことはまずないからだ。



 「こうしてオルメヴィーラ領まで送ってくれるんだから、別にどうでもいいだろ?」


 「それは、そうなんだけど……」



 どうも腑に落ちないようで、ノジカは時折チラチラとクロマの様子を窺っていた。




 ガラドグランを出発した俺たちはクロマ商会の馬車に乗ってオルメヴィーラ領に向かっていた。



 ――総勢40名弱。



 俺とノジカ、それに数名のドワーフだけなら俺たちの乗ってきた馬車で事足りたのだが、これだけの大人数ともなるとそうはいかない。



 遠く離れたサビーナ村まで歩いていけなくもないが、数か月は要する旅になるだろう。



 本当なら高額な料金を払って何台もの馬車を借りなければならなかったのだが、クロマに無理を言って俺たち全員を無料で送ってもらうよう頼んだのだ。



 一銭も払わずに馬車に乗せてもらうなど、商人でなくても断られるのが当然なのだが……。

 


 実はナウグリム王と交易について詳細を詰めている際に、王国とオルメヴィーラ領の交易の仲介役としてクロマ商会を引き合わせた。



 現在、ドワーフ王国と正規で交易しているのはオルメヴィーラ領だけ。



 つまり仲介役となったクロマ商会がドワーフとの取引のすべてを担うということを意味している。



 彼にとってこれはこれ以上のない儲け話。このとてつもなく大きな獲物をクロマは絶対に逃したくない、そう思っているはずだ。



 だからクロマとしては俺の機嫌を出来る限り取ろうとする。


 なぜなら領主である俺の一声でクロマ商会を仲介役から外すことが出来るからだ。


 そのことをクロマも重々承知している。



 馬車の運賃とドワーフとの取引。


 クロマの中の損得勘定の天秤がどちらに傾くかは想像に難くない。




 なんだか俺のやっていることが酷くあくどい事のように思えてくるが、互いの利害関係が一致しているのだから問題ないだろう。


 

 きっとこれからの長い付き合いだ。これくらい狡猾じゃないと商人とは渡り合っていけないよな。



 頬杖つきながらそんな事を考えていると、ノジカがまた声をかけてきた。



 「それはそうと……」


 「今度は何だよ?」



 声に応えるようにゆっくり振り向くと今度はノジカがジト目でこっちを見つめていた。



 「あのさ、二人はいつまでそうやってくっ付いているの?」



 ノジカの視線の先にはガラドグランを出発して以来、ずっと俺の左腕にしがみついて離れないドワ娘の姿があった。



 正直いつまでと言われても困る。そんなこと俺が聞きたいくらいだ。



 「なんじゃノジカ。そんなにわらわが羨ましいのか?」


 「そ、そんなんじゃないよ!」


 「なんじゃ。違うのか? 素直に羨ましいと言ってくれれば、少しくらい代わってやっても良かったのじゃが……」


 「え? 本当?」


 「……嘘じゃ」

 

 「フ、フレデリカ!」



 やれやれ。俺を間において言い争いは止めてほしいんだが。



 「おい、ドワ娘。いい加減離れてくれないか?」


 「なぜじゃ?」


 「いや、なぜって言われてもな」


 「ほら、ラックだって困ってるじゃないか」


 「ノジカ。お主は全然分かっておらぬな。困っているように見えて実は内心喜んでおるのじゃ」



 いやいやいや。なに勝手なことを言っているんだ。ま、まったく喜んでないから。




 「それに婚約者というのは、いつもこうして寄り添っておるものじゃ」




 ドワ娘は俺の左腕にぎゅっとしがみつくと、ノジカを挑発するようにわざと赤い舌をぺろりと出してみた。





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