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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第九章

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モレアルの聖女と不穏な影ー22





 「さて、この薬が今のままでは使い物にならないと分かった以上、私がモレアルに留まる必要はなくなりましたが、……どうやらすんなりとは通して頂けそうにありませんね」



 うやうやしく頭を下げこの場を立ち去ろうとするパルコマンだったが、3人に行く手を遮られると笑顔のまま困惑した素振りを見せた。



 「この先、人に、いや俺たちに仇なす可能性がある魔族をこのまま逃がすわけないだろ。なぁ、メリダ」


 「当然ですわ」


「……そうですか。私としては事を穏便に済ませたかったのですが、どうやら致し方ありませんね」



 空高く昇った月はいつの間にか頂へと辿り着き、反射光が人気のないこの場所を明るく照らしている。


 深閑と静まり返った空に、男は右手をスッと伸ばすと、パチン、と指を弾いてみせた。



 「私はあまり手加減というものが得意ではありません。もし直接手を下せば誤ってあなたを殺してしまうかもしれない」



 パルコマンが手を降ろすと地面に散乱していた大量の金属片がまるでスライムのように形状変化させうねうねとくねりながら一ヵ所に集まり、巨大な液体金属の塊から人型へとその姿を変えた。



 「……これはまた何とも気色の悪い相手じゃの」



 「これは私の命令を忠実に遂行する可愛い可愛い私の子供。良いですか、メリクリオ。私がこの地を離れるまで三人のお相手をして差し上げなさい。正し、あの男を殺すのだけは禁止です。分かりましたか?」

 


 メリクリオと呼ばれた金属体はパルコマンの言葉を解したのか、身体をだらんとさせたままゆっくりと頷いた。



 「良い子ですね、メリクリオ。くれぐれもあの男を殺さない様に」



金属体のメリクリオに何度も念を押すパルコマンにメリダは深く息を吸い込み呼吸を整えると両の拳を構え猛スピードで突貫した。



 「絶対にあなたを逃がしませんわ」



瞬く間に間合いに入ったメリダはそのまま勢いを緩めることなく力強い一歩で踏み込むと、先程見せたあの技を今度はパルコマンの顔面目掛け放った。



 一瞬、俺の目には笑顔の仮面の口元が更ににやけた様に見えた。



 メリダが動き出したのと同時にメリクリオは見た目からは想像も出来ない程素早くパルコマンの全身を包み込む球体へと自身を変化させると、金属の壁となって少女の前に立ち塞がっていた。


 

 「この子がいる限りあなたの攻撃が私に届くことはありませんよ」

 



 「……わたくしも甘く見られたものですわね」



鈍く低い鐘の音の様な音が辺りに響き、メリダの一撃はメリクリオの防御壁によって完全に防がれたかと思われたが、拳から渦を描くように衝撃の波が球体に伝わると、小さく入ったヒビはあっという間に金属壁全体へと広がりメリクリオは音を立て崩れ落ちてしまった。




 「――次はあなたの番ですわ」




 メリクリオが粉砕されてなお後ろで手を組み平然とするパルコマンに、三度拳を構え、薄気味悪い仮面を今まさに捉えようとしたその刹那、衝撃波によって砕かれ地面に散らばったはずの金属片が今度は鋭い刃に姿を変えメリダに襲い掛かったのである。



 彼女も決して油断をしていたわけではなかった。



だが、次の攻撃の動作に入っていたメリダは完全に虚を突かれメリクリオの不意打ちを躱すことが出来なかった。



 「――だから言ったではないですか。あなたの攻撃は私には届かない、と」


 

 

あと数コンマ遅ければ、無数の刃がメリダの全身を貫いていた事だろう。



 「クロッ!」



 メリダの影に潜んでいたクロは俺の声に反応するよりも早く彼女の危険を察知すると、自身の影でメリダを覆いそのすべての攻撃を寸でのところで防いでいた。

 


 「ほぉ! 実体のないはずの影がメリクリオの攻撃を防ぐとは。実に興味深い」

 

 「メリダ様、怪我はないですか?」


 「え、えぇ」


 「一体何がどうなっているのか。是非とも連れ帰って調べたい所ですが、それはまた次の機会に致しましょう。メリクリオあとは頼みましたよ」



 散り散りになっていたはずのメリクリオは再び一ヵ所に集まるとまるで何事も無かったように元の姿へと戻っていた。



「それでは皆さん、ご健闘をお祈りしています」



 パルコマンは再度一礼し、地面に飛び降り転がっていた死体を脇に抱えるとそのまま闇の向こうへと消え去ってしまった。



 「待ちなさい!」


 メリダは慌てて手を伸ばしパルコマンの後を追おうとしたが、メリクリオを前にそれ以上先に進むことが出来なかった。



 「クロ、パルコマンの後を追ってくれ」


 「うん、わかった。出来る限りやってみるよ」


 「頼みましたわ」


 「メリダ様も気を付けてくださいね」


 クロはメリダの影から離れ猫の姿に戻ると、メリクリオの横を素通りし屋根伝いを一人駆けて行った。



 「メリダ、どうやらこいつを何とかしないと奴の後を追うのは難しいらしい。今はクロに任せて目の前の相手に集中しよう」


 「分かってますわ。……早い所片を付けて後を追いますわよ」







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