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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー23








 彼女がドワ娘の土魔法に囚われ攻撃を受けるまでの時間は数秒にも満たなかった。



 あの状況、あの態勢で彼女にフレデリカの攻撃魔法を防ぐ手段などあるはずもなく、ドワ娘の勝利は揺るがない、はずだった。

 


――そう、そのはずだった。



 体勢を崩し、空を見上げた彼女は咄嗟にネックレスを握りしめ力任せに引きちぎると、ペンダントと共に祈りを天に捧げていた。




 一瞬、目の前で何が起こったのか俺には理解できなかった。


 それはあの場にいたドワ娘も同じだっただろう。


 

 ジョワロフ公の言葉とまるでリンクするかのように突如現れた巨大な水の龍は襲い来る無数の岩石群を全て体内に取り込むと舞台上で己が勝利を確信していたドワ娘をも飲み込んでしまった。

 

 大地から噴き出すように出現した巨大な龍の化身。



 水の牢獄に囚われたドワ娘は逃げ出そうとがむしゃらに手足をじたばたと動かすが、足掻けば足掻くほど息は苦しくなり徐々に力を失っていく。



 ドワ娘を飲み込んだ水の龍はしばらく闘技場内を狂ったように暴れまわると、勢いそのままに正面から壁に激突し、会場を埋め尽くす波となり消失してしまった。



 「――フレデリカ!」



 俺は反射的に高欄に手をかけ立ち上がると、思わず大きな声で彼女の名前を叫んでいた。

 

 ぐったりとした様子で地面に伏すドワ娘に俺の鼓動は否応なしに早くなる。



 いや、まさか。


 おい、嘘だろ!?


 対抗戦とはいえ決して不慮の事故があってもおかしくはない。



 動揺を隠せず急いで席を離れようとする俺とは対照的にジョワロフ公は椅子に座ったまま静観していた。



 「――ラック公よ。あの者は無事だ」



 無事?


 ジョワロフ公の言葉に慌てて振り向き会場に目をやると、ラフィテアに介抱されたドワ娘が口から大量の水を吐き出し意識を取り戻していた。



 ――良かった。

 


 どうやら大事には至らなかったようだ。


 

 彼女の無事を確認し、俺の波打つ鼓動も徐々に収まっていく。

 



 一時はどうなる事かと思ったが、本当に無事でよかった。



 しかし、あの状況から彼女が負けるなんて。



 未だに――



 「信じられない、と言った顔だな」


 「……あれが無詠唱魔法」


 「そうだ。誰もがバラマールの負けを確信したあの状況で彼女は逆境を跳ね返してみせた」


  

 女がペンダントを握りしめ最後に放った魔法は中級魔法。


 あれ程の威力の魔法。



 あの状況でまともに詠唱をしていてはとてもじゃないが間に合わなかった。



 ――だが、彼女は魔法の行使に成功した。



 無詠唱魔法。



 予め魔鉱石に魔方陣が刻印されていたってわけか。



 「――魔法の発展こそがいまの戦況を打開する可能性を秘めている。ラック公よ、わしの言葉、信じてもらえたかな?」


 「はい、十二分に」


 「それは良かった。問題は山積みだが解決の糸口が見つかっていないわけではない。繰り返し実験を行うことが出来れば、近いうちにわしの夢も実現しよう」


 「その為にもオルメヴィーラ領で採掘された魔鉱石が必要、というわけですね」



 「そういうことだ」

 


 ジョワロフ公は杖を片手に立ち上がると満足そうな顔で俺の肩に手を置いた。



 「わしはこの辺で失礼させてもらうよ」


 「次の試合、見て行かないのですか?」


 「試合? なぜ、見る必要がある。今日の目的は果たせた。それで十分だ」



 つまり、試合結果など鼻からどうでもよく、自分の研究を俺に見せることだけが目的だったってわけだ。



 「では、ラック公よ。次に会える機会を楽しみにしているぞ」



 

 そう言い残すとジョワロフ公は従者を引き連れ振り返ることなく闘技場を後にした。



 



 



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