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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第四章

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ドワーフ王国のドワ娘姫ー23






俺の放った会心の一撃がトールキンの脳天を貫くと、叫声を上げそのまま崩れ去り絶命した。





――なんて、そう簡単に決着がつけば苦労しないよな。




鋭く伸びた剣先はあと一歩のところで阻まれてしまっていた。



これ以上ないという程の絶妙なタイミングでの攻撃だったが、トールキンは咄嗟に口を閉じ刀身を歯で止めてしまった。




強引に剣を引き抜こうとしたが、押せども引けどもまるでビクともしない。




ちっ! ダメか!



俺はさっさと諦め剣を手放すと、トールキンの顔面を蹴飛ばし、その反動で後ろに一回転しながら地面に着地した。




参ったな。



あれを止められるとは、思ってもみなかった。


何て反射神経してるんだ。


やはり尋常じゃない。



 次はどうする。

 いくらなんでも同じ手はもう通用しないよな。




 トールキンから距離を取りながら再度頭を回転させていると、どこからか金属のこすれ合う耳障りな音が聞こえてきた。




 「おい、ちょっと待て。嘘だろ!?」



 音に目をやった俺が見たものは無残にも真っ二つに噛み砕かれた愛用の片手剣だった。



 あの剣はかつて寝る間を惜しんでアザーワールド・オンラインに入り浸っていた頃、数百時間を費やし、やっとの思いで手に入れた超貴重なレア装備なのだ。




 「おい! その剣、俺がどれだけ苦労して手に入れたと思ってるんだっ!」



 二人きりの坑道に俺の叫び声が虚しく木霊した。



 当然のことながらトールキンから何の返答もなくその代わりなのか、口の中に残っていた折れた刀身を地面に吐き捨てた。




 目の前に転がり落ちた剣をそっと拾い上げると、その変わり果てた姿に沸々と怒りがこみ上げてくる。





 ――この代償は高くつくぞ。


 トールキン。廃人ゲーマーなめんなよっ!



 俺は折れた片手剣に詫びを入れ予備武器に持ち替えると、再びトールキンと対峙した。







 それから手を替え品を替え、現状取れるあらゆる手段で攻撃を試みたが、結局トールキンにダメージを与えることは出来なかった。




 もちろんここでこいつを倒せればそれに越したことはなかったが、最低限時間稼ぎが出来たので、まぁ良しとしよう。




 化け物。



 確かにこいつを形容する言葉は他に見当たらない。





 トールキンと相対してから10分。




 ようやく準備に必要な時間が経過した。









 張り詰めた空気の中、神経をすり減らしながらの攻防。


 たった10分の戦闘とはいえ、思っていた以上に体力の消耗が激しい。


 精神的な疲労も相まって体のあちこちから悲鳴が上がっている。



 ノジカじゃないが、本当なら腰を下ろして一休みしたい所ではあるが、そうも言っていられない。



 俺は隙を見て戦闘を切り上げると、城の出口に向かい全力でその場から離脱した。



 どうやら完全にトールキンの標的になってしまったようで、時折現れるドワーフ達には一切目もくれず、蛇のような執拗さでぐんぐんと追ってくる。



 もしここが何の障害もないだだっ広い平地なら、あっという間に追いつかれてしまっていただろうが、この狭い坑道をあの巨体がすんなり通れるわけもなく、俺との距離は徐々に広がっていった。



 最後の分岐を左に大きく曲がって行くと目の前には長々と続く緩い下り坂が現れた。



 ここを下れば坑道は終わり、城の出口に繋がるあの広々とした通路に出る。


 

 ――ドワ娘、ノジカ、頼んだぞ。



 俺は祈るような気持ちで一歩を踏み出すと、最後の坂を駆け下りていった。






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