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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十四章

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竜の刀剣ー10  





 

 エルドルンでは今もなお拡張工事が行われており、レンガ工房には毎日のように大量の赤土が運び込まれている。


 巨大な石臼で細かく粉砕された赤土は骨材などと混ぜ数日間天日干しされると、さらにそこから丸一日焼き固められようやく完成する。


 こうして完成したばかりのレンガは倉庫で休む間もなく男たちによって次々荷馬車に積み込まれ、街の外周へと運ばれていく。


 景気が良いことにこの拡張工事は数年以上に渡って続けられているらしく、おかげで街には大量の労働者が溢れ、エルドルンの住人も日を追うごとに増えていっている。



 きっとこんなことが出来るのもヘルメースが西方地域の経済を牛耳っているからだろう。


 もし、この拡張工事が今後も続くようなら海洋都市エルドルンは数年もしないうちに王都を超え王国一の大都市になるはずだ。



 それはさておきオークション開催までまだ日にちがあると言うのに多くの観光客も相まってエルドルンはかつてないほどの賑わいを見せていた。



 海岸から大通りに戻った俺たちは再び魔導帆船に乗り込むと街中心部からやや外れた東地区を目指し船を走らせた。



 東地区はエルドルンの中でも初期に整備された区域であり、建物に使われているレンガの色合いや劣化具合でその古さが分かる。


 暗赤色が多く並ぶ中、一角にある大きな屋敷は真新しい赤褐色の外観をしていた。



 「――ここがジョワロフ公のご息女が嫁いだヴェータ家の屋敷か」


 「なかなか立派なお家じゃない。リッツァ、あんたこの家のこと何か知らないわけ?」


 「名前くらいはね。ヴェータ家はロイヴァ・カフカに上手く取り入って成り上がった下級貴族の一人や。元は確かグロスター領の貴族やったはず」



 という事はやはりジョワロフ公が懸念していた通りヴェータ家もヘルメースの傘下だと考えておいた方がいいかもしれない。


 「似たような貴族は他にもあるのか?」


 「そりゃ仰山いるで。金に困った貴族の連中に恩を売り自分の陣営に取り込んでいく。ほんまロイヴァ・カフカらしいやり方やろ?」


 「それでリッツァ、お前の実家はどの辺にあるんだ?」



 少女はあっけらかんとした様子で首を振った。


 「そんなんあるわけないやろ? とっくの昔に潰された。ギルド創設メンバーの痕跡なんてもうこの街には何一つあらへんよ」


 「なんか帰る所がないって凄く悲しい」


 「そうやな。けど、あたしの中にはちゃんと思い出が残っとる。エルドルンの懐かしい風景も両親の顔も。これは誰であろうと消させやしない。たとえ奴等にどんな卑怯な手を使われてもね」


 



 ヴェータ邸に到着した俺たちは門の詰所にいた守衛に用件を伝えるとすぐさま庭園へと案内された。


 如何にも金持ちが好みそうな大きな庭園。


 海が近いと言うのに庭園には立派な噴水があり、地下深くから汲み上げられた水は小河となって樹木や草花を潤している。


 花壇の花を眺めながら時間を潰していると貴族とは思えないラフな格好をした女性が俺たちの前に現れた。


 「初めまして。あなたがラックね。父から話は聞いてるわ。さっ、中に入って、入って!」


 「えっと、その、あなたは?」


 「あっ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。私の名前はキシリア・バラマール。領主ジョワロフ・バラマールの娘よ」



 軽く一礼したキシリアは何を急いでいるのか俺の手を掴むと問答無用でずんずん中へと入っていく。


 なるほど、確かに彼女の目鼻立ちはジョワロフ公に、雰囲気や髪色は母マリアナによく似ている。


 両親の横に立って並べば彼女が二人の子供だと誰も疑うことはないだろう。


 だが、キシリアのカジュアルな出で立ちや落ち着きのない振る舞いを見て彼女が大貴族の娘だと信じる者は皆無かもしれない。



 「さっ、ここに座って待っていて頂戴ね!」



 応接間へと案内してくれた彼女は部屋に着くなり何故か俺たちを残しその場を後にした。









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