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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第十章

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領地対抗戦ー8






 オルメヴィーラ領を遠く離れ、明日から領地対抗戦が行われようというのに定期的に送られてくる報告書に追われ、俺はラフィテアと共に執務室に籠っていた。


 

 クロマ商会を通じて送られてくる報告書は週に一回。



 内容は交易の収益状況、鉱山の採掘に関して、来季の農産物収穫予定やらサビーナ村での営業許可申請、新たな領民の受け入れ認可、はたまたノジカの愚痴と言ったものまで……。


 もちろん今上げたのはほんの一例であり、領民からの意見書だったり、改善案だったり、兎に角問題が起こった際には直ぐに俺の判断が仰がれる。


 正直これだけでも手一杯なのだが、それに加えてエンティナ領の報告書にも目を通さないければならない。


 マグレディーの復興に関する資材人材不足の改善依頼やドウウィンの食糧不足に伴う治安悪化などなど――。



 とてもじゃないがこれを二人で処理するのがそもそも無理な話なのだ。



 勿論、サビーナ村ではシーナやセド、それから村長のえーっと誰だったか、……そうそう、マグララ、彼らも頑張ってくれてはいるが、最終決定は当然領主である俺の仕事だ。


 

 一週間かけようやく書類を片付けると、次の日の朝には机の上に書類が積み重なっている。



 クロマ商会のおかげで常にオルメヴィーラ領との連絡や物資のやり取りが出来るようになったのは良い事だが、週を追うごとに増え続ける仕事にもう頭がパンクしそうだ。



 これはもう何としてでも対抗戦で優勝して、オズワルド・モンスレーの協力を得なければならない。



 でないとこの異世界でも仕事に追われ過労死してしまいそうだ。




 という訳で、王への謁見が終わると俺は楽しげに雑談する領主たちに軽く挨拶を済ませ、外で待機していた魔導帆船に飛び乗り急ぎ屋敷に戻ったのであった。




 「――失礼します、ご主人様!」


 「ご主人様!」



 屋敷に戻ってから一歩も外に出ることなくラフィテアが整理してくれた書類に目を通し始め、もうどのくらいの時間が経過したのだろうか。



 ようやく仕事にも目途がつきラフィテアが入れてくれたハーブティーを飲んで一休みしていると、丁度そこにスォロとルァナが執務室の扉を叩き中へと入ってきた。



 「どうしたんだ、二人共?」


 「えーっと、ティグリスがご主人様たちを呼んでこいって。そうだよね、スォロ?」


 「うん。そうだね、ルァナ」


 「ティグリスが?」


 「もうすぐ夕ご飯の準備が出来るからご主人様を連れてこいって」


 「連れてこいって」



 今までティグリスのお手伝いをしていたのだろうか、フリルのついた可愛らしい白のエプロンを身に着けた双子の姉弟は両サイドからトコトコ駆け寄ると俺の手を左右から引っ張ってみせた。



 「そうか、もうそんな時間か」



 どうりで腹が減っている訳だ。


 窓の外に目をやれば、毎夜見える星の明かりが夜空を彩っている。



 「ご主人様。ティグリスの料理はとっても美味しいんだよ。ねぇ、ルァナ」


 「うん、とっても、とっても美味しいの。ねぇ、スォロ」


 「そうか、そいつは楽しみだ。ラフィテア、コレの続きは夕飯の後にしよう」



 目の前にあった最後の一枚にサインをし、ラフィテアに手渡すと流石に彼女も疲れていたのか、迷うことなく頷いた。



 「そうですね。折角二人が呼びに来てくれたのに料理が冷めてしまうのはもったいないですからね」


 

 双子に手を引かれ階段を降りて行くと既に大部屋には全員が着席しており、どうやら俺たち二人を待っている様だった。



 「――遅い!」


 

 俺たち二人に浴びせられた第一声は当然のごとく、両手にナイフとフォークを握った某国の王女のものであった。



 「呼ばれてすぐ降りてきたんだ。そんなに待たせてないだろ?」


 「何を言っておる。わらわはもう一時間もここで待っておったのじゃぞ」


 「はぁ? 一時間も?」


 「フレデリカ様、ずっと待っていたね、スォロ」


 「そうだね。ルァナ。きっとティグリスの料理が楽しみだったんだね」


 「うん。きっとそうだね。ティグリスの料理は絶品だもの」


 「ドワ娘、お前、そんなに暇だったなら俺たちの手伝いをしてくれても良かったんだぞ」


 「そうじゃな。今度、気が向いたらの」

 


 やれやれ、一体いつ気が向くのやら。



 いや、まぁ、しかし、ドワ娘がいたらいたで逆に仕事が進まなそうではあるから、ここで大人しくしてくれていた方が効率良いかもしれないな。



 少し失礼な事を考えつつもラフィテアに目をやると彼女も同じことを思っていたのか、ドワ娘を見て諦めたように首を横に振っていた。









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