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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー18





 

 リヒテンシュタイン領とグロスター領の一戦は前評判通りネージュ・ロア率いるグロスター領の圧勝で幕を閉じた。



 彼等の実力の一端を知ることができ、収穫は大いにあったが興奮冷めやらぬ観客たちとは対照的に俺の気持ちは深く沈んでいた。



 何故かって?



 そりゃ、俺たちがアレに勝つための方法を考えなければならないからだ。



 試合前、次戦でグロスター領とあたるヴァルター公が嘆いていたが、その気持ちが今になって痛い程分かる。



 

 「――彼女の一族は元々特別な眼を有していて、その優れた力を代々我が子へと継承しているそうです」


 「あの六眼ってやつの事か?」


 「えぇ、そうです」



 帰宅の途、俺の心労を知ってか知らでか、セレナは車窓から外を眺めながらロアについて話し始めた。



 「六眼の力。あれは彼女が生まれつき持っている能力ではないそうです。彼女が本来持っている能力は一つ。その一つが何なのか私は知りませんが、他の力はすべて受け継いだもの」

 

 「そんな一族が存在するんだな」



 「六眼の継承は誰にでも出来るわけではなく同じ血族、そして類まれなる素養が必要です。彼女は何でも一族で初めて六つの力を同時に持つことが出来た唯一の存在だと聞いています」



 「つまり、好きなだけ能力を継承できるって訳じゃないんだな」



 「えぇ。あれほどの能力。無理に継承しようとすれば、その力に耐え切れず瞳は失われ生きた死人と化すとか。彼女も六つの力を継承した代償に視力を失っています」



 「どうしてそんな危険を冒してまで力を得ようとするんだ?」



 「……彼女の一族では“七つの眼を持つ者、神の眼を宿し永遠の繁栄を得る”と言われているそうです」



 「神の眼? なんだか胡散臭い話だな」


 「そうですね。それがどのような力なのかは知りませんが“神の眼”こそが彼女の一族の悲願だとか」


 「なるほどな。……ところで、セレナは何でそんな事知っているんだ?」


 「彼女の口から聞いたのです」


 「ロア本人から?」


 「えぇ。彼女はこの六眼の犠牲になった兄妹たちの為にも一族のくだらない悲願を自分で終わらせたいと言っていました。この眼は一族を不幸にすると」



 「眼の力に囚われた呪われし一族か」



 望まぬ力を与えられ、ロアの灰色の包帯の下、視力の失われた彼女の眼にはこの世界はどのように見えているのだろうか。



「ロア様の一族にそんな秘密があったのですね」


「メリダ、分かっているとは思いますが、この事はくれぐれも他言無用で願いします」


「はい、セレナお姉さま。わたくし、どこぞの誰と違って常識はわきまえているつもりですの」


「ロアについて色々と分かったが、問題はどうやって勝つかだな」


 

 そう。


 それが一番の問題だ。



 今日の試合からして十中八九、グロスター領は準決勝の舞台に上がってくる。



 つまり、オルメヴィーラ領と彼らがぶつかるのは決して避けて通れない。



 そしてオルメヴィーラの中でネージュ・ロアを相手に出来るのはたぶん俺かセレナだけだろう。



 「――オルメヴィーラ公、それなら問題ありません」


 「問題ない?」


 「えぇ、彼女は私が倒します」



 「その言葉、非常に頼もしいけどセレナとロアが直接あたるとは限らないんだぞ」



 「きっと、いえ、必ず私は彼女と戦うことになるでしょう」



 ――どうしてそう思う?



 思わずそう口にしようとしたが俺は彼女の真剣な目を見て言葉を飲み込んだ。



 きっと、彼女にしかわからない、戦う者の運命の様なものを感じているのだろう。



 それは多分ネージュ・ロアも同じはず。




 「そうか、わかった。あいつの事はセレナに任せた。けど、必ず勝てよ」


 「勿論。剣聖の名にかけて必ずやオルメヴィーラに勝利を。私も同じ相手に二度負けるつもりはありませんから」



 「セレナお姉さま、メリダもお姉さまの勝利を信じていますわ」



 「ありがとう、メリダ」







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