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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第四章

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ドワーフ王国のドワ娘姫ー7






「あれがドワーフ王国ガラドグランじゃ」



馬車から身を乗り出したドワ娘は久しぶりに戻ってきた我が家を懐かしむようにその名を口にした。



屹立する火山を背に高さ数十メートルに及ぶ奇岩群に囲まれたガラドグランは正に天然の要塞と呼ぶに相応しい。



そしてその奇岩群の中央には遠くからでも一目でわかるほどの巨大な鋼鉄の扉がまるでよそ者を拒絶するかのように立っていた。




「どうやってあの中に入るんだ? まさか、正面から突入するつもりじゃないだろうな」



「まさか。わらわもそこまで愚人ではないぞ。


ここから少しばかり進んだ先に王族しか知らぬガラドグランに通じる隠し通路があるのじゃ」



隠し通路ね。



王族や大貴族、はたまた大悪党の住む屋敷なんかには暖炉や可動式の本棚の裏に脱出するための隠し通路の入り口がある、なんて話を耳にしたことはあるが実際にこの目で見たことはない。



ゲームの世界じゃ隠し通路は大抵地下の水路に続いていて、モンスターの巣窟になっていたり、待ち伏せされていたりする場合が多いんだが……。



「なんじゃ難しい顔をしおって。わらわの言葉を疑っておるのか?」


「いやいや、そういう訳じゃないぞ」



いかん、いかん。


どうも最近厄介ごとに巻き込まれることが多くて物事を悪い方向へ考える癖がついてしまったようだ。



俺はネガティブ思考を振り落とすようにゆっくり頭を振ると、馬車の手綱を握り直した。




4人を乗せた馬車はドワ娘の案内に従いガラドグランへと続く道を外れると、獣も通らないような鬱蒼とした道を分け入っていく。



時折、黒い影が頭上を通り過ぎ、狂ったような獣の鳴き声がどこからともなく聞こえてくる。



「おい、本当にこっちでいいんだろうな?」



「この辺りはドワーフ族にとって遊び場も同然。そんなに心配せずとも大丈夫じゃ」



彼女の声にはいつにも増して得意の響きがあった。



しかし、なぜだろう。



このドワーフのお姫様が自信満々なほど、俺の警戒心が高まっていく。




俺は手綱を引き馬車の速度を落とすと周囲を警戒しながらゆっくりと進んでいく。


しばらくすると馬車はざっと数百メートルは続いているであろう天然の樹木のトンネルに差し掛かった。



両脇にずらっと立ち並んだ樹木は空から降り注ぐ光を奪い合うように、わずかな隙間を見つけては枝を伸ばし絡み合っている。



その為、トンネル内に太陽の光が届くことは殆どなく、そこは夜の様に暗く隙間から極わずかに差し込む光は夜空に瞬く一等星のようだった。



しかしその暗闇が永遠に続くことはなく出口に近づくにつれ徐々に光を取り戻し、

そして4人を乗せた馬車は暗く静まり返ったトンネルを抜け出した。







――くっ!



強い日差しに俺は一瞬視力を失った。



暗闇に目が慣れていたせいか、まぶしさに思わず手をかざしたが徐々にその明るさにも慣れ、ゆっくり手を降ろすと目の前には今までとは全く違う風景が広がっていた。



「ここはもしかして――」



「そう、ここはドワーフ族の墓じゃ」



馬車を降りたドワ娘は周囲を一度ゆっくり見渡した後、広場の中央に向かって真っすぐ歩き出した。




広場の中央には彫刻が施された荘厳な墓石が鎮座し、そこから放射状にいくつもの小さい墓が立ち並んでいる。




彼女は墓前で立ち止まると神仏を敬うように深く一礼した。



「この墓は?」



「ここは歴代の王族が眠る場所じゃ。ドワーフ族は大地の神を信仰する種族。われらは大地より生まれ、大地と共に生き、そして最後はこの地に還るのじゃ」




彼女は地面に両膝をつき目を瞑ると、しばしの間静かに両の手を合わせていた。








「――さて、ご先祖様に挨拶も済んだことだし、そろそろ出発するかの」



「出発するかのって、肝心の隠し通路は一体どこにあるんだよ」



「そんなに慌てるな。秘密の抜け道は歴代の王によって守られておるのじゃ」



そう言うとドワ娘は広場を見守る様に安置されていた龍神像の前に立ち、何やら魔法の詠唱を始めた。



「ねぇ、ラック、見て!」



隣で見ていたノジカは石像を指さし驚いたように何度も瞬きしている。



さっきまでただの石だったはずの龍の瞳が彼女の魔法に呼応したのか、まるでダイヤモンドの様に光り輝きだした。



ドワ娘は煌めく龍の瞳を両手で力いっぱい奥へと押し込むと、俺の足元でカチッと何かのスイッチが入る音が聞こえた。



すると次の瞬間、巨大な墓石がゴォォォォと鈍い音を立てながらゆっくりと動き出し、そしてガラドグランへと続く隠し通路の入り口が姿を現したのであった。








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