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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十二章

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忌まわしき赤竜の姫ー5






 樹齢数百年とも、数千年とも思わせる立派な大樹の前で立ち止まるとフェアノールは一歩前に出るよう俺を促した。


 「この先が僕たちの故郷“アルフヘイム”です。僕が案内できるのはここまで。ここから先に進めるかはあなたたち次第です」


 「この先って言ったって、どこにも道なんてないじゃないか」


 「道ならちゃんとここにあります」

 

 「あるってどこに――」



 フェアノールは行く先を指し示すように自身の手の平をそっと大樹に押し当てると、男の手は沼に沈みゆくようにゆっくり木の幹をすり抜けていく。


 驚く俺たちを他所に波紋を浮かべる樹木の表面から手を引き抜くとフェアノールはこちらを見て頷いてみせた。


 「一体どうなってますの?」


 「俺の方が聞きたいよ」



 しんと静まり返った森の中、緊張感に包まれながら俺はフェアノールを真似し慎重に木の幹に手を当ててみる。



 しかし、何故か俺の手は巨大な樹木をすり抜けることなく少し湿り気を帯びた真新しいコケと固い表皮を感じるだけであった。


 「フェアノール、どうなっているんだ?」


 「ラック様には認識することが出来ないかもしれませんが、ここにはアルフヘイムを守る為の結界が存在しています。そしてこの結界を潜り抜けるにはアルフヘイム中央にあるユグドラシルに認められなければならないのです」


 「ユグドラシル? 世界樹に、か?」


 「はい、そうです。エルフの意思は世界樹の意思。ユグドラシルがあなたを認めれば僕たちの故郷に辿り着くことが出来るでしょう」


 「認められればってフェアノール。中に入れさえしないのに俺はどうやったらその世界樹に認められればいいんだ?」


 「――ラック様、手をこちらに」



 俺は言われるまま右手を差し出すとフェアノールは青々とした若葉を一枚掌にそっと乗せた。



 「これは?」


 「それは世界樹の若葉です。世界樹の力を宿すこの若葉を持つ者だけが世界樹の意識に触れることが出来ます」


 「意識に?」


 「はい。彼の意識に触れ世界樹に認められればきっとあなたはこの先に進むことが出来るでしょう」



 これが世界樹の若葉。


 一見すると何処にでもありそうな普通の葉っぱだが、それはひどく生命力に満ち溢れ、魔法の苦手な俺でさえその膨大な魔素を感じずにはいられなかった。



 「ラック様、その世界樹の若葉を手にもう一度この大樹に手を触れてみてください」



 俺はフェアノールの言う通り今一度老木の前に立ち大きく深呼吸をするとそっと幹に手を触れる。


 

 「ラック様、どうかお気をつけて」


 「ラフィテア、メリダ、行ってくる」

 


  俺はラフィテアの言葉に小さく頷くとゆっくり目を瞑り、掌に意識を集中させた。

 



 ――それは実に奇妙な体験だった。



 手が触れた瞬間、幽体離脱をしたかのように自分の意識が身体から抜け出し、目の前の樹木の中に吸い込まれ木の根を伝いアルフヘイムの森を駆けていく。


 行く先も分からぬまま迷路のような暗い地面の中を縦横無尽に駆け巡ったかと思うと、今度は幹を伝い、枝を伝い、そして手に持っていた若葉が風に吹かれ、俺の意識も若葉と共に一緒に空を舞う。


 気が付けばそこははるか上空。


 眼下には結界の外からでは見ることが出来なかったアルフヘイムの森が広がり、エルフたちは悠久の変わらぬ時を過ごしている。


 見渡せばバラマール領、そしてはるか遠くにはユークリッド王国がある。



 若葉はさらに風に乗り、俺の意識に反してさらに空高くどんどんどんどん昇っていく。


 空から見えるエルフの森は広大でそしてその中央にはフェアノールの言っていた“世界樹ユグドラシル”らしき大樹があった。


 木と言うにはあまりに巨大で世界樹が無ければ世界の均衡が崩れ、本当に空が落ちてきてしまうのではないかと思わせる程であった。


 鳥よりも高く、雲を突き抜けそびえ立つそれは大きく枝を広げまるで世界を見守っていた。


 俺の意識はゆっくりゆっくり宙を舞い、気が付けばユグドラシルの大樹の中へと吸い込まれていった。







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