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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十三章

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無詠唱魔法編ー7





 「――なるほど、魔方陣を複数記憶できない原因は分かりました。では、一度でも魔法を行使すると魔鉱石に記憶させた魔方陣が消えてしまう理由は?」



 「え、あっ、は、はい。そ、それについては――」



 ラフィテアの矢継ぎ早な質問にイクスは慌てて手元の資料を捲っていく。



 「長い年月を経て魔素が結晶化したヴェンダーナイトは魔素の影響を受けやすいんです」


 「ヴェンダーナイトは魔素の塊なのじゃから至極当然のことじゃろうな」



 「……はい。この特性を利用して私たちは魔方陣を記憶させているのですが、記憶させた魔方陣を使用するためには使用者が自身の魔力を魔鉱石に流し込まなければなりません」


 「つまり――」


 一通り資料を読み終えたラフィテアは眼鏡を外すと前髪をかき上げそっと目頭を押さえた。


 「影響を受けやすいがゆえに魔法を発動させると魔方陣も消えてしまうのですね」


 「そ、その通りです」



 これが無詠唱魔法にとって致命的な欠陥であることを彼女も認識しているのであろう。


 イクスの声はどこか弱弱しくやがて尻すぼみに消えてしまった。



 領地対抗戦で見た様に使い捨てでも良いなら現段階でもイクスが開発したものは有用であることに違いない。


 だが、魔鉱石の希少性が故に使い捨てという選択肢を選ぶことは出来ない。



 「ねぇ、本当にコレ使い物になるわけ?」



 ユシルは魔鉱石を持ち上げると光に当て覗き込んだ。



 「なってもらわなきゃ困る。なんたって俺たちはこれから魔王を相手にしなきゃならないんだからな」


 「魔王、ね。折角綺麗な宝石なのに争いの道具にしか使われないなんて勿体ないわね」


 


 屋敷に戻ってきた俺たちは完全に寝入ってしまったドワ娘を起こさぬようエララに預けるとその足で再びジョワロフ公の邸宅へと向かっていた。

 


 昨晩エララにジョワロフ公との面会の約束を取り付けてもらった際、先方から早速会食の誘いを受けたのだ。


 「全員で」


 という話だったが粗相をしたドワ娘は丁度寝ていたので置いていくことにした。



 数十人程が入れるほどの大部屋に通されると既に俺たちの席が人数分用意されており、白いテーブルクロスの上には銀の食器とグラスがきれいに並べられている。



 会食の場には俺とラフィテア、ユシルの他にジョワロフ公と彼の夫人らしき女性がおり、料理長と使用人数名も待機していた。



 到着するなり次々と運ばれてくる色とりどりの料理。


 前菜だけでも3種類用意されており、スープも2種類から自由に選べるようになっている。


 食前酒の説明を受けていると奥では早速料理長が鉄板に火を入れメインディッシュの調理を始めていた。


 



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