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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十二章

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312/422

忌まわしき赤竜の姫ー42



  


 カルテシュカが手にした傘をくるりと回転させるとエントランスホールにいたはずの俺たちはいつの間にか見知らぬ場所に立っていた。


 そこは果てなく続く本棚の壁に囲まれた回廊。


 見上げた先にも途切れる事無く続く本の棚。


 本、本、本。


 その全てが世界樹ユグドラシルの見た記憶の一節。


 この広大な本の山のどこかにカルテシュカの言う異物が紛れ込んでいるらしい。



 

 「――どう? キュウちゃん」



カルテシュカは愛用の傘を閉じると俺の肩に止まっていたキュウ助を自らの腕に呼び寄せ相棒と共に注意深く異物の気配を探っていく。



 「どうやら一足遅かったみたいだな。もうここにはいないみたいだぜ」


 「そう、それは残念」


 「ったくお前たちがグズグズしているのが悪いんだ! さぁ、さっさと奴の後を追うぜ!」


 「……ちょっと待って、キュウちゃん」



 何かを考え込むように辺りを見回したカルテシュカは、羽を広げ飛び立とうとするキュウ助を制止した。



 「なんだよ、カルテシュカ。早く追いかけねぇと奴の魔素の残り香が消えちまうぜ?」


「そうなんだけど……。ねぇ、キュウちゃん。あの異物がどの記憶の本を探していたのか分かる?」


 「ん? あぁ、それなら……、上から114段目の棚の左から1524冊目の本だぜ。それがどうかしたのか? カルテシュカ」


 「今更だけど来訪者がここに来る理由なんてたった一つしかない」


 「ここに来る理由?」


「そう、それはオル君と一緒」



 俺がここに来た理由は――って、オル君?



 「オル君ってそれ、もしかして俺の事か?」


 「そっ。いい呼び名でしょ? オルメヴィーラの領主、略して“オル君”。ってそんな事は今どうだっていいの。それよりも来訪者がこの場所を訪れる理由、それは世界樹ユグドラシルが見た過去の記憶を得ようとする為」


 「そうか。つまりその異物が何を求めここに来たのかさえ分かれば、先回りすることが出来るかもしれないってことか」


 「ご明察。尻尾を掴むことが出来ないなら罠を張って先回りするだけ。……そういう訳だからキュウちゃん、ちょっとその本を取って来てくれない?」


 「え!? なんでオレっちが!」


 「なに? 何か文句でもあるの? キュウちゃん」


「い、いえ! な、何でもありません! このキュウ助、すぐに取って参ります!」


 カルテシュカの冷徹な視線に身震いしたキュウ助は嫌々ながらも翼を広げ大きく羽ばたくと、あっという間に目的の本を咥え彼女の元に戻ってきたのである。



「はぁはぁ、も、持って来てやったぜ、カルテシュカ」


「ありがとう、キュウちゃん」



お礼もそこそこにキュウ助からタイトルのないその本を受け取るとカルテシュカはすぐには開かずに何故か一旦表紙を確認していた。



「カルテシュカ、カルテシュカはこの本の中身が何なのか知っているのか?」


「まさか。ここには見ての通り無数の本が収められてる。そしてそれは止む事無く永遠に増え続けていく。そんな無限ともいえる本の中身を全て覚えている者なんて何処にもいやしない」



ここに収められている本の内容が何なのか誰も知らない?


それじゃカルテシュカはどうやってこの莫大な中から本を選んだり探したりするんだ?



 「私の場合は探したい本があれば所蔵場所を魔法で検索することが出来るから、いちいち本の中身を知る必要も覚える必要もない」


「そんな便利な魔法があるんだな」


「まっ、ここの管理人をやってるくらいだからな、それくらい出来て当然だろ」


「そういう事。それから本の中身が分からなくても表紙を見ればいつここに所蔵されたのかぐらいは分かる」


 「へぇ、そうなんだな。で、これは一体いつの本なんだ?」


 「これは結構最近、所蔵された本。……今から大体二千年前」


 二千年前!?


 「まっ、オレっち達からすれば二千年前なんてつい最近のことなんだよ」


 「そんな事はどうでもいい。それよりも今はこの本の中に記されている記憶の中身が大事」


 「そうだな」


 「それじゃ早速本の中身を確認しましょ。オル君、私の肩に手を置いて頂戴」


 「わかった」


 俺は言われるがまま彼女の肩に手を置く。


 「あの異物が何を探しまわっているのか、きっとこの記憶の中に答えがあるはず。キュウちゃんは外で異物の気配を探ってて」


 「おう! 任せろ!」


 「それじゃ、行きましょ」



 そう言ってカルテシュカが本の表紙に手をかけると俺たちはキュウ助を残し世界樹の記憶の中へと引きずり込まれていった。







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