竜の刀剣ー39
「ところでハンス公、実は俺から一つお願いしたいことがあって――」
「私に?」
俺は懐からメモ用紙を取り出すとハンス公に手渡す。
「はい。そこに書いてある素材を出来る限り集めてもらいたいのです」
「なになに、ジャイアント・タリスにドクギリ草、カーン鉱物、それからキョウチク樹? ラック公、これは一体?」
ハンスは見慣れぬ名前に思わず首を傾げた。
「これは殺虫弾を作る為の材料一覧です。昨晩の戦いで俺が持っていた殺虫弾は全て使用してしまった」
「殺虫弾、これがその魔族に有効だと?」
「いや、エントマには殆ど効果はなかった。しかし、奴が使役する一部の魔虫を無力化することは確認済み。これがあれば多少は戦況を優位に運べるはず」
「なるほど、魔虫を無力化できるのはかなり大きい。急ぎノルバラントにいる宰相に連絡をとってこの紙に書かれている材料を用意させよう」
「お願いします」
「他に何か私に協力出来そうなことは?」
魔族との交戦に備えた部隊の準備。
殺虫弾の材料の確保。
それから――
「ロイヴァ・カフカについて何か新しい情報を手に入れたら――」
「ああ、すぐ君には伝えるようにしよう。私もこの先奴等の目を盗んで抜け出すのが難しくなる。おそらくこうしてゆっくり対面で話せるのもこれが最後だ」
「ではこの先ハンス公とのやり取りは?」
「この店を介して行う。私と連絡を取りたいことがあればこの店の従業員に伝えて欲しい」
「なるほど。だから今日この店で」
「パパ、どういうこと?」
「名前や特徴を伝えただけじゃ俺が本物のラックかどうか判断が付かないだろ?」
確かにこの身なりじゃ俺がオルメヴィーラ領の領主とは到底思えないだろう。
「他領の領主である君を頼るのは非常に心苦しいが、どうかこの国のため私たちに力を貸してほしい」
「はい。俺も出来る限りの事はやるつもりです」
「この借りは必ずどこかで」
俺とハンス公は互いにグラスを手に取るとガラスの音色が小さく部屋中に響き渡った。
「――ハンス様」
壁際で待機していた従者が呼びかけるとハンスは外に目をやった。
「そうか、もうそんな時間か」
気が付けば日も沈み辺りはすっかり暗がりへと変貌していた。
「ラック公、呼び立てておいて申し訳ないが私はこれで失礼させてもらうよ。まだまだ話足りないがそろそろ社交界が終わりの時間なんだ。これ以上遅くなると、あれが私の偽物だと気づかれてしまう」
「それは流石にまずい、でしょうね」
「はぁ、領主などなるものではないな。いや、これは失言だった。ではラック公、次はヘルメース主催のオークション会場で」
従者を連れ部屋を後にしたハンス公は店を出ると労働者たちに交じり路地裏へと消えていった。
この作品を少しでも「面白い」「続きが気になる」と思って頂けたら下にある評価、ブックマークへの登録よろしくお願いします('ω')ノ
”いいね”もお待ちしております(*´ω`)
また、ブクマ、評価してくださった方へ。
この場を借りて御礼申し上げます(/ω\)




