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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー9







 俺とラフィテアが席に着き一同が揃うと見計らったかのようにティグリスが奥の厨房から次々と料理を運んできた。



 「二人共、頼んだよ」


 「「はーい」」



 ティグリスから台車を受け取ったルァナとスォロは前菜と甘い香りのするスープを順番に配膳していく。


 テーブルの中央には今日のメインディッシュであろう肉料理がならび、彩り豊かなオードブルが食卓に色を添えている。


 

 厨房の片付けが後回しになり今日まで料理が作れなかったせいか、ティグリスは何やら気合十分のようで、いつも以上に腕によりをかけたらしい。



 料理も出揃い食欲をそそる香りに空になった胃袋が悲鳴を上げる中、俺は皆の視線に急かされながら慌ててグラスを手に取った。


 

 「――おほん。えー、明日からいよいよ領地対抗戦が始まる。この対抗戦はオルメヴィーラ領の実力を王国、ひいては他領に示す為のものだけではなく、同時にエンティナ領を救う為のものでもある」



 俺の言葉に一人一人が頷き、セレナは強い意志を瞳に宿している。



 「俺たちの目指すべきは優勝のみ。俺は地位や名誉には興味はないが、領民や隣人の為に全力を尽くす。だから、皆もどうか俺に力を貸してほしい」


 「もちろんです」 「仕方ないの」


 「パパ、ヴェル、頑張る」 「当然ですわね」


 「力の限り剣を振るいましょう」



 「ありがとう。――俺は必ず期待に応え最高の結果をもって領地に帰る事を約束する」


 自分の誓いを胸に刻むように言葉にすると、俺はグラスを掲げ皆も同じようにグラスを手に取り掲げてみせた。



 「――オルメヴィーラ領とエンティナ領の未来の為、そしてそこに住まうすべての領民の為に!」


 「「「領民の為に!!」」」



 乾杯の音頭と共に、種族、領地、世界、目的、それぞれが異なる者達が各々の思いを胸に盃を上げて酒を飲み干した。




「――ご主人様、何か必要な物がありましたら、遠慮なくお申し付けください」



壁際に待機していたティグリスは俺の空になったグラスに果実酒を注ぐと、一礼して一歩下がってみせた。



「ティグリス達も一緒に食べたらどうだ?」


 「と、とんでもな、いえ、ございません。使用人がご主人様と席を共にするなどそんな恐れ多い」


 「けど、あの二人は違うみたいだぞ」


 視線を双子のルァナとスォロにやると、二人は料理の周りをウロチョロしては口を半開きにしたまま羨ましそうに眺めていた。


 「ルァナ、スォロ、二人も俺たちと一緒に食べないか?」


 「え? いいの、ご主人様」


 「いいの、ご主人様?」


 「あぁ、折角だしな。みんなで食べた方がきっと美味しいぞ」


 「ご主人様、困ります!」


「ティグリス、一緒に食べようよ。ルァナ、お腹空いたよ。ねぇ、スォロ」


 「うん、とっても空いているよね。ルァナ」


「お前たちは黙ってな!」


「ぶーぶー」「ぶーぶー」


 「二人共、あまりしつこいと後でお仕置きだよ」


「ティグリス、俺はオルメヴィーラ領の領主だけど貴族でもなんでもないんだ。だから食事くらい一緒でもいいだろ?」


 「で、ですがメイドとしてやはり……」


 「ティグリス、諦めて席に着いたらどうじゃ。こいつは変わり者。変な所で頑固じゃし、おぬしがいくら拒んだところで結末は変わらんと思うぞ」


 「変わり者なんてドワ娘、お前だけには言われたくないけど、まぁ、そういう事だ。もしどうしても気になるなら、俺の命令に無理やり従ったことにすればいい」


 「め、命令ですか?」


 「そうだ。ティグリス、それからスォロにルァナ。俺たちとこれから毎日出来る限り一緒に食事を取ること。これはお前たちの主人である俺からの命令だ。特別な事情がない限り破る事は許さない。わかったな」


 「はぁ、わかりました。これがご主人様の命令とあらば従わないわけにはいきませんね。――二人ともそういう訳だから三人分の席を用意しな」


 「「はーい」」


 ティグリスはすこし困惑した表情を見せながらも深々頭を下げると末席に用意された椅子に腰かけみんなと食事を楽しんでいる様であった。



 「ちょっと強引だったか?」


 「そうですね。主人と使用人が一緒に食事など本来あり得ませんから。ティグリスが戸惑うのも当然かもしれません」


 「悪いことをしたな」


「とは言え、主人の希望に沿うのも使用人の務め。ラック様が望むなら問題はないかと思います。ですが――」


 「ですが?」


 「もしラック様がより身分の高い立場に身を置くことになれば、今回のようなことは我慢する必要が出てくるかもしれません」


 「そんなことにはならないと思うけど、まぁ、頭の隅に入れておくとするよ」



 俺が貴族?


 冗談でも勘弁願いたいね。





 




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