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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十四章

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竜の刀剣ー30 





 静寂にあって不規則なリズムを刻み続ける潮騒。


 海洋に停泊している船舶も未だ灯りは灯らず、船員たちの多くがこれから始まる重労働に備えしっかり身体を休めているようであった。




 俺は職業特性のおかげで人よりもかなり夜目が利く。


 野生の獣、とまではいかないまでも晴れてさえいれば真夜中でも昼間並みの視界を確保できる。



 ――未だ周囲に不審な影は見当たらず、また俺たち以外の気配は感じられない。



 俺は警戒可能な場所を見つけると岩陰に潜み息を殺しエントマの襲来に備えた。



 波が打ち引きを繰り返しその数が百を越えようかという頃、ふと、俺の視界の端に小さな虫が横切った。



 それは何の変哲もないごく普通の小虫。


 そのあまりに自然で、見慣れ過ぎた景色の一部に俺は反応することが出来なった。


 耳元で不快な音を鳴らし飛んでいく小さな羽虫。



 次の瞬間――


 暗闇から現れた斬撃が大岩もろとも大地を真っ二つに切り裂いた。



 衝撃で吹き飛ばされた大岩の一部が海に落下し、周囲を塩の雨が激しく濡らす。



 月を背に刃を振るったエントマを少し詰まらなそうに海辺を見下ろしていた。



 「なんだ。鬼ごっこはもうお終い? 折角ならボクともう少し遊んでくれても良かったのに。ちぇっ、つまらないの」


 不満を漏らしつつ、舞い上がった砂を振り払い俺の死体を確認しようとするエントマだったが、そこには肉片どころか血の一滴すら存在していなかった。

 


  エントマが仕留めたと思っていたのは俺の形を成したクロの影。


 奴等が追っていたのは俺の魔素の匂い。


 だったら、それを逆に利用しない手はない。


 魔素の匂いで魔嗅虫を誘導し、俺たちは奴をおびき寄せることに成功した。



 不意打ちに必要なのは、いかに相手を出し抜けるか。



 エントマの背後を取った俺は素早く短剣を引き抜くと奴の首元を狙い強烈な一撃をお見舞いした。



 俺は戦闘においてもある程度選択肢を用意し、また様々な可能性を考え行動している。


 なぜなら全てがこちらの思い通りに行くことなど殆どないからだ。


 相手が強者になればなるほどこちらの思惑通りにはいかない。


 それが魔族相手ともなれば仕組まれたかのように俺が一番望まぬ選択肢が選ばれる。




 クロが作り出した影を足場に渾身の力で短剣をふり抜いたが、やはりと言うべきか、奴の首元寸前で俺の斬撃は防がれてしまった。


 俺は咄嗟に奴の背中を蹴り飛ばし距離を取ると、空中に伸びた影の足場に着地した。



 「ボクの背後から急所を狙っての一撃。千載一遇のチャンスをあげたのに残念。狙いは良かったけどそれじゃボクは倒せない」



 空中で停止飛行していたエントマは身体の向きは変えず、首だけを180度回しこちらを見やる。



 「いまので大体実力は分かっちゃったし、残念だけどもう殺してもいいかな」


 「魔族ってのはどいつもこいつも皆お喋りなんだな」


 一瞬こちらを警戒したエントマは目を細めると、それから笑みを浮かべた。


 「へぇ。ボク以外の魔族に会った事があるんだ? それでもまだ生きているなんてキミ、随分運がいいんだね」


 「ああ、良くそう言われるよ」


 「でもキミの幸運もここまでだったみたい。だって、このボクと出会っちゃったんだからね!」



 背中の翼骨を広げこちらに狙いを定めたエントマに俺は影を打ち放つ。

 

 地上の至る所から現れた漆黒の刃はエントマを取り囲み逃げ道を塞ぐと軌道を変えながら次々と奴に襲い掛かっていく。


 裕に数百を超える無数の刃がエントマ目掛けて放たれるが、一つとしてさえ奴の身体を傷つけることは叶わなかった。


 「影、か。確かに面白いけど、もうこれ一回見てるんだよね。効果範囲も広いし、自由自在に扱えるのはいいけど相手に攻撃する時、どうしても実体化しなきゃならないから対処は簡単」



 自信の身体を守るように覆った翼骨を影の刃はどうしても突破することが出来ない。


 攻撃を止め一転エントマの身体を拘束しようと試みたクロだったが、奴は慌てる様子もなく一切顔色を変える事は無かった。



 「無駄、無駄なんだよね。なんでそれが分からないのかな?」



 ワザとらしくため息をついたエントマは再び閃光虫を口から解き放つ。



 ――その刹那、強烈な閃光が全て支配し、黒い牢獄は跡形もなく消え去ってしまった。



 







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