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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第八章

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ダンタリオン地下迷宮ー21







 「――もう俺達の攻撃じゃ奴に傷一つつける事さえできない。……それだけじゃない。毒に対する耐性も備わっていた。多分ヴェルの斬撃も効かないだろう」



 俺はつい先ほどウロヴォロスの身に起こったことを事細かに説明した。


 奴が自分の躰を喰い自己再生したこと。


 そしてその結果、耐性を得てこちらの攻撃が通じなくなったこと。



 俺の言ったことが何を意味するのか、その場にいる全員がすぐさま理解した。



 「そ、それじゃ、もう奴を倒せねぇってことなのか!?」


 「あぁ、同じ攻撃手段じゃまず無理だろう。たぶん魔法も一緒さ」


 「ど、どどどど、どうするんだよ! 旦那!」

 

 「落ち着きなさい、ラトゥ」


 「そ、そうは言ってもよ、セレナ嬢! おいら、やつの餌食なるなんて真っ平ごめんだぜ!」


 「――それでこれからどうするつもりなのじゃ?」


 「……そうだな。尻尾を巻いて逃げる! って言いたいところだけど奴から無事逃げ切れる可能性は正直かなり低い」


 「つまり、万事休すという事じゃな」


「あぁ。だから、一か八か最後の手段に打って出る」


 「相変わらず、おぬしは分の悪い賭けに好かれておるの」


 「ですが、ラック様。どうやってウロヴォロスを倒すつもりなのですか? 私たちの攻撃はもう奴に……」


 「ヴェルの大剣、俺の毒、ラフィテアの魔法ももう通じないだろうな」


 「では、どうやって」


「別の手を使えばいい」


 「別の手?」


 「ウロヴォロスは自身を喰う事で受けたダメージに対して耐性を得た。なら、まだ耐性が備わっていない攻撃手段で奴を倒せばいい」


 「確かにそれしか方法はないかもしれませんが、一体どうするつもりなのですか」


 「――こいつを使う」


 俺はラフィテアの問いに答えるように袋から小さな魔鉱石を一つ取り出すと彼女に手渡した。


 

 「この魔鉱石でウロヴォロスを?」


 「あぁ、そうだ」


 「だ、旦那、冗談が過ぎるぜ。いくら希少な魔鉱石っつっても、こんなんで奴を倒せたら何の苦労もいらねぇぜ」


 「そうかもな。けど、俺達の命を繋ぐのは多分こいつしかない。ラフィテア、その魔鉱石に炎魔法の魔方陣を刻印してくれないか」


 「はい。それは構いませんが……」


 「それから、ラトゥ。お前まだ火薬、持ってるか?」


 「へ? 火薬? あぁ、まだ少しくらいならあるけどよ。こんなものどうするんだ?こんなちょっとじゃ何の足しにもならねぇぜ」


 「いいんだ。ラトゥ、その火薬全て買い取らせてくれ」


 「いいよ、いいよ、こんなの。旦那に全部やる」


 「そうか。じゃ、有難く頂戴するぞ」



 ラトゥから渡されたのは掌にすっぽりと収まる小さな小袋。


 その中には大小さまざまな黒色火薬が収まっている。



これだけあれば十分だ。



 ――あとは



 「ラフィテアとドワ娘、二人はヴェルとラトゥを連れて通路まで退避してくれ」


 「通路までですか?」


 「あぁ、そうだ」


 「ヴェル、パパと一緒に戦いたい」


 「ダメだ。今の俺達じゃどうあがいても奴に勝てない」


 「でも……」


 「大丈夫、心配するな。俺もそれからここにいる全員、誰一人として欠けたりしない」


 「本当?」


 「あぁ、約束だ」


 「うん、わかった」


 「おぬしよ、通路まで退くのは良いが、奴がそう簡単に見逃してくれるかの?」


 「まぁ、無理だろうな。だから俺とセレナ、二人で時間を稼ぐ」






 ――ウロヴォロスの巨体は以前より更にひと回りも大きくなり、二人の視界を塞ぐように立ちふさがっていた。


 4人が無事通路に到着するまで要する時間はあと数分。


 それまで何としてでも奴を食い止めなければこの作戦に成功はない。



 「オルメヴィーラ公、こうして肩を並べて戦うのは何度目でしょうか」



 攻撃の通じない相手。


自分の力では絶対に倒せない強敵を前に、絶望的な状況下で、なぜか彼女は楽しそうに笑っていた。



 今思えば俺も剣聖とこうして一緒に戦う事になろうとは思いもよらなかった。


 戦場において彼女ほど安心して背中を預けられる仲間はそういない。



 「これから先もセレナが敵にならないことを祈っているよ」


 「えぇ、わたしもそう願います」



 二人短く言葉を交わすと“全員が生き残る”その一つの目的のために剣を握りしめ駆けだしていた。




  

 「――ドワ娘、お前たちが通路に到着したら、まずお前の魔法でウロヴォロスの動きを封じてくれ」


 「封じろと簡単に言うが、奴に先程の魔法は効かないんじゃろ?」


 「あぁ、直接ダメージを与えることは出来ないだろうな」


 「それはなにか? 奴が身動きさえ出来なければよいのか?」


 「そうだ。俺達二人が逃げる時間が稼げればそれでいい」


 「なるほどそういう事か。それなら任せておけ。……じゃが、先程のように余り長い時間は期待せん方が良いぞ」


 「わかった」




 ウロヴォロスから放たれた無数の鱗は銃弾のように辺りに降り注ぐ。


 空中を舞うセレナは華麗な動きで飛んできた鱗を躱し、それを足場にウロヴォロスに接近していく。

 

 そのあまりの速さに彼女の動いた後には残像が残り、まるで分身しているかのように錯覚してしまう。


気が付けば彼女の姿はウロヴォロスの鼻先に立ち、鋭い剣先はやつの眼を捉えていた。


 「――ちっ」


 小さな舌打ちに遅れてすぐ金属の弾かれる音が耳に響く。

 

 これ以上ない完璧なタイミング放たれた一閃は奴を傷つけることなく弾かれた。


 幾度となくあらゆる箇所に攻撃を仕掛けていくが、そのすべてが徒労に終わり俺たちはただただ体力と精神力を削られていく。


 

 やはり、下手な攻撃はかえって逆効果になる。


 だからこそ、次の一手で仕留めなければならない。



 ――手の内もなくなり呼吸は乱れ、疲れが見え始めたちょうどその時、ようやく救いの天使が二人の前に舞い降りた。



 「オルメヴィーラ公」


 「あぁ、わかってる」



 思わずしゃがんでしまうほどの強い揺れに襲われると、天井、壁、そして白い大地から複数の巨大な鋭石柱がウロヴォロスを閉じ込めるように次々と突き出してきたのである。





 「ラフィテア、ドワ娘の魔法だけじゃ俺とセレナが辿り着く前にウロヴォロスに追いつかれる可能性がある」


 「はい」


 「だから、ラフィテアも風魔法で援護にまわってほしいんだ」


 「わかりました。……ですが、ラック様、私の風魔法ではフレデリカの魔法のような足止めの効果は然程期待出来ないかもしれません」



 「わかってる、けど、それでいいんだ」


 「それでいい?」


 「少しでも時間が稼げればそれでいいって事さ」


 「――そう、ですか」


  

 



――ドワ娘の魔法を打ち破り猛然と追いかけてくるウロヴォロスに対し、今度はラフィテアの風魔法が襲い掛かる。



暴風嵐―エアリアルブラスト―



強制的に気圧の変化を作り猛烈な突風を生み出し、地上にあるあらゆるものを巻き上げ暴風となって標的を襲う。


 エンティナ兵との戦いでもわかる通りその効果は広範囲に及び、たとえ相手が魔物であったとしても致命傷を与える事が出来る高等魔法である。


しかしラフィテアの言う通り、このウロヴォロスに対してはダメージどころか足止めの効果すら殆どなくなく、ただウェアウルフの骨が儚く辺り一面に舞うばかりであった。














この作品を少しでも「面白い」「続きが気になる」と思って頂けたら下にある評価、ブックマークへの登録よろしくお願いします('ω')ノ


また、ブクマ、評価してくださった方へ。

この場を借りて御礼申し上げます(/ω\)


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