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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー21


 


 

 魔法それ自体の有用性は決して否定されるものではない。



 バランスの取れたチームならその力を存分に発揮し勝利に貢献することは疑いようのない事実である。


 しかし、一対一の戦闘においてはその真価を半分も引き出すことは出来ない。



 ましてや、このように限られたスペース、条件で行われる対抗戦では言うまでもない。




 現に初戦でバラマール領と対戦した俺は苦戦することなく圧勝した。



 重戦士系の力や守りに特化したタイプが相手ならともかく俺やセレナの様にスピードタイプが相手では思うように魔法を詠唱することは出来ない。



 もちろん、詠唱速度の速い初級魔法なら行使も可能だろうが、それはあくまで戦いの補助にしかならず勝利の決め手とするのは難しい。



 セレナも風魔法を多用しているが、それはあくまで初級の補助魔法であり、自身のスピードを上げたり、足場を作ったり、遠隔攻撃から身を守るものである。


 

 俺の相手はどちらかと言えば後衛よりで近接戦闘の能力は決して高くなく、こちらの攻撃を対処しながら魔法を詠唱するのはやはり難しいようだ。



 何度か詠唱を試みていたがその都度俺の攻撃を受け、魔法詠唱が成功することは無かった。



 やはりこうしてみると、ジョワロフ公が魔法にはまだ改善の余地が多分にあると言っていたのがよくわかる。


 もし仮に詠唱なしに高位の魔法を自在に操る事が出来たのなら、善戦していたかもしれない。



 試合を終えた俺は一人オルメヴィーラ領陣営を離れると、ジョワロフ公が待つ観覧席へと足を運んだ。




 「――噂に違わぬ戦いぶりと言った所か。だが、見世物としては些か面白みに欠けたな」



 「ありがとうございます、ジョワロフ公」


 

 俺は皮肉交じりの褒め言葉に軽く頭を下げると、一番前に用意されていた特等席へと足を運んだ。




 「――これからわらわの大事な試合が始まるというのに、おぬしは一体どこに行こうというのじゃ」



 気だるそうなドワ娘は戦いを終えたばかりの俺への労いの言葉など忘れ、いつもの様に不満を口にしていた。



 「ジョワロフ公がお呼びなんだよ」


 「ジョワロフ? 誰じゃ、それは?」


 「今戦っているバラマール領の領主ですわ。相変わらず何も知りませんのね」


 「ふんっ! 余計なお世話じゃ! しかし、何故おぬしが敵の親玉に呼ばれておる」


 「さぁな。そんな事向こうに聞いてくれよ」


 「しかし、珍しい事もあるものですね。あの領地対抗戦に全く興味がないジョワロフ公が会場に姿を見せるなんて」


 「そんなに珍しい事なのか?」


 「えぇ。私が知る限り開会式以外ではジョワロフ公の姿を一度も見たことはありません」


 

 確かに昨日多少興味が湧いたと言っていたが、今日の試合に何かあるのだろうか?



 「どうかなさいましたか、ラック様」


 「いや、何でもない。とにかく俺はジョワロフ公の所に顔を出してくる。ドワ娘、次の試合頼んだぞ」


 「誰に言っておる。おぬしは安心してわらわの可憐な戦いぶりを眺めているがよい」



 お前のその言葉が一番安心できないんだけどな。



 「セレナ、ラフィテア、ヴェル、皆も頼んだぞ」


 「お任せください」



 最終戦もこのメンバーならバラマール領相手でも決して後れを取ることは無いだろう。



 フレデリカの名前が大きくコールされドワ娘が仕方なしに戦いの舞台に立つと、闘技場内に大きな歓声が沸き起こる。


 



 魔法はその威力や効果もさることながら興行として見ている者を興奮させる”演出としての派手さ”というものがあるのは間違いない。



 彼女の手から放たれた巨大な水球が宙に浮かび上がるとそれ自体が高速で回転し、レーザーの様な鋭い水線が対戦相手に向かって次々と撃ち込まれていく。



 高密度に圧縮された水は癒しのイメージとは程遠い凶器と化し、地面にいくつもの穴を開けていく。



 水弾に追尾機能こそないものの、あれだけの広範囲に高速かつ高威力の魔法を放つことが出来るのは流石がバラマール領の代表と言った所だろう。




 だが、優れた魔法の使い手という点ならうちのおてんば娘も同じことだ。



 以前本人も言っていたが、もともと土魔法は攻撃より守備に特化した魔法が多い。



 それ故、こういった戦いは苦手だと口にしていたが、後衛として魔法を扱う者同士、対等な条件であるならば決してドワ娘の魔法が劣るとは俺は決して思っていない。



 ドワ娘の周囲に張り巡らされた土の障壁は鋼鉄の鎧さえ軽々貫通する水弾をいとも簡単に弾き返し、空中に散った無数の水飛沫は太陽光を受けると小さなミラーボールのようにキラキラと輝きながら徐々に消えていく。



 会場がどよめく中、隣に座っていたジョワロフ公も些か驚いた様子で戦いの行方を見守っている。


 

 フレデリカと出会ってから今まで、彼女の魔法に俺たちはどれだけ命を救われただろうか。



 確かに攻撃魔法は不得意かもしれないが、要は使い方なのだ。



 本人は否定するかもしれないが、彼女の持つ潜在能力は間違いなく超一級品だと俺は確信している。



 ドワ娘は際限なく撃ち込まれる水魔法を人知れず土の中に取り込むと、対戦相手の足元に地獄へと続く底なし沼を出現させていた。








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