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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十四章

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竜の刀剣ー29






 俺は周囲を警戒しながら海音を頼りに一路海岸を目指す。


 似通った建物に挟まれた路地。


 時折、雲の切れ間から指す月光が俺の行く手を照らしてくれる。



 月影の長さ、向きから考えて夜明けまでにはまだ時間がありそうだ。



 本当なら建屋を登り屋上伝いに進んで行った方が海岸まで断然に早いのだが、相手の能力が未知数な以上、下手に姿御さらすのは命取りだ。


 それに奴等は魔素の匂いを辿り俺を追ってきている。


 魔素の匂いにどのような特性があるかは分からないが、もし物質が発する匂いと同様に風に流され移動・拡散するのなら海風によって匂いが風下に流されるのはあまりよろしくない。


 それは単純に俺が発見されるまでの時間が短くなる事を意味する。


それよりかは多くの人が暮らし、また地形が複雑に入り組み風の流れが分散する下道を行く方が奴等をかく乱出来る可能性は高い。


 「――ご主人様」


 不意に足元から現れた黒い影。


 猫の姿を成したクロは何故か申し訳なさそうに俺の一歩後を追走する。


 「ごめんなさい、ご主人様」


 「なんでクロが謝るんだよ」


 「だってクロがあの魔族に見つかったせいでヘルメースとの繋がりを示す証拠が――」


 「そんなことか」



 俺は地面に横たわり酔いつぶれていた男を飛び越えると、大通りを横切り再び路地へと入っていく。



 「もともと奴等が手掛かりを残す可能性は限りなく低かった。恐らくあそこに行っても何も得られるものはなかった」


 「確かに、今までの話を聞く限りそんなドジをするようには思えないわね」


「……だが奴等は侵入者を始末する為、姿を現してしまった」


 「そのおかげでこうして追われてるんだからいい迷惑なんだけどね」


 ユシルは俺の頭で寝そべると片方の腕で頭を支え欠伸を噛みしめる。



 「今まで奴等は俺と同じ様な侵入者を一切の痕跡を残すことなく片付けてきたんだろう。しかし、今回は相手が悪かった。あのエントマとかいう魔族、奴は使役主である俺を始末する為、クロ、お前を逃がすという選択をしてしまった。まっ、それは当然の判断だろう。もしあの場でクロを始末してしまえば、俺の手掛かりを失うことになるからな」



 路地裏に反射する海音が次第に大きくなり、強い磯の香りが鼻の奥を抜けていく。


 

 「クロのおかげでオークションと魔族の関係が明らかになった。これはとても大きな手掛かりだと俺は思ってる。あとはヘルメースとの繋がりさえ掴めればきっと奴等を追い詰めることが出来る」


 「ヘルメースとの繋がりはどうやって?」


 「大丈夫、一応手は打ってある」


 「手を打ってある、ね。あんなんで尻尾が掴めるとは私は思えないんだけど。それにそれって私たちがあの魔族から逃げおおせれば、って話よね?」


 「そうだ。だからユシル、期待してるぞ」


 「あ、あたしに魔族の相手をしろっての!? じ、冗談じゃないわ! あんた、一体この私をどれだけ――」


 「ユシル、お前だって虫の餌にはなりたくないだろ?」


 「ぬ、ぐぐぐぐぅ! ふんっ、だ!」

 

 不貞腐れそっぽを向くユシルに苦笑しつつ、俺はエントマの放った刺客たちに注意を払う。


 どうやらまだ追いつかれてはいないらしい。


 クロや俺の警戒網にもなにも引っかかっていない。


 とは言え、俺の魔素から発せられる匂いとやらを何とかしない限り奴等には必ず見つかってしまう。


 今は相手が諦めてくれることを祈り時間を稼ぐだけだ。




 突き当りを曲がり、湿り気を帯びた路地をようやく抜けると海水を帯びた風が頬に当たり仄かな塩味が口の中に広がった。


 目の前に広がるは未だ眠りから覚めぬ深黒い海。


 干潮によって露出した砂浜に降り立つと雲から抜け出した淡い月が海面をゆらゆら泳いでいた。







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