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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第四章

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ドワーフ王国のドワ娘姫ー8





「なぁ、ドワ娘。……まさかとは思うがここを通っていくのか?」


 「もちろんじゃ」


俺は足元に出現した小さな隠し通路の入り口を覗き込むと、その先にはドワーフ1人が横向きになってようやく通れるほどの狭い空間が長々と続いていた。



 「他に隠し通路はないのか?」



「ないぞ。ここがガラドグランへ通じる唯一の道じゃからの」




ドワ娘は俺の質問の意図をまだ理解してないようで、なにか問題でもあるのかと言わんばかりの表情をしていた。





ふむ。どうやら悪い予感の正体はこれだったらしい。




俺とノジカの体格ではこの通路は狭すぎて、とてもじゃないが通ることはできそうにない。




 仮にここが通れたとしても先がどうなっているかわからない。

 

 進んだはいいが途中で通れず引き返すなんてまっぴら御免だ。



念の為、もう一度覗き込んでみるが、どう考えても俺たちには無理そうだ。



「お主、なにをそんな困った顔をしておるのじゃ?」



ドワ娘の奇異そうな面持ちに思わずため息が零れ落ちる。



「ドワ娘。俺とノジカがこの狭くて低い通路を通り抜けられると思うか?」



彼女は通路と俺たちの身体の大きさを交互に見比べると、得心がいったのか成程と手を打った。



「まさか隠し通路にこんな落とし穴があったとはな」



「あのなぁ」



「し、仕方なかろう! わらわも実際にこの隠し通路を使うのは今回が初めてだったのじゃ」



俺の冷たい視線に気づいたのか、ドワ娘は開き直って言い訳をし始めた。



まぁしかし、よくよく考えればこの通路はドワーフの王族が脱出するために使うもの。


当然、敵が簡単に追ってこられないような工夫がされていておかしくない。


この出入り口もドワーフ以外が通れないようにわざと狭く造ったのだろう。



「それにしても困ったな。ここが使えないとなると俺たちどうやってガラドグランに入ればいいんだ?」



俺たちが頭を悩ませていると、足元の隠し通路を興味津々な様子で覗き込んでいたノジカがすっと顔を上げた。



「あのさ。ずっと思ってたんだけどボクとラックは普通に正面から入っちゃダメなの?」



「「えっ?」」



俺とドワ娘は思わず二人で顔を見合せた。




言われてみれば確かにそうだ。


俺とノジカは別に追われている訳でも保守派の連中に狙われている訳でもないんだから、なにもここを通って中に入る必要はない。


ドワ娘とドボルゴの二人だけがここを使って中に入れればいいじゃないか。



「ノジカ。お前、たまにはいい事言うな」


「えへへ……。ってボクのこと馬鹿にしてるでしょ?!」


「してない、してない。素直に感心しただけだ」


「そう? ならいいけど」



「それじゃ、一旦ここで二手に分かれて中で合流するか」



「うむ、そうじゃな。二人には何とかして正面入り口から王都内に入ってもらうしかないの」


「わかったよ。それはこっちで考えてなんとかしてみる。それで、中に入ったら俺たちはどこに向かえばいい?」



「……そうじゃな。ガラドグランの中央広場に”炎の金づち亭”という工房がある。父ナオグリムの古くからの友人がやっている店じゃ。きっとあの男ならわれらの力になってくれるに違いない」



「わかった。”炎の金づち亭”だな」


「うむ。――そうじゃ、念の為これをお主に渡しておこう」



ドワ娘は左手にしていた指輪を大事そうに外すと俺にそっと手渡した。



「これは?」

 

指輪を光にかざして見るとリングの裏側に紋章のようなものが刻印されている。



「王家の指輪じゃ。王族しか持たぬこの指輪を見せれば、あの男も二人がわらわの仲間だと信じてくれよう」



「そっか、わかった。それじゃ次に会う時までこれは借りておくぞ」



「うむ。わかっていると思うがその指輪は大事な物じゃ。くれぐれも無くさないようにな」



「わかってる」



……とはいえポケットに入れておくと落としてしまいそうで不安だ。


無くさないように指に嵌めておくか。



「あっ」


俺が何気なく指輪を嵌めると、なぜかドワ娘は思わず短く声を上げた。



「どうかしたのか?」


「い、いや、なんでもないのじゃ」



なんでもないって、俺には明らかに動揺したように見えたのだが……。



「後できちんと返すから心配するな」



「そ、そのような心配してはおらぬ! そんな事よりちゃんと”炎の金づち亭”に来るのじゃぞ」



「安心しろ。途中で投げ出したりしないさ。約束したからには最後まで付き合うさ」



「な、ならよいのじゃ」



ドワ娘は安堵の笑みを浮かべるとほっと胸をなでおろした。



「それじゃドワーフ王を、いやドワ娘の父親を助けに行くとしますか」



俺は二人に一時の別れを告げると、馬車に乗り込みガラドグランに向けて出発した。







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