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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第九章

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モレアルの聖女と不穏な影ー23




 「――まったく、何がどうなっておるのじゃ」




 ドワ娘の土魔法によって四方から身体を貫かれたメリクリオだったが、身体を液状に変化させると事もなげな様子でいとも簡単にすり抜けてしまった。




 ちっ。


 面倒な相手だ。



 いくら物理的な攻撃を加えても奴はダメージを受けることなくすぐに元通りに戻ってしまう。



 例え首を刎ねようが、腕を切り落とそうが、魔法で身体をズタズタにしようが……。



 更に厄介なのは奴の身体の細胞一つ一つがまるで意思を持っているかのように俺たちに襲い掛かってくることだ。



 散り散りになったメリクリオの身体はこちらが攻撃すればするほどより小さな凶器とへと変わり、全方位あらゆる角度から襲い来る。

 

 

 勿論、小さくなればなるほど殺傷能力自体はは落ちるが、そのすべてを回避するのは容易ではない。



 俺は標的目掛け飛び交う弾丸の雨から溜まらず脱出すると、ドワ娘の展開していた土障壁に身を隠した。



 何百と言う数の金属片が高速で回転しながら土障壁にめり込み動きを止めると、その一つ一つがスライム状へと姿を変え再び一つの個体へと戻っていく。




 「あんな相手どうやって倒せと言うのじゃ。わらわの魔法も形無しではないか」

 


 ドワ娘の言う通り、メリダの体術でも俺の斬撃でもダメージを与えることは出来ない。


 毒や麻痺も試してみたが、やはりと言うべきか、あの金属体には効果はない。


 頼みの綱だったドワ娘の土魔法もさっき見た通り。



 正直言って俺たちとの相性は最悪だ。


 


 「メリダ、何か打つ手はないのか」



 俺の隣で反撃の機を窺っていたメリダは土障壁の向こう側にいるメリダを見やると忌々しそうに眉根を寄せていた。



 「――あるには、ありますわ」


 「はっきりしない物いいじゃな。何か手があるなら早い所、アレを何とかしてほしいものじゃ」


 「メリダ、どうやったらあいつを倒せる」


 「コアの破壊ですわ」


 「コア?」


 「えぇ。魔物には必ずコアというものが存在しますわ。それは人間で言う心臓の様なもの。コアから供給される魔素によって魔物は生命を維持していますの。たとえどんな魔物であったとしてもコアのない魔物は存在しませんわ」



 「つまりそのコアとやらを潰せば、奴を倒せるんだな?」


 「えぇ、そういう事ですわ。今のわたくしたちではあの手の魔物を倒すにはそれ以外の方法はありませんの」



 「なら、とっととそのコアとやらを破壊してしまえば良いではないか」



 「メリダ、奴のコアはどこにあるんだ?」


 「――分かりませんわ」


 「分からない?」


 「なんじゃ、頼りにならない奴じゃの」 



 「先程から魔素の強い場所を探っているのですけど、たぶん、やつのコアは身体中を常に動き回っているのですわ」



 動き回ってる?



 「つまり、あの無数に分裂した金属体のどこかにコアがあるってことか」



 「そういう事ですわ。定点にあるならまだしも動き回るコアを魔素の流れを追って見つけ出すなんて、そんな芸当をやってのけられるのはこの世界でロア様くらいなものですわ」



 剣聖のロア。


 四剣聖の一人、六眼のネージュ・ロアか。



 「こちらの攻撃はまともに効かずコアも見つけられないとなると、もはやこれまでじゃな」



 「メリダ、どうにかしてコアの場所を特定できないのか?」



 「そうですわね。……数秒間。あの金属体を一ヵ所に集めその場に止めることさえ出来ればあるいは」



 「アレを一ヵ所にね。仮にそれが出来たとして数秒間とは言え、おぬしがコアの場所を探っている間、奴が大人しく待っているとは思えんがの」

 


 確かに。


 無数に分裂し攻撃を繰り返す相手をどうにかして封じ込め、近くまで接近しコアの場所を特定し破壊する。


 こちらの攻撃が効かないうえ、攻撃する度に相手の数は増える非常に厄介な敵。




  ――果たしてそんな事が可能なのか?




 「いっそのこと、もう諦めて逃げ帰ると言うのはどうじゃ?」


 「ドワ娘、お前な」


 「奴の目的は時間稼ぎなんじゃろ? しばらく耐え凌げば向こうから撤退するかもしれんぞ」


 「……アレが簡単に見逃してくれるとは思えないけどな。――ほら、な」



 こうして身を潜め作戦を練っている間も先程から弾丸と化した金属片が俺たち狙って次々と撃ち込まれてくる。


 

 この銃弾の中を逃げようものならきっと奴に背後からハチの巣にされてしまうだろう。

 


 「なら、他に何か良い案でもあるのかの?」

 

 

 ドワ娘の問いに言葉を詰まらせ、しばし無言でいると何を思ったのかメリダは突然壁に手をかけ金属片飛び交うの嵐の中に踏み込もうとしていた。



 「メリダ、何してるんだ!」



 「――これ以上ここに足止めされてしまえばパルコマンを取り逃がしてしまいますわ」



 「そうかも知れないけど」



 「一か八か死中に飛び込んで活路を見出しますわ。運が良ければコアを破壊できるかもしれませんもの」



 運が良ければ?

 


 何の策もなくただ飛び出すのは向こう見ず以外の何物でもない。



 勇気と無謀をはき違えた愚かな選択。


 

 自らの身をただ危険にさらすだけ。


 




 ――なんてこと、俺に言われなくてもメリダ自身が一番分かっているだろう。



 それでもなお彼女は命を賭けパルコマンを追おうとしている。



 メリダの決意を俺に止めることは出来ない。


 だが彼女を見す見す死なせるわけにもいかない。


 

 どうしたらいい。



 なにか良い手があるはずだ。



 考えろ、俺。



 奴の動きを封じる術はないか。



 頭をフル回転させている間も金属片は休む事無く土障壁に鈍い音を立てめり込んでいく。



 俺たちがこうして無事でいられるのもドワ娘のこの魔法のおかげだ。



 分厚く頑丈な壁が奴の攻撃を受け止め防いでくれている。



 この土障壁がなければ今頃――。



 いや、待てよ。



 そうか。



 これなら、いけるかもしれない。










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