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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十二章

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忌まわしき赤竜の姫ー53





 「まさかとは思ったが、やはり貴様だったか」


 

 共を連れ目の前に降り立ったニグルムは特に驚くでもなく平然と俺たちを見やった。



 「わざわざ忠告してやったというのに選択を誤りこの地を訪れるとはな。人間とはどうしてこれほどまでに愚かなのか」


 「ニグルム、彼女は、ヴェルはどこにいる」


 「ヴェル? ……あぁ、あの忌み子のことか。人間の領主よ、お前はそれを知ってどうするつもりだ?」


 「どうする? そんなことは決まってる! 彼女を助け出す。その為に俺たちはここに来たんだ。さあ答えろ、ニグルム! 彼女はどこだ!」


 「やはり貴様たちは何も解っていない。大局も見ず一時の感情だけで行動する野蛮な生き物。だから人間は愚かだというのだ」


 「……愚か、か。確かにそうかもな。―ーお前の言う通り俺たちは愚かなのかもしれない。賢くも無ければ強くもない。ちょっとしたことで怪我をし命を落とす。お前たちからすれば本当に取るに足らない存在だ。でも、だからこそ俺たちは仲間を大切にし助け合って生きてきた。弱いからこそ支え合って生きてきた。ニグルム、俺は訳も分からないまま連れていかれた仲間を「はい、そうですか」と見捨てられるほど利口な人間じゃない。俺たちは冷酷なお前たちとは違うんだ」


 「わ、我々、竜族が冷酷な種族だと!」



 ニグルムに付き従っていた男は思わず前に出ると鋭い牙を露わに強烈な殺気を放った。



 「貴様、ニグルム様や赤竜帝様のお気持ちも知らずに――!」



 「――私にはまるで自分たちは冷酷ではないと言っている様に聞こえる」



 敵意に満ちた空気に俺は思わず武器に手をかけ臨戦態勢を敷いたが、ニグルムはいたく冷静に男を制止した。



 「下がれ」


 「し、しかし、ニグルム様!」


 「私の私情などどうでも良い。それよりもそんな下らぬ事でこの地を汚すな」


 「……わ、分かりました」



 男はニグルムに諫められしぶしぶ了承すると頭を下げ俺を睨みつけながら後ろに下がった。



 「人間の領主よ、忌み子の居場所だったな? ――あの娘なら今は赤竜帝の元にいる」


 「赤竜帝の元に?」


 「そう。アレはいま赤竜帝の力で深い眠りについている」


  

 そうか。


 良かった。


 ヴェルはまだ殺されていなかった。


 これでまだ可能性は残されている。


 

 ……だが、どうしてニグルムは俺に彼女の居場所を教えた。


 世界に破滅をもたらす忌み子、ヴェルを殺す為に連れ去ったというのに。



 「ニグルム、どうしてヴェルの居場所を教えた」

 

 「……どうして? 変なことを聞くものだ。私は聞かれたから答えたまでだ」



 聞かれたから答えた?


 普通こんな素直に答えるものか?



 「教えてくれたんだからいいじゃない。竜族って案外優しいのですわね」


 「優しい? 違うな、女。これは優しさではない。私はただ野ネズミにこの地をうろつかれては困ると思っただけだ」


 「野ネズミですって!? 竜族だからってあまりわたくしたちを馬鹿にしていると猫も尻尾を噛まれますわよ」


 「そんな事は有り得ない。それにお前たちがあの忌み子の居場所を知ったとしても何も出来はしない。――赤竜帝の元から連れ出すことも、ましてやこの地から逃げ出すことも、な」



 「え? ……わたくしの聞き間違えかしら。この地から逃げ出せないって、ど、どういうこと?」



 「言葉のままの意味だ。お前たちも知っての通りこの地は強力な結界で覆われおり許可なき者は決して立ち入ることが出来ない。竜族以外の者がこの地へ立ち入る為には結界を破壊するかお前たちの様にエルフ共の助力を得る必要がある。……そしてそれは出る時も例外ではない」


 「で、出る時も?」


 「何者をも拒むこの強力な結界、どうして普通に出られると思う。お前たちはもう地上に帰ることは叶わない」


 「……う、嘘、嘘、嘘。 嘘ですわよね!? ラフィテアお姉さま! わたくしたちもう二度と地上に帰れませんの!? 嫌よ、嫌、嫌! セレナお姉さまに会えなくなるなんて、わ、わたくし耐えられませんわ!」


 「落ち着きなさい、メリダ。きっと帰る方法はある」


 「で、でも!」


 「私たちと同じようにこの地を訪れた者もいる。それにニグルムは許可なき者は立ち入れないと言っていましたが、逆を言えば許可さえあれば誰でも立ち入れる、という事になりませんか」


 「た、確かにそうですわね」



 指輪を通して感じるフレデリカの気配。


 間違いなくシーナとドワ娘もこの地にいる。


 彼女たちが結界を越えここに辿り着いたという事はニグルムの言うなにかの許可を得たからなのだろう。


 シーナたちが結界を越えられたのだから、その逆も可能なはずだ。



 「ふん。そこのエルフが言うように許可さえあればお前たちもあの結界を出入り出来よう。だが、断言しよう。間違ってもお前たちは結界を越えることは出来ない」


 「どうしてそう言い切れる?」


 「簡単な答えだ。――この結界を維持、支配しているのが赤竜帝だからだ」



 赤竜帝。



 世界樹誕生よりも前からこの世界にあったとされる伝説の竜。


 ヴェルの父親にしてこの地を治める竜族の王。



 結界を抜けここから生きて帰る為には赤竜帝の許可が必要。


 つまりヴェルを助け出す為にも赤竜帝と決着をつけなければならない。



 「私がお前たちの問いに答えた意味が分かったか? 答えを知ったところで何も意味は成さないし、結果も変らない」


 退路は断たれ、門前には竜。


 だが、やるべきことが明確になった以上、迷わなくて助かる。


 そうだろ、ラフィテア?


 俺の視線に彼女も力強く頷いてみせた。



 「――ニグルム、意味がないか、結果が変わらないかどうかは自分たちで決める」


 「ふっ、そうか。そうだったな。人間とは愚かな生き物であった。オルメヴィーラの領主よ、己の無力さに気付くまでせいぜい足掻き続けるがいい」












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