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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十二章

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忌まわしき赤竜の姫ー11





 「――なんで人間って言うのはこんなに傲慢で野蛮なの? エレファ」


 年端も行かぬ少年は無残に切り落とされた木々たちを拾い上げると、表情を変えることなくただじっと見つめている。


 「それは難しい質問だね。生きるという事はそれだけで業を背負うようなものだからね。命を奪い、命を喰らい、命を繋ぐ。他者にとってそれは酷く野蛮で傲慢なものかもしれないね」


 「なんか難しいね。僕にはよくわからないや」



 老婆の言葉を呪文のように繰り返し眉をひそめる少年を見てエレファはにこやかに微笑んでみせた。



 「そうだね。いつかきっとミーミルにも分かる時がくるよ」


 「ふーん。そういうものなのかな。――ところでエレファ、これからどうするつもりなの? ユシル姉、あの人間の男に連れていかれちゃったけど」


 「……その事なんだけどね。ユシルとあの人間にちょっとしたお使いを頼もうかと思ってるんだよ」



 「え? お使い?」



 老婆の答えが少年にとって想定外の答えだったのか、ミーミルは驚いたように彼女に聞き返した。



 「あぁ、そうさ。あの娘にちょっと外の様子を見に行ってもらおうかと思ってるんだ」


 「えぇ! ユシル姉に!? それってイグドラは許可したの?」


 「もちろん。なんたってこれはあの方が言い出したことだからね」


 「え!? そうなの!? いいなぁ、ユシル姉。僕も外の世界に行きたかったなぁ」


 「そういう訳だから今からユシルを捕まえてイグドラ様の御意思を伝えに行くよ」


 「はーい」


 

 少しうらやましそうに口を尖らせたミーミルは手に持っていた枝を無造作にばら撒くと、エレファと共に大地に染み込む雨粒の様に地面に溶け込み消えてしまった。


 


 

 確信や確証があったわけじゃない。


 この道が本当に正しかったのかはわからない。


 ただ直感だけを信じて、何重にも覆われた樹木の檻を黒刃で一刀すると俺はユシルの手を掴み再び走り出していた。



 「ちょ! もう、もういいって!」


 「いいや、よくない!」


 「いいって! どうして、どうしてあたしの為にそこまでするわけ!?」


 「さぁね。俺にもよく分からない」


 「はぁ!? あんたって本当に本当の馬鹿なの」


 「そうかもな。ただ――」


 「ただ?」


 「ユシルのあんな寂しそうな顔をもう見たくない、そう思った。――それだけだ」


 「あ、あんた、何言ってるの! バカじゃない! ……ホント、もう、どうなっても知らないんだから」



 赤面しそっぽを向くユシルに苦笑しつつも俺は周囲を警戒しながら風に乗り前を行く蝶々の後を追う。



 意思も言葉も通じない一羽の蝶。


 ユシルを慰める様に辺りを舞い、彼女の髪を彩る。


 俺をあの世界樹の場所まで連れて行ってくれたのはきっと偶然じゃない。



 この蝶もまたきっとユシルの願いを叶えてやりたかったに違いない。


 俺はユシルと共に森を抜け、草原を越え、色とりどりの花畑を駆けてゆく。


 あれからどのくらいの時間走り続けただろうか。


 気が付けば世界樹の追手もなくなり、辺りは静かで平穏な空気に包まれている。


 澄んだ小さな池を見つけると蝶々は惹きつけられるように一周し、ほとりにある若木の枝先にぴたりと止まった。



 「もうそろそろ出口が近いのかな?」


 「どうかな」


 「この子も羽を休めたままだし、ここで少し休憩する?」


 「あぁ、そうだな」



 これだけ走り続けても肉体的な疲れというのはあまり感じないのだが、意識の中だからなのだろうか精神的な疲労は相当なものがある。


 いつ追手が迫ってくるかも分からないから急ぎたい所ではあるが、休めるときに休んでおくに越したことは無い。



 腰を降ろしようやく一息つけると思った矢先、突然、周囲に幼い声が木霊する。



 「――もう追手の事なら心配しなくていいよ」


 「!」



 聞き馴染みのないその声に俺は慌ててその場を飛び退き周囲を警戒するが、辺りに誰かいる気配は一切ない。


 

 「誰だ!」


 「――ごめん、ごめん。驚かせちゃったみたいだね。そんなに警戒しないで。僕は敵じゃない。それからユシル姉、久しぶり」



 ユシルの知り合い、か? 



 彼女に親し気に話しかけた声の主はいつの間にか指先に止まった蝶を愛でながら池のほとりに一人ポツンと座っていた。




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