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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー56




 


 

 水を吐き出し意識を取り戻したセレナは何とか風の衣を全身に張り直すと、息を整え周囲を警戒した。


 気を失ってなお手放すことのなかった愛剣を両手で握りしめ前方で構え防御態勢を取る。


 「はぁ、はぁ、はぁ」



 僅かな時間とはいえ無防備な状態で水中に投げ出され意識を失っていた。


 あと数秒遅ければロアの餌食になっていたに違いない。



 しかし、窮地を脱したとはいえロアの操る二匹の水龍が虎視眈々と彼女を狙っている。


 彼女がロアに勝つためにはどうにかしてこの水の牢獄から脱するほかない。


 もちろん他人に言われるまでもなく彼女自身がそれを一番よく理解しているだろう。



 「――折角こうしてまた剣を合わせる機会を得たのです。そう簡単に負ける訳にはいきません」

 


 ロアの動きに意識を集中させ体勢を維持しながら水の流れに剣を振るう。


 押し流されず、けれど逆らわぬよう。

 

だが、幾ら切り伏せようとも魔力によって形を成した彼らを斬撃で倒すことは出来ない。


 放たれた風の刃でさえ水塊を前に形を失い泡となって消えていく。




 ようやくロアの攻撃に慣れてはきたがこのままでは先程の二の舞。


 何とかしなければならないのは分かっている


 だが、未だにセレナの頭の中に有効な打開策は見出せていなかった。



 どんな環境においても勝つことが求められている中で、相手の有利な状況に置かれた途端まるで力が発揮できなくなる。


 それでは剣聖としての資格はない。



 きっとこれはロアが彼女を試している。


 剣聖としてセレナに民を守る力があるのかを――。





 衣から溢れた風、吐き出す息が大きな泡となって水牢を上っていく。

 

風の衣がなければ息をすることも出来ない。


 手を止めることなく剣を振るうセレナは自分との実力差を理解したうえで、それでも決して諦めようとはしていなかった。



「魔素が切れればやがて衣も維持出来なくなる。この風の中なら私も自由に飛べるというのに」



 追い詰められた状況でさえ、勝つための方法を模索し続けていた。


 泡の様に生まれては消える無数の思考


だが、諦めず探し続ければいつか必ず答えに辿り着く。



「……そうか」



不意に見つめる泡に活路を見出したセレナは独りぽつりと呟くと何を思ったのか、自分の持てるありったけの魔素を風の衣に注ぎ込み始めた。



 「――これで私も戦える」 



 魔法は使用者の能力によってその効果や効能が大きく変わる事がある。


 威力や精度が上がるのは勿論、効果範囲も左右される。



 本来、風の衣は風を身に纏う事で斬撃や投擲などの攻撃から身を守るために使用される防御系の風魔法。


 水中での使用は元々副産物的なものではあったが、セレナは大量の魔素を使用することで身を守る為のものではなく巨大な風の領域を作り出したのである。



 「――さすがセレナお姉さま! これであの水の牢獄に影響されずに戦えますわ! ねぇ、そうですわよね、ラフィテアお姉さま」


 「そうですね。あれなら制限を受けずに戦えるかもしれません。……ですが、あの規模の魔法をずっと維持し続けるのは厳しいはず」


 「た、確かに」


 「セレナ様は私たちほど魔素の保有量が多くはありませんから。もしこれでロア様に勝てなければ、もうセレナ様に打つ手はないかもしれません」


 「セレナお姉さま」



 メリダは顔の前で手を組むと不安そうな表情で空に浮かぶ水牢を見上げていた。







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