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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十二章

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忌まわしき赤竜の姫ー29






 長老たちの意見陳述の後、しばしの休憩を挟み一回目となる採択が行われた。



 採択の方法は無記名による投票方式。


 エルフ族の評議会は全会一致が原則であり、三回行われる採択で一人でも反対に回ればその評議会の議題は否決される。


 ただ一度否決されたとしても再度別の長老が同じ議題を議会に提出すれば、再び評議会が開かれることになる。


 今回否決されたとしても次に開かれる評議会で採決が覆る可能性もあるが、短い期間で反対に回っていた長老を説得し賛成に回ってもらうのは限りなく難しいだろう。


 つまり時間的猶予があまりない俺たちにとってこの評議会が最初で最後のチャンスであることは疑いようもない。



 小さな木箱に入れられた投票用紙をクルゴン長老が皆に見える様に一枚一枚取り出し順番に広げていく。


 まだあと二回採択の機会があるとはいえ、否応なし喉が渇き手に汗が滲む。



 すべての開票が終わり俺たちに示された投票結果は―― 


 賛成:2票 反対:2票



 賛成反対が半々。


 反対に回るのはエフィロス長老だけかと思っていたが、ソロンディール長老も反対に回ったのだろうか。


 いや、これは無記名の投票。


 クルゴン長老が反対に回ったという可能性もなくはない。



 ……どちらにしても説得すべき相手がエフィロス長老一人から二人に増えたってわけだ。



 サリオンを見て一人優越感に浸る東守のエフィロス。


 無言のまま腕を組みただじっと座す西守のソロンディール。


 そして一切表情を崩さず笑みを浮かべる南守のクルゴン。



 この結果をあと二回の採択で覆す。


 これはなかなかに骨が折れそうだ。





 「――ソロンディール長老ですか?」


 

 俺が最後の一人である長老ソロンディールの名を出すと、アンナはとても困ったように言葉を詰まらせた。



 「ソロンディール長老様はあまり周囲の人と積極的に会話をするような方ではないんです。正直、私もあの方の肉声を聞いたことが殆どありません」


 「サリオン長老や他の長老たちとの関係はどうなんだ?」


 「……そうですね。誰かと仲が良いとか悪いとか、そう言う話も一切聞いたことがありませんね。ですがソロンディール長老は四長老の中でも一番の古株らしく皆さんあの方にはとても敬意を払っています」


 「一番の古株、ね。……古株、古株。なぁ、アンナ。エルフ族ってそもそも寿命ってものがないんだろ?」


 「はい、そうですね」


 「だったら四長老たちってのは一体いつから長老の役職を務めてるんだ?」


 「はい? いつから、ですか?」


 「あぁ。だって寿命じゃ死なないんだろ? エルフ族は世界樹を守る役割を“神様”与えられこの地を守ってる。って事はあの四人はその創成期からずっと生き続けエルフの民を導いているのか?」


 「えーっと、それは――」


 「いえ、ラック様。確かお爺様は先代の長老からその神職を受け継いで今の地位にいると仰っていました。……多分、他の長老様たちも同じだと思います」


 「なるほど。じゃ、その先代の長老たちってのは役職を引退した後どうなったんだ?」


 「多分この里のどこかでのんびり余生を――」


 「いえ、アンナ。先代、先々代と引退していったかつての長老たちがこの里のどこかで余生を過ごしているなんて話私は聞いた事がありません」


 「それって何かおかしくないか?」


 「……確かに」


 「言われてみれば不思議な話ですね」



 不思議?


 そんな一言で片づけられるような話じゃない気もするが……。


 長久を生きる彼等にとって数百年、数千年の間に起きた出来事をいちいち事細かに覚えていないっていうのも納得できない話でない。


 だが果たして、それがこの里を治めた長老たちの事であっても同じなのだろうか?



 「悪い、悪い。話が逸れたな。今はそんな話より明日の評議会の話だったな。――なぁラフィテアはソロンディール長老についてなにか知っている事はないのか?」


 「そうですね。ソロンディール様はあまり他人と関りを持たない方ですが、エルフ族の中でも伝統を重んじ、厚い信仰心を持つ方だとお爺様は仰っていました。特に世界樹ユグドラシルに対しては人一倍渇仰しているようです」



 信仰心、ね。



 「ですから外部からの変化を嫌い、こういった新しい食べ物も一切口にしないとか」


 「それはなかなか頑固そうな相手だな」







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