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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十三章

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無詠唱魔法編ー4





 久しぶりに休日を満喫した俺たちは翌日ジョワロフ公からの言伝を受け取ると、二日酔いの二人を無理やり連れ出し再び彼の屋敷を訪れた。



 「うぷっ。……き、気持ち悪い」



 屋敷の前で立ち止まったドワ娘は塀に手をつき前かがみで 嘔吐いている。



 「調子乗ってあんなに飲むからだぞ。いくら酒に強いからってもう少し限度というものをだな――」


 「せ、説教なら後にしてくれ。ただでさえ気持ち悪いのに耳元で騒がれたら堪らん」


 「まったく。ジョワロフ公の前では頼むぞ」


 「し、心配せんでも大丈夫じゃ。さっき胃の中の物は全部出してきたからの。間違っても領主に吐しゃ物を浴びせることは無いのじゃ」


 「当たり前だ!」



 しばらく深呼吸を繰り返していたドワ娘だったがようやく気分が落ち着いたのか何事も無かったように前を歩いていく。


 ユシルはユシルで頭の上でずっといびきをかいているし、俺とラフィテアは思わず二人で嘆息した。



 「――ラック公よ、こちらの都合に合わせてもらって申し訳ない。地方の領主と言え、煩わしい雑用が多くてな。それよりも昨日は皆ゆっくり休めたかな?」



 従者に案内され一階にある応接間に通されると、既にジョワロフ公が俺たちの到着を待っていた。



 「はい、ありがとうございます、ジョワロフ公。おかげで長旅の疲れもすっかり癒えました」


 「そうか、それは良かった。暫く使っていない別邸だったが何か不便はなかったか? 何かあれた遠慮なくエララに申し付けてくれ」


 「ご厚意感謝致します」


 「うむ。それではわざわざ足を運んでもらった事でもあるし、早速無詠唱魔法の研究開発についての話を進めていこうではないか」


 「分かりました。ところでジョワロフ公、そちらの女性は?」


 ジョワロフの背後に視線をやると白衣を着た女性がおずおずと頭を下げた。


 「おぉ、そうだった。これは失礼。まずは彼女を紹介しておくべきだな。イクス、ラック公に挨拶を」


 「は、はい」


 前髪で顔半分を隠した童顔の女性はぎこちない様子で一礼してみせた。



 「……お、お目にかかれて光栄です、ラック様。わ、わたしは、その、イクス・スタディアーレとも、申します」



 たどたどしくどことなく田舎訛りがある。


 こういう場にはあまり慣れていないのだろうか。


 イクスは自分の名前を名乗ると顔を赤らめそのまま黙りこくってしまった。



 「おっほん。申し訳ない。イクスはあまり人前で話すのが得意ではないのだ。不快に思ったのなら許してくれ。彼女はイクス・スタディアーレ。わしが設立した魔法研究所で無詠唱魔法の開発に携わっている主任研究員だ」


 「主任研究員? 随分と若く見えるのに主任とは余程優秀なのですね」


 「そうだ。彼女はファンユニオン王立学院を首席で卒業し王国の宮廷魔法師になる所をわしが強引に引き抜いてきた逸材だ」



 ラフィテアやセレナと同じ王立学院出身者。


 貴族や王族、もしくは特別な才能がある者しか入学を許されない超エリート校。


 そこの首席ともなれば相当な物だろう。



 「ラフィテアは彼女のことを知っているのか?」


 「イクス・スタディアーレ、確かメリダと同じ学年にそのような名前の学生がいたはずです。学年一の秀才でとても優秀だったと聞いた事があります」


 「そ、そんな優秀だなんてとんでもありません」


 イクスは恥ずかしそうに手と顔をぶんぶんと振ると更に顔を赤くした。


 「見ての通り恥ずかしがり屋で引っ込み思案な性格だが魔法の分析・解析能力に関してこの者の右に出る者はいないとわしは思っている。実際、彼女がいなければ魔法研究もここまで進んでいなかった。……だが、無詠唱魔法を完成させるためには彼女だけの力では限界がある。


 詳しい内容についてはあとでイクスに説明させるが二人には理論や仮説は勿論、実際の検証や魔鉱石へ加工する際のアイデアなど多岐に渡って力を貸してもらいたいのだ」



 一歩後ろで聞いていたイクスは黙ったまま力強く何度も頷いている。


 

 未だ誰も無しえたことがない無詠唱魔法。


 完成までには多くの課題が山積しているのだろう。


 だが、風魔法を得意とするラフィティアとドワーフ族のフレデリカが研究に加わればきっと課題を克服できるに違いない。



 「これからわし自慢の研究所に皆を案内する。この国の未来のためにどうか力を貸してほしい」


 「はい、もちろんです。ジョワロフ様」


 「うむ。期待しておるぞ。――時にフレデリカ王女、先程からどうも顔色が優れないようだが……」



 俯いたまま先程から一言も発しないドワ娘を心配してジョワロフ公が彼女に声を掛けた次の瞬間――



 「も、もう限界じゃ」



 真っ青な顔で必死に口を押えていたドワ娘は胃袋に溜まっていた最後の汚物をテーブルの上にぶちまけていた。





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