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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十四章

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竜の刀剣ー17





 出品された品々は次々と参加者に落札されオークションは恙なく進行していく。


 これと言って目新しいものは特に無く主に宝石や装飾品、絵画などの美術品がその大半を占めている。


 もちろん美術品以外にも毛皮や角、書物なんてものも出品されていて見ているだけでも十分楽める。


 オークションも終盤に差し掛かり会場がますます熱気を帯びる中、退屈そうに菓子を摘まんでいたユシルは番号札を見つけるとそれを手に取り持ち上げた。



 「これって私たちも参加できるんでしょ? えーっと、あ、この札を上げればいいんだ」



 ユシルは見よう見まねで番号札を上げるとオークショニアはすかさずこのテーブルの番号札を読み上げる。


 「はい、14番様の番号札が上がりました! 他に落札希望者はいらっしゃいませんか? 絵画“青い首飾りの女”はただいま金貨300枚!」


 「おい! ユシル、お前勝手に札を上げるなよ」


 「何よ、別にいいじゃない! 何もしないで見ているだけなんて退屈なんですけど!」


 「だからってあんな高い絵画落札してどうするんだよ」


 「私たちが競り落としたかまだ決まってないじゃない。きっと誰かまた札を上げるわよ」



 俺はユシルから番号札を取り上げるとそっと周囲の参加者たちに目をやる。


 絵画の落札金額は既にだいぶ競り上がっており、参加者の大半は札を上げるか財布の中身と相談している。


 もしこのまま誰も札を上げなければ俺はあの絵画に金貨300枚も支払わなければならない。


 呑気そうなユシルを他所にハラハラしながら様子を窺っていると向かい側の男性が一瞬俺たちを睨みつけ番号札を上げた。


 どうやらもう自分が落札したものだと思っていたのにユシルが番号札を上げたものだから余計な出費が増え苛ついたのだろう。



 「3番様の番号札が上がりました! “青い首飾りの女” 他に、他にはいらっしゃいませんか! それでは――」



 オークショニアは木槌を手に取り振り上げると打撃板に向かって力強く打ちつけた。



 「3番様、おめでとうございます! 絵画“青い首飾りの女”は金貨350枚で落札されました」



 男は目的のものが落札できたようでほっと安堵の表情を浮かべ残っていた酒を一気に飲み干した。




 その後、最後の品が落札され盛況のうちにオークションが閉幕すると、参加者の面々は落札したお宝を大事そうに抱えその店を後にした。



 「――お客様、オークションはお楽しみいただけましたか? 次回の開催は夜を予定しております。機会があればまた是非ご参加ください」



 最後まで残っていた俺たちにオークショニアは夜に開かれるオークションの冊子を差し出した。


 「夜は何か面白いものが出品されるのか?」


 「面白いものですか。……そうですね。“貴婦人の呪いの首飾り”なんてものはいかがでしょう?」


 「何よ、それ。不気味な名前」


 「何でもその首飾りには以前の持ち主である貴婦人の怨念が宿っているらしく、その首飾りを身につけたものは貴婦人の亡霊に首を絞められ殺されてしまうらしいのです」


 「それの一体どこが面白いのよ。そもそも誰がそんなもの買うわけ?」



 オークショニアはユシルの真っ当な反応に思わず苦笑した。



 「世の中色々な人がおりますから」


 「他には何かないか? 例えば刀剣が出品されるとか」


 「刀剣ですか。お客様はそういったものをお探しなのですね。……残念ですが魔剣や宝剣などの類は全てヘルメースが管理していますから地下オークションでも出品されることはまずありませんね。出品される可能性があるとすれば、やはりヘルメース主催のオークションでしょうね。――ただ、あそこは貴族のような限られた人たちしか参加できませんから」


 「どこにいっても貴族、貴族。やれやれやな」


 「まっ、それは仕方ないさ。ヘルメース主催のオークションともなれば全てが一級品。けど、地下オークションじゃ出品すらされないのか」


 「もし、お客様が――」


 一旦口を開いたオークショニアは俺たちを見て話を続けるべきか迷っている様であった。


 「……ここだけの話、刀剣の類が出品される可能性のあるオークションが他にないわけではありません」


 「そうなのか?」


 「はい」



 オークショニアは声を潜めると周りに誰もいないことを確認し話を続けた。



 「私たちはそのオークションのことを通称“闇オークション”と呼んでいます。このメルカルンの街のどこかで行われている禁忌の競売。誰が主催し、どこから品物が運ばれてくるのかその実態は誰も知りません。ただそこでは奴隷だろうが非合法な薬物だろうが大概のものは手に入るらしいのです」


 「奴隷も?」


 俺はオークショニアに気付かれぬようチラッとヴィニャを見やった。


 「はい。そこでならお客様の探し物もあるかもしれません。ですが扱われている品は王で禁じられている物ばかり。仮にお客様が捕まるような事があればきっと死罪は免れない」


 「その競売に参加したことは?」


 「まさか!」



 オークショニアの男は慌てて首を振る。



 「教えておいてなんですが、興味本位程度なら参加しない方がいい。忠告を聞かず首を突っ込み行方知れずになった者を私は何人も知っています」


 「……どうすればその競売に参加できる?」


 オークショニアの忠告を聞いたうえでなお俺が間髪入れず闇の競売について問うと男はもうそれ以上何も言うことはなかった。


 「……店の入口にいる客引きの女に“明日の舞台に参加したい”と伝えてください」


 「それだけでいいのか?」


 「はい。あとは彼女が教えてくれます」


 そう男は言うと小さく一礼し店の奥に下がっていった。

 




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