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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十四章

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竜の刀剣ー27 魔嗅虫


 




 クロの視界を通してオークション会場の映像が俺の中に流れ込んでくる。



 黒が基調のゆったりしたドレスを身に纏った少女は静かに舞台に降り立つとフリルの付いた広めの袖を大きく広げた。


 時折衣服の中を蠢く何か。


 頭には関節のある短めの触角が4つ、そして背中には羽根のない翼骨のようなものが幾つか見て取れた。


 明らかにエルフやドワーフ、獣人族や人間のそれとは違う身体の造り。



 俺は直接少女と対峙することなく、それが魔族であることを理解した。



 「――ボク、影の相手をするなんて初めて」



 影の前に立ち不敵な笑みを浮かべたエントマはクロに向かって不意に何かを投げ放った。


 白く鋭利な刃がクロの身体を頭部から胴体に向かって真っ二つに切り裂くとそのまま地面深くに突き刺さる。


 一瞬視界が割れ、俺は自分の身体が切断されたかようなぞっとする感覚に陥ったがすぐさま影は元通りになりクロが傷を負った様子はなかった。



 「……ご主人様、これからどうする? ハッキリ言ってクロの力じゃアノ魔族の足元にも及ばない」


 「やはり魔族なのか?」


 「十中八九、間違いないと思う」

 


 巷で囁かれていた噂は間違っていなかった。


 奴等の背後には魔族がいる。


 そしてヘルメースも魔族と繋がっている可能性がある。



 だとすれば今はどんな些細なことでも出来る限りこいつの情報が欲しい。



 「……クロ、少しでいい。こいつの相手をしてくれないか?」


 「わかった。可能な限り相手はしてみる。けど、そんなに時間を稼げるとは思わないでね」


 「ああ、頼む」



 態勢を整えたクロが一旦距離を取ると少女は追撃することなく肩を落とし自分の触角をそっと撫でていた。



 「……やっぱ、そうなるよね。影じゃこの子たちも食べられないし、どうしようかな」



 一旦攻撃を諦め、頭をもたげたエントマはその場でくるくる回り始めると時折こちらを見やってはあーでもない、こーでもないと大きな声で独り言を発し始めた。


 しばらくそんな事を続けていたエントマだったが、何か閃いたのか突然ピタッと動きを止めると満面の笑みで人差し指を立てた。


 「これってやっぱあれだ。魔法生物。うん、そうだよ。人間ごときがどうやって影を使役したのかはわからないけど、これにも主がいるのは間違いないよね」



 警戒する様子もなく無防備なまま近づく少女。


 エントマは地面から伸びた影刃を難無く交わすと背中の翼骨でクロの攻撃を打ち払い、再度本体へと斬撃を飛ばた。


 「へぇ、影を自由自在に実体化出来るなんてすごく便利。物理的な攻撃は無効化されるし、並みの相手だったら対処は難しいかもね」


 「けど――」


 足元から伸びた黒い影が少女を取り囲むように四方に広がるとクロの合図で無数の刃が一斉にエントマに襲い掛かる。


 天上、壁、地面を埋め尽くす影に完全に逃げ場を失っていた。



 ――だが、そんな状況でも彼女に焦りなどというものは微塵も感じ取れなかった。



 侵入者を前に何故か大きく口を開け、舌を突き出すエントマ。



 すると細長い手足が1本、2本と顔を覗かせ、喉の奥から赤と黄色の縞模様の虫が這い出てくる。


 のそのそと現れたその昆虫はエントマの舌先に止まるとその場で大きく羽根を広げ襲い来る影の刃に向かって自ら突貫していった。



 次の瞬間――


 昆虫の尻が激しく点滅し、彼等のいたオークション会場は強烈な閃光に包まれた。



 すべての色彩を飲み込み光が全てを白に染め上げる。


 それは無論、影も例外ではなった。



 「閃光虫。相手の正体が影だと分かっていれば対処は簡単。本体ごと消すことも出来たけどそれじゃつまらないよね」


 光の消失とともに徐々に回復していくクロの視界。


 「クロ! 大丈夫か!?」


 「う、うん、クロは平気。それよりも――」



 気が付けば目の前には舌を突き出しニヤリとするエントマの顔。



 「どうやらキミ、使役主と影で繋がっているみたいだね。魔素が供給されなきゃ活動出来ないのかな?」


 クロはエントマと距離を取る為、影に逃げ込み姿を隠す。


 「ちっ、ちっ! 無駄、無駄。さぁ、魔嗅虫おいで」



 少女が手を広げると彼女の掌にどこからともなく小さな虫が無数に集まってくる。



 「この子はね、魔素の匂いを嗅ぎ分けるのがすごく得意なんだ。一度匂いを嗅げばその匂いを決して忘れない。君の魔素の匂いを辿ればきっと使役主の居場所も分かるはず。君を処分するのはその後でいいよね? いや、違うか。主を殺せば君も消えてなくなるんだった。……なんかそれはそれでつまらないけど、まっ、いっか。よし! それじゃ魔嗅虫たち、いい子だから愚かな侵入者を探しておいで!」



 そう言って少女が魔嗅虫を解き放つと、彼等は散り散り飛び立っていった。







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