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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー27







 「――おい、上手くいったんだろうな?」



 イライラした様子の男は深い皺をよせると、彼等を睨めつけ大きく鼻を鳴らした。



 「それはさっきも言っただろう、バーデンさんよ。失敗だよ。失敗」



 問い詰めるバーデンを男は面倒くさそうに手で追い払うとグラスを片手に一気に酒をかっ喰らった。



 バーデン?


 どこかで聞いた名。


 ……待てよ、この姿、恰好。




 「失敗だ? 女に金を握らせ奴等の動向を逐一報告させていたってのに、ガキの一人や二人殺れないで何が暗殺のプロだ。聞いて呆れる!」




 そうか、どこかで見たことがあると思ったが、ルゴールドの息子、ツールナスタ・バーデン・アンルイーズか。



 ゴトーの街での一件以来バーデンがどうなったのか、まるで興味すらなかったのだが、どうやら父親であるルゴールドの元にいたらしい。




 「……あぁ? バーデンさんよ。口の利き方には気を付けな。俺たちの雇い主はあんたじゃねぇんだ。それに最初から言っていたはずだ。成功する見込みは薄いってな」



 「それをやり遂げるのがプロだろうが! このバーデン様がお前たちに幾ら大金を払っていると思っている」



 「そんなのは当然だ。俺たちは命を賭け仕事を請け負ってるんだからな。だいたい、あんたの間抜けな部下たちがお粗末な襲撃なんか仕掛けるから奴等の警戒が厳しくなったんだ」



 「お粗末だと!」



 「あぁ、お粗末だね。殺しってのはもっと計画的に、静かに、慎重に、大胆に、そして確実に行うもんだ。相手の行動パターン、性格、特徴、全ての情報を把握し、可能な限り不確定要素を排除する必要がある。なのにあんたの計画ときたらそのすべてが抜け落ちている。アレで殺されるような間抜けはそういないぜ」



 「なんだと!」



 「それにあんたが殺したい相手はオルメヴィーラの領主なんだろ? どうしてわざわざ連れを狙う必要がある」



 「ふんっ! 今回の領地対抗戦はツールナスタ領で行われている。それがどういう事か分かるか?」



 「さぁな」



 「この対抗戦は運営から警備までツールナスタ領主である親父がすべて取り仕切ってる。つまりこの期間中に他領主がオスタリカで暗殺される何て事が起こったら、親父の顔に泥を塗ることになる、そういう事だ」



 「くだらない。じゃ、いつ、その領主を殺す? 対抗戦が終わってツールナスタ領を出た後か?」


 「くっくっくっ! 奴等にはちゃんとおあつらえの舞台が用意されている」



 「おあつらえの舞台ね」



 「あぁ、そうだ。――いま行われている領地対抗戦は故意に相手を殺すことは禁じられているが、不慮の事故の場合はその限りじゃない」



 「不慮の事故。なるほど、つまり大観衆の前でそいつを殺れと」



 「あぁ、そうだ。あくまでオルメヴィーラの領主は大会中不慮の事故で死ぬんだ。わかるだろ? お前たちも俺の親父にそう依頼されているはずだ」



 「まぁな。だが、抽選でツールナスタ領と当たる前にオルメヴィーラが敗退していたらどうするつもりだったんだ?」



 「そんな事には絶対にならねぇさ。さっきも言っただろう? この対抗戦を仕切っているのは俺の親父ツールナスタ領主だ。抽選なんてものはどうとでもなる」



 「怖い、怖い」



 「ゴトーで受けた屈辱を晴らす為だったら俺は手段も金も惜しまねぇ。まずはあいつの目の前で大切な仲間を殺してやる。やつの嘆き悲しむ顔が目に浮かぶぜ。それに対抗戦の出場選手が死ねば試合も有利に運べる」



 「おぉ、おぉ。あんた相当イカレてるな」


 「ふんっ! お前らの様な殺人鬼にだけは言われたくない」



 「殺人鬼? 止めてくれ。俺たちは別に快楽殺人者じゃない。金のためにやっているだけだ。タダ働きなんてまっぴら御免だ」



  「お前たちが仕事熱心な暗殺者か、それともただのイカれた快楽殺人者か、そんな事はこのバーデン様には関係ない。……要はきっちり仕事をこなすか、こなさないか。ただそれだけだ」



 「あぁ、そーかい。しかし、あんたの親父、ルゴールド公もオルメヴィーラ領主に何か恨みでもあるのか?」



 「当然だ。ゴトーの件でかなりの損害を被ったからな。俺の親父は受けた借りは必ず倍にして返す」



 「それで俺たちを雇ったってわけだ」



 「ただ奴を殺すのが目的じゃない。最近のオルメヴィーラ領はかなり金回りが良い。農地の拡大、質のいい木材、豊富な鉱物自然。今じゃ誰もが羨む領土だ。――隣のエンティナ領は魔族に襲われ今も領主は不在。もし、いま仮にオルメヴィーラ領主が死んだら誰があの一帯を統治すると思う?」



 「……欲ってのは恐ろしいね」



 「かつてのオルメヴィーラ領など誰も手を上げない荒廃した領地だったが、今じゃ黙っていても儲かる金のなる木。これを手に入れない理由はない」



 「金のために同国の領主を殺すか」


 「それはお前も同じだろう?」


 「違いない」


 「このバーデン様についてくればこれからも良い思いをさせてやるぞ」


 「そうだな。考えておこう」



 男はグラスに注いだ酒をもう一度飲み干しバーデンに別れを告げ、そこでクロの影絵芝居は幕を閉じた。






 



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