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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十二章

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忌まわしき赤竜の姫ー17


 



 フェアノールと別れた俺たちはラフィテアの案内の元、エルフたちが暮らすという集落へと向かっていた。 



 先程まで俺の頭の上でふんぞり返っていたユシルはというと、



 「あそこの爺、婆を相手にするの正直疲れるのよね。崇められるのは気分悪くないんだけど。――まっ、そういう訳だから暫く姿を隠してるから終わったら呼んでよね」



 と言ってそそくさと透明化の魔法で姿を消してしまった。



 「――ラフィテアはエルフ族と竜族の関係について何も知らなかったのか?」


 「はい。そのような話、初めて聞きました」


 「ラフィテアお姉さまが知らないとなると他のエルフたちも竜族についてはあまり知らないのかもしれませんわね」


 「……どうでしょう。私はエルフ族と言っても種族の中ではかなりの若輩者。数千年以上生きる者達なら竜族について何か知っていてもおかしくはありません」


 「す、数千年!? エルフってそんな長生きするのか!?」


 「はい、そうですね。そもそもエルフには寿命というものがありませんから」


 「寿命がない?」


 「噂には聞いてましたけど、本当にそうなんですのね」


 「えぇ。ただ、寿命がないと言っても当然“死”はあります。肉体の損壊や自ら命を絶てば、あなたたちと同じ様に土に還りその魂は天へと誘われます」


 「それにしても、そうか。俺たち人間とは生きる時間が全然違うんだな」


 「……そう、ですね」


 

 ”生きる時間が違う”


 その言葉にラフィテアは一瞬言葉を詰まらせ俯いた。



 永劫の時を生きるって事が彼らにとって幸せとは限らない、か。



 俺たちはいつまでもずっと一緒にはいられない。


 そんな事は初めから分かっていたが、いつか必ず訪れる別れを考えると胸が少し苦しくなった。




 「――お姉さま、もしかしてここが?」



 徐々に大きくなる世界樹を見上げながら歩くこと数刻。


 ようやく俺たちはラフィテアの生まれ故郷であるエルフの住まう地へと辿り着いた。



 「えぇ、ラック様、メリダ。ここが私たちエルフの住む地“名もなき集落”です」



 エルフの故郷“アルフヘイム”に存在する巨大な集落。



 それは正に幻想郷と言っていいだろう。



 天を貫く世界樹の幹に幾つもの木々が螺旋状に巻き付き一つの大きな街を形成している。


 巨大な木の幹の上には幾つもの家屋が建ち並び、それが上へ上へと続き、更にその上にはひときわ目を引く大きな社が存在していた。



 人間が暮らす一般的な街とは異なり大地にエルフの住まう建物はなく、ユグドラシルの周辺には彼等が食べているであろう色とりどりの果樹、小麦、野菜なる畑が広がり、それとは別に見たこともない種類の薬草が至る所で育てられている。


 なんとも長閑な風景。


 長寿という事も関係しているのか、街の喧騒とは無縁の穏やかな空気が辺り一帯を支配していた。




 自然豊かな森の先、集落へ続く樹木の階段の入り口にはエルフの男が一人、物珍しそうにこちらを見やっていた。



 「――外界の人間よ。このエルフの集落に何用か?」


 「私はオルメヴィーラの領主ラックと申します。実はエルフ族の皆さまにお知恵を借りたくこの里を訪れました」


 「我らに知恵を? 」


 「はい。……実は私たちの大切な仲間があの竜族に連れ去られてしまったのです」


 「竜族に? なるほど。それは災難だったな。……しかし、竜族か。果たしてこの里に竜族に詳しいものがいるかどうか」


 「彼らは私たちにとってかけがえのない仲間。どうにか彼らを助けるべくお力を」


 「この場所にいるという事はそれは世界樹に認められたと言うこと。すなわちエルフ族にとってもあなたがたが大切な客人。出来る事なら我々も力を貸してやりたいが……」


 

 他種族との交流が少ないせいか、それともエルフ族特有の文化かは分からないが、外界から来た部外者にあまり友好的ではない、そんな雰囲気がこのエルフから感じ取れた。


 エルフの男がどうするべきか判断しあぐねているとラフィテアが男の前に進み出た。



 「――私たちをサリオン長老に会わせてもらえないでしょうか?」



 「サリオン長老? 評議会の? どうして外界の者がサリオン長老の名前を」



 エルフの男はラフィテアを見るや否や驚いたように目を見開いた。



 「も、もしや、ラ、ラフィテア様!? あぁ、まさか!? お、お戻りになったのですか!?」


 「……はい、今しがた。それでサリオン長老にお会いすることは可能ですか?」


 「え? あ、はい。い、今すぐ確認してきますので、少々お待ちください」


 「ありがとう」


 「ラフィテア様が……。きっとサリオン長老もお喜びになります!」



 エルフの男は彼女がラフィテアだと知ると何故だか興奮した様子で階段を駆け上がっていった。



 「ラフィテア――」


 「ごめんなさい。詳しい話は後で」



 そう言ったきりラフィテアは顔を伏せ黙ってしまった。





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