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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第八章

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ダンタリオン地下迷宮ー11






 

 ラフィテア曰く、セレナの予感は良く当たるらしい。



 当然いい予感もあれば悪い予感もあるわけで……。





 ――どうやら今回は後者の方だったらしい。





 気が付けば僅かな光もあっという間に小さな点となり、闇の手に捕まれた俺は地の底に落ちて行った。







 ――遡ること数時間前、俺達オルメヴィーラ領一行はダンタリオン地下迷宮の50階層にいた。



 

 「ここが50階層なのか?」


 「そうだぜ、旦那」



 一歩足を踏み入れたその場所はつい数分前までの殺風景な景色とは違い全てが水晶のような氷で覆われてた。


 手に持っていたランタンで周囲を照らすと一面の氷が鏡の様に光を反射し、光を取り込んだ氷塊は七色に輝き幻想的な光景を生み出していた。




 「――我々聖リヴォニア騎士団が到達できたのはこの階層までです」


 「御大層な名前のわりにその聖なんとかも案外大したことないの」


 「あ、あなたセレナ様に対して何て事を! どうしてドワーフ族はこう――」


 「ラフィテア、少し落ち着きなさい」


 「で、ですが、セレナ様」


 「フレデリカ、私たちはただ下の階層に降りる事だけを目的とはしていませんから、どうしても時間が掛かってしまうのです。魔物を討伐しながらそのフロアーごとの特徴や地形を調べ、すべて地図に書き起こさなければならないのです」


 「それは難儀な仕事じゃな」

 

 「でも、そのおかげで俺たちは迷わず最短ルートでここに来れたんだ、感謝しないとな」


 「けど、旦那。こっから先は誰も知らねぇ未知の領域だ。くれぐれも慎重に頼むぜ」

 

 「わかってる」



 先程から周囲に魔物の気配がないか警戒しているが、どうやら今のところ索敵範囲内には何も潜んでいないようだ。



 「転移装置を設置した場所はすぐ近くなのか?」


 「えーっと、確か左の壁伝いに進んだ先だったけな。開けた見通しのいい場所だ、拠点にするにも丁度いいんじゃねぇか? なぁ、セレナ嬢」


 「そうですね。むやみやたらに歩き回るのは得策ではありませんし、あそこならいざとなれば転移装置で地上に脱出することも出来ますから」


 「んじゃ、まずはそこに向かうとしますか」




 この階層、全てが氷で覆われていると言ったがそれは言葉の綾でもなんでもなく、本当に天井や壁、地面に至るまで隙間なく堅氷に閉ざされている。



 足元に凹凸がある為なんとか歩くことは出来るが、アイスリンクの様に平らな場所や急な坂道などは専用の装備が無ければ前に進むのも困難だろう。


 さらに四方を氷で囲まれているせいで芯から身体が冷え、ただそこにいるだけでも体力をどんどん奪われていってしまう。


 手のかじかむ様な寒さの中ひたすら前に進むこと四半刻。


 ようやく転移装置のある場所へと到着したのである。




 「寒い、寒い、寒いのじゃぁぁぁ!」



 開口一番ドワ娘の口から飛び出たのはいつもの不平不満であった。



 「仕方ないだろ? 四方八方氷に囲まれてるんだから。お前もちっとは我慢しろ」


 「我慢にも限度というものがあるじゃろうが! こんな寒さの中で寝たら皆一晩で凍死してしまうぞ」



 まぁ、確かにドワ娘の言う事も最もだ。


 これから暫くここにいる事を考えると何か対策する必要があるか。



 ……けど、どうしたもんか。



 アイテムボックス内にある資材には限りがあるし、暖を取るための燃料も必要だ。



 いま、豊富にあって使えそうなものといえば――



 「ヴェル、ちょっといいか?」


 「どうしたの? パパ」


 「ここからあのあたりにかけて――」



 「……うん、わかった」


 「どうだ、出来そうか」


 「大丈夫。ヴェルに任せて」



 ヴェルは頼られたのが嬉しいのか力強く返事をすると、少し離れた場所で剣を構え早速言われた通り作業を開始した。



 「ラック様。ヴェルに何を頼んだのですか?」


 「ん? あぁ、まぁ、見てればすぐにわかるさ」



 首を捻るラフィテアを横にヴェルはその大きな剣を真っすぐ上に掲げると、地面に向かって真っすぐ振り下ろした。


 指示通りに次々と剣を打ちこんでいくヴェル。


 程なくして綺麗な直線が縦横無数に並び、直径数十センチほどある氷のブロックが次々と量産されていく。



 「旦那、こんな氷の塊作ってどうするんで?」


 「決まってるだろ。作るんだよ、今日の寝床を。さぁ、みんな手伝ってくれ」

 

 

 

 全員が頭にクエスチョンマークを浮かべながら、ただ言われた通り切り出された無数の氷のブロックを平らな地面に下から螺旋を描くようにドーム状に順々に積み上げていく。



 接合部は沸かした湯をかけることで溶けた氷が接着剤代わりとなり強度を増すことが出来る。



 一時間程かけて組みあがったドームは床から天井まで俺の身長より頭1個分ほど高く、室内はそれ程大きくはないが数人が生活するには充分な広さがある。



 外からの風や冷気を遮断できるため、氷でできているとは思えない程、室内は暖かい。


 あとは換気用の小穴を開ければ、調理や暖を取ることも可能だ。




 「おぬし、なかなかやるではないか」



 完成した氷のドームを前に建築には造詣の深いドワーフ族のお姫様も感心した様子で眺めていた。



 「そりゃどうも。けど、まだ終わりじゃないぞ。このままあと残りの二棟も建てるんだからな」


 「げっ、まだそんなにやるのか? もうこれ一つで良いではないか」


 「幾ら何でも5人でこの一棟じゃ狭いだろ。それに良い事思いついたんだ」


 「良い事?」


 「そう。良い事。きっとお前も喜ぶぞ」


 「わらわが喜ぶこと……。なるほど、おぬしもわかってきたではないか。そうか、そうか。他の者に邪魔されぬよう二人だけのスイートホームを建てて暑い夜を過ごそうと、そういう事じゃな」


 「全然違うわ!」


 「なんじゃ違うのか。では、一体何だというのだ?」


 「まったくお前は……。まっ、完成してからのお楽しみだ」


 「随分ともったいぶるの」


 「そんなつもりはないんだけどな」


 この寒い中、やはり身体を温めると言ったらあれしかないだろ。


 「ドワ娘、あともう少し頑張ってくれよな」

 

 「やれやれ。では、そのお楽しみとやらの為に頑張るとするかの」


 「あぁ、頼んだぞ」


 「――フレデリカ、あなたそんな所でサボってないで早く手伝ってください」


 「サボってなどおらぬは! まったくあの耳長は」



 腰を上げたドワ娘はラフィテアにぶつぶつ文句を言いながらも再び作業の輪の中に加わっていった。


 重労働ではあるが構造的には至極単純であった為、3棟を建てるのにそれ程の時間を要すことなく無事完成にこぎ着けたのであった。






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また、ブクマ、評価してくださった方へ。

この場を借りて御礼申し上げます(/ω\)


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