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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十四章

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竜の刀剣ー21 黒舞のオークション









 「――ユシル、おい、ユシル」


 摘まみ上げられてなお手足が宙ぶらりんのまま寝入っていたユシルは俺の呼びかけに目を覚ますと涎を拭いながら辺りを見回した。


 「ふわぁぁぁ。もう、なんなのよ。折角気持ちよく寝てたってのに起こさないでくれる? あんたが静かにしてろって言ったんでしょ?」


 「静かにしてくろとは言ったが寝てもいいとは言ってないぞ」


 「私にとって静かにするって事は寝る事と同義なわけ。わかる?」


 「分かるか! そんな事よりもユシル、あそこに映ってる会場―― 」


 「会場? ああ、あれがどうしたっての?」



 ユシルは吊り下げられたまま画面を見上げる。



 「これからあそこでオークションが開催される」


 「へ? ここがオークションの会場じゃないの?」


 「いや、違う。俺たちはこの部屋から画面を通してあの競りに参加するらしい」


 「なによ、それ。随分と回りくどいやり方ね」


 「それだけ相手も警戒してるってことだ。簡単に場所が割れたら捕まるリスクも高くなるからな。」



 当初はもう少し楽に事が進むと思っていたが、どうやらその考えを改めなければならないらしい。



 「ユシル、どうにかしてこの場所を特定できないか? このままだとヴィニャの母親を助けるどころか、何の手掛かりも得られないかもしれない」



 「そんなこと言われても、私神様じゃないし。……でも、そうね。この映像、魔方陣を介してオークション会場を実時間で映し出してるなら、魔素の流れを逆に辿っていけばもしかしたら――」

 

 「そんなことが出来るのか?」


 「世界樹の精霊を舐めないで欲しいんですけど。でも今の私の力じゃ魔力が足りないから世界樹の若木は貸してもらうけど、いいでしょ?」



 俺はユシルをテーブルの上にそっと降ろすと彼女の身の丈ほどある世界樹の若木をユシルに手渡す。




 「――お客様、大変お待たせ致しました。もう間もなくオークションが始まるとのことです。そのまま席にお座りになってお待ちください」



 後方の壁際で待機していた女は俺に席に着くよう促すと魔方陣の描かれた台座を運んできた。


 「これは?」


 「入札台でございます。お客様が落札したいご希望の商品が出品されましたら、入札札を上げる代わりにこの台に入札金を提示して頂きます。最終的に一番高い金額を提示して頂いたお客様がその商品の落札者となります」


 「もし俺が入札に成功した場合、落札した品はいつ受け取れる?」


 「お客様の都合の良い場所、時間にお届けいたします」


 「それはこちらで指定できるということか?」


 「はい、左様でございます」

 

 「なら落札直後に受取ることも可能なのか?」


 「すぐに、というのは難しいのですが、多少お時間を頂ければこちらまでお運びすることも可能です」


 「わかった」


 「他に何かご質問は?」


 「いや、大丈夫だ」


 「それでは今宵のオークション、ぜひお楽しみください」




 響き渡る鐘の音と共に画面中央に現れた二人の女性。



 白髪に黒い着衣を身に纏った同じ出で立ちの二人。


 表情こそ仮面で覆われ窺い知ることは出来なかったが、背格好はまるで双子のように瓜二つであった。


 二人は一糸乱れぬ動きで深々と頭を下げると、まるで一人で喋っているかのように二人同時に口を動かし始めた。



 「――皆様方、この度はこの黒舞のオークションに参加して頂き誠にありがとうございます。私は今回のオークショニアを務めるアゲハ、そして私がコチョウと申します。今宵も皆様にご満足いただける商品を多数ご用意いたしましたので最後まで楽しんで頂けると幸いです。


 早速ですが皆さま、今宵のオークション一品目をご紹介したいと思います」



 そう言って会場に運ばれてきたのは銀色に輝く何とも美しい毛皮だった。



 「黒舞のオークションを彩るのに相応しい一品、こちらはあの幻の銀狼人族の毛皮でございます」



 画面に毛皮が大きく映し出された刹那、観客席からは驚きの声が上がった。



 「――銀狼人族は皆さまもご存じの通り、遥か昔に絶滅したとされている獣人族でございます。その聖獣と見まごう程の美しい毛並みから人間や他の獣人族たちに狩られこの世から姿を消したとされておりました」


 アゲハとコチョウは白い手袋を身に着けると銀の毛皮を優しく指でなぞってみせた。



 「しかし、数十年前、偶然銀狼人族の生き残りを見つけた我々は彼等を捕らえ密かに繫殖を繰り返していたのです。純血の銀狼人族でなければこれだけ素晴らし毛皮は得られない。私たちは彼等に子供を産ませ一人一人大事に育て上げてきました。最高の環境で最高の食事を与え、そして毛並みが最も美しい状態で彼等の皮を剥ぐ。もちろん皮を剥げばその銀狼人は死んでしまいます。ですから幾ら我々が繁殖していると言ってもそう滅多に手に入るものではございません。それはお客様方が一番ご存じかも知れませんね」


 オークショニアのアゲハとコチョウは仮面の下で笑みを浮かべた。



 「さて、本来なら銀狼人族の毛皮というだけこの場にいる皆様方なら喉から手が出るほど欲しい品かと思います。しかし、今回我々はこの日の為に、皆様の為に銀狼人族の毛皮の中でも特に貴重な一品を用意しました」



 オークショニアの言葉に観客席からはさらにどよめきが起こる。



 「この品は銀狼人族の処女の毛皮でございます。銀狼人族はオスの出生比率が非常に高くメスの割合が低い種族。その為、通常、女の獣人は期間を開けず孕ませ続けたくさん子供を産ませるのですが、今回はこのオークションの為に特別に処女の女を見繕いご用意しました。この美しい光沢を是非ご覧ください。精気溢れる透明な輝き。男の銀狼人では決して出すことは出来ません」



 オークショニアがゆっくり毛皮に指を通すと毛の一本一本が光を反射し、まるで細氷のように光輝いていた。 



 「こちらの商品、今宵のオークションに相応しい最高の一品だと我々は自負しております。

皆さま是非この至高の一品をお持ち帰りください。では、銀狼人族の処女の毛皮、白金貨100枚からスタートします!」



 アゲハとコチョウがオークション開始を宣言すると待ってましたと言わんばかりに競りの金額が跳ね上がっていく。



 「白金貨110、120、150,200!――」



 威勢のいい掛け声と共にオークション会場が熱を帯びる中、俺はただ一人やり場のない怒りに打ち震えていた。






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