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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第四章

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ドワーフ王国のドワ娘姫ー17






俺とガイアがファムスル城を訪れる数時間前、炎の金づち亭ではドワーフ王とドワ娘ことフレデリカの奪還作戦会議が開かれていた。




俺たちが別々に行動することになったあの日、ドワ娘とドボルゴは墓地から街に繋がる隠し通路を使いカラドボルグへの侵入を試みた。




「――顔は見えんかったが、あれはトールキンの手の者に間違いない」



事の詳細を語っていたドボルゴは握りしめた拳で、悔しそうに自分の膝を強く打った。



「どうしてわかるんだ?」



「あれは暗殺の為に訓練された者の動きだった。その辺にいる一般の兵士ではないのは間違いない。それに、やつらはこいつをもっていたからな」



ドボルゴが取り出したのは一本の短剣だった。



「これは?」


「どれどれ、俺に見せてみろ」


ガイアは短剣を手に取るとくるくると回しながら全体を眺めた後、テーブルの上に無造作に突き立てた。



「こりゃ、親衛隊のもってるもんだな。刻印や柄の部分は違うがこの造りに材質、まず間違いない」



「親衛隊って?」



「なんだ、猫人の嬢ちゃんはそんなことも知らねぇのか。親衛隊ってのは王様や大臣みたいな重要人物の身辺警護をするエリート兵士達のことさ」



「つまり……」



「親衛隊を動かせる奴なんてのはほんの一握りだ。要は姫様を狙う奴の心当たりなんて一人しかいねぇってこった」



ドワーフ王国の大臣トールキン



「……だが、この短剣だけじゃ決定的な証拠にはなりえん」



「そうなの?」



「まぁ、確かに。これだけじゃいくらでも言い訳は出来そうだ。

せめてそいつらの身柄を拘束出来ていれば違っていたのかもしれないな」



「だったらこっそり王城に忍び込んでフレデリカを助けたらいいんじゃない?」



「嬢ちゃん、それが出来りゃ苦労はねぇさ」



「なにが問題なんだ? そんなに警備が厳しいのか?」



「そうじゃねぇ。あのファムスル城ってのは途轍もなく広いんだ。山を丸ごと城に作り替えたくらいだからな」



「ドボルゴ。あんたもドワ娘が捕まっている場所に心当たりはないのか?」



「あるといえばあるし、ないといえばない」



「なんだ、やけにはっきりしないな」



「長年王に仕えているわしでさえ立ち入ったことのない場所は多い。それだけあそこは広く入り組んでいるのだ」



「ドワーフのあんたらが分からないんじゃお手上げじゃないか。あまりもたもたしていられないし困ったな」



「貴様に言われなくてもわかっておるわ」



「大体、ドワ娘が無事だっていう保証はないんだろう?」



「……それなら、今は大丈夫だ」



「なんでそんなことが分かる」



「お前のつけているその指輪、それには特別な鉱物が埋め込まれていて、姫様の魔力と繋がっている。もし万が一姫様の身に何かあれば指輪の宝石は魔力を失い砕けちまう」



「この指輪にそんな仕掛けもあるんだな。……指輪、指輪か」



「どうした?」



「なぁ、指輪とドワ娘は魔力で繋がってるって言ってたけど、それをたどって居場所を探せないのか?」



「それは流石に無理だろう。それほど強い力で繋がっているわけじゃねぇ。まぁ余程近くにいればわかるかもしれねぇが」



「そうか、そんなに都合よくはいかないか。……となると、後はトールキン本人にドワ娘の元まで案内してもらうほかないか」



「はぁ? なにを馬鹿な事言ってやがるんだ。それこそ出来る訳ねぇ」



「そうかもしれないけど、居場所を知っているのは多分トールキンだけだ。それに他に良い手はないだろ?」



ドボルゴとガイアは何を考えているんだと言わんばかりに顔を見合わせきょとんとしていた。















「ボクはここで留守番してるね」


「……は? 何言ってるんだ。ノジカ、お前も行くに決まっているだろ」



「ボ、ボクには無理だよ! そりゃ身体能力は高い方だと思うし、忍び込んだり隠れたりするのも得意だけど、戦闘だけは苦手なんだ」



「ノジカはドワ娘の事心配じゃないのか?」


「そ、そりゃ心配だけど、だけどそれとこれとは話が別。だってドワーフ族のお城に乗り込むんでしょ? 無理、無理、絶ぇぇぇ対無理ぃぃぃ!」



ノジカは傍にいたタフィーの後ろに隠れると、怯えたように耳をしゅんとさせていた。




俺がみんなに話したドワ娘救出作戦の内容はこうだ。



広大な城内をなんの手がかりもなく探し回るのは非常に困難だ。



それに外からカラドボルグに繋がる隠し通路があったように、城内にもトールキンしか知りえない隠し通路や扉がある可能性も高い。



そうなった場合、自力でドワ娘の居場所を見つけ出すのは事実上不可能。



ならば、あとは知っている者に案内してもらうしかない。



話を聞く限りトールキンは慎重な男だ。


ドワ娘の幽閉場所は奴しか知らない可能性が高い。




そこで俺とガイアが二人で乗り込みドワ娘の事を直接問いただす。


そんなことで相手がぼろを出すとは当然思っていない。


そこでこの王家の指輪についてわざとらしく奴に聞くのだ。



まぁ、言ってみればこれは餌だな。



慎重で狡猾なトールキンの事だ。俺たちが帰ったのを確認した後、奴は間違いなくこの餌に喰いつき彼女の元に指輪の有無を確認しに行くはず。



慎重な奴ほど不安要素は排除したいだろうからな。



そこをノジカに尾行させ、ドワ娘の居場所を突き止める。



以上が作戦の概要なのだが……。






「別にドワーフと戦えとは言ってないだろう?」



「それはそうだけど……」



「俺とガイアでトールキンをドワ娘の元へ行くようにうまく話をもっていくから、奴の後をつけて居場所を見つけ出して欲しいんだよ」




「それは分かってるけど、ボクじゃなくてもいいでしょ?」



「いんや、この中じゃノジカが一番適任だ。というか他のメンバーじゃ無理だろ」



ノジカは夜目は効くし、耳がすこぶるいい。



身のこなしだって一番だし、隠れるも得意だ。



「それにもし何かあった時のことも考えて、ドボルゴが一緒についていくんだ」




「そ、そうかもだけど、……やっぱりボクがいかないとダメなの?」




「ノジカ殿」



深く静かな声に一同が振り向くと、ドボルゴがベッドから降り神妙な面持ちで床に両ひざをついた。




「ノジカ殿。姫様の為にどうか、どうかお力をお貸しください。このドボルゴ、一生のお願い! どうか、どうか!」 




曇りのない眼差しで訴えかけるようにノジカを見つめたあと、額が床にぶつかる程深々と土下座をした。



「――どうか、どうかお願い致します!」



ノジカは一瞬目の前で何が起こったのか理解できなかったのか、数秒言葉も発せずに固まっていたが、目を何度かパチクリさせた後、慌てた様子でドボルゴに頭を上げるように促した。



「ちょ、ちょっと、わ、わかりましたから、頭を上げてください!」



「では、お力を貸して頂けるですか?」



「ボクもフレデリカの事が心配なのは本当だから、しょ、正直怖いけどみんなに協力するよ」



「ありがとうございます、ノジカ殿!」


 「もういいから!」


「よしっ! そうと決まれば早速準備に取り掛かるとしますか」



「ねぇ、ラック」



「ん、なんだ?」


「タフィーにオルテガ、それからクロマさんはどうするの?」



「あぁ、そうだな。3人ともここで留守番だな」



「えぇ? なんかそれってずるくない?」



「あのなぁ、タフィーはまだ子供だぞ。それにクロマはただの商人だ。連れて行けるわけないだろう?」



「じゃ、オルテガさんは?」



「オルテガはだな。あれだ、ほら。少数精鋭ってやつだ。あまり大人数で行動すると見つかる可能性も上がるからな」



「なんかボク、非常に納得いかないんだけど……」



「文句は後でいくらでも聞いてやる。いつまでもぶつぶつ文句言ってないで、ノジカ、お前もちゃんと準備しておけよ」



「はーい」








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