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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第九章

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モレアルの聖女と不穏な影ー25








 「――あぁぁぁっ、染みわたるの! 一仕事終えた後の酒はまた格別じゃ。ヴェル、おぬしもいっぱい食べるのじゃぞ」


 

 ドワ娘はグラスに注がれた酒を一気に飲み干すと、すぐさま店員を捕まえメニュー片手に一人であれこれ注文をしている。


 

 「ご主人様、メリダ様、ごめんなさい」


 「なに、クロのせいじゃないさ。俺たちが手間取ったのが悪いんだ」


 

 何とかメリクリオを撃退した俺たちだったが、結局パルコマンを取り逃してしまった。

 


 奴の影に潜み追跡を試みたクロだったが俺との距離が離れすぎてしまった為、敢え無く断念したのだ。




 とは言え、パルコマンがモレアルを離れたのをその目で確認したらしく、例の薬の被害がこの街でこれ以上出る心配は一先ずなくなったと言えよう。



 「――人間を魔族に変える薬ですか」


 

 “レッドアイ”の二階席で一連の話を聞いたラフィテアは飲み食いし楽し気なドワ娘とは対照的に唇に手を当て、眉をひそめていた。


 

 人を魔族に変えるなど眉唾もいい所だが、実際にその光景を彼女たちは目の当たりにしていた。



 この店にいた“ディアヴォロ”の服用者は俺たちが売人を追って店を飛び出した後、結局他の者達と同じ様な末路を辿ってしまった。



幸いな事にセレナたちのおかげで店や他の客にも一切被害は出なかったが、異形となった骸の存在が奴の言葉が嘘や出まかせではないという事実を俺たちに突き付けた。



 「そんなものを作って魔族は一体何をするつもりなのでしょうか」



 「さぁな。ただ単に魔族側の戦力増強の為か、それとも自分たちの手を汚さずに人間を駆逐しようとしたのか――」



「――もしくは、それ以外に何か他の目的があるのかもしれません」

 


 他の目的、か。


 その目的がなんにせよ、それが俺たち人間にとって良い事だとは到底思えない。



「そうだな。……まぁ、どういう意図があったのか、ここであれこれ考えても答えは出ないが、奴がまだ生きている以上気に留めておく必要はあるだろうな」


 「えぇ、そうですね」


 「まったく相変わらず心配性じゃな。こんな美味そうな料理を前に何をそんな辛気臭い顔をしておる。奴の企みはこのわらわの大活躍で失敗に終わったのじゃ。この街にもう魔族はおらん。それにそんな物騒な薬、そう易々と作れるはずないじゃろ」



 「そうだといいけどな」


 

 しかし、メフィストといい、パルコマンといい、単騎ではあったが王国領土内に魔族の侵入を許してしまっている事実は懸念すべきだろう。



 そもそも一匹の侵入も許さずこの広い国土をすべて守るなど不可能だ。


 多分、こういう事態は予め想定されているのだろう。


 ユークリッドを守護する為にセレナが隊長を務める聖リヴォニア騎士団があるくらいだからな。




 「――メリダ。あなたはこれからどうするつもりなのですか?」



 「モレアルの警備長と教会の方にこれまでの経緯を一通り報告致しますわ、ラフィテアお姉さま」



 「パルコマンを逃がしたとはいえ一連の事件は一先ず解決したからな」



奴がこの街を去り薬が出回らなくなれば、もう惨劇は繰り返されないはずだ。



 「それから教会の許可が下り次第、約束通りわたくしもオルメヴィーラ領の一員として領地対抗戦に同行いたしますわ」



 「その魔族を追わなくても良いのですか?」



 少女は首から下げたロザリオを手に取りしばらく目を閉じたあと、全員の顔を見やり微笑んだ。



 「はい、セレナお姉さま。この街に平穏が訪れたのなら今はそれで……。弟の事はあくまでわたくし個人の私怨。どこにいるとも分からない魔族を追うよりも、今はお姉さまたちのお役に立ちたいですわ」



 「そう、ですか。……ありがとう、メリダ」


 「メリダ、くれぐれも無理だけはしないように。何かあったら私たちに相談してもいいのですから」


 「はい、ラフィテアお姉さま。ありがとうございます」



 「――なんじゃ。結局おぬしも一緒に来ることになったのか?」


 「なにか文句でもありまして?」


 「別に文句はないがの。また五月蠅いのが一人増えたと思っての」


 「それはこちらの台詞ですわ」



 笑顔でそう返すとメリダはドワ娘の前に置かれた揚げたての大蛙の唐揚げに手を伸ばし大きな口を開けて勢いよく頬張ってみせた。



 「あぁぁぁぁっ! わ、わらわが大事にとってあった、か、唐揚げを!」



 「ふんっ! そんなの知りませんわ! それに以前も言いましたわよね。食事は早い者勝ちだと」


 「こ、この、おぬし! よくも、よくも、わらわの唐揚げを! しかも一度ならず、二度までもっ! インチキシスター! 表出るのじゃ! この唐揚げの恨み晴らさでおくべきか!」


 

 

 はぁ、やれやれ。


 ますます、賑やかなパーティーになりそうだな。


 いや、賑やかすぎるか。



 まぁ、それはさておき、妙な事件に首を突っ込むことになったが、無事メリダを仲間に加えようやくこれでオスタリカへと出発できる。



領地対抗戦、か……。


オルメヴィーラ領主として、そしてエンティナ領の為にも、今まで以上に気を引き締める必要がありそうだな。



 「唐揚げの恨みじゃぁぁぁ!」



 ……やれやれ。









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