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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第八章

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ダンタリオン地下迷宮ー10





「ヴェル! 無理して前に出るんじゃない! 一旦下がって体勢を整えろ!」



 鈍い音と共に大剣を弾かれ身体を大きく仰け反らせたヴェルだったが、反動を利用しくるっと後方に一回転すると奴との距離を取り体勢を整えた。



 いま相手にしているのは変異種のオーガ。



異様に隆起した筋肉と青い肌に二本の角。


細く長い黒髪の毛を垂らし、両手にはヴェルの大剣にも劣らない巨大な鈍器を持っている。



 流石に40階層を超えてくると、5人がかりでも一筋縄ではいかぬ相手もちらほら出現するようになっていた。




 ダンタリオン地下迷宮に潜ってから、既に一ヶ月。




 20階層で基礎的なトレーニングを積んだ俺たちは一旦30階層に転移し、それから魔物を討伐しながら一階層ごとに降りて行っている。



 そして今いるのがこの42階層という訳だ。



 20階層とは打って変わって景色は灰色一色。刃の様に尖った岩壁が至る所でむき出しになっている。



 このオーガ、タフさは相当なものだが動き自体はかなり鈍く頭の回転も遅い。


 皮膚が分厚く鋼の様に硬いため、俺やセレナの剣ではなかなか歯が立たないが、それでも急所を狙えば十分通用するしヴェルの一撃ならダメージも与えられる。




 「セレナ!」



 ヴェルが引いたのを確認すると掛け声と共に俺とセレナ二人で左右から攻撃を仕掛けていく。



 先程から攻撃の当たらない相手に苛立ったのか、目前に迫った二人を一掃すべくオーガは障害物など一切構う事無くその巨大な鈍器を振り上げると浮き出た腕の血管が目視出来るほど力を込め辺り一帯を薙ぎ払った。



 その威力は凄まじく天井や床、壁に長い年月をかけて出来た堆積物をいとも簡単に粉砕してしまった。


しかし、そんな鈍くさい攻撃に俺たちが当たるわけもなくセレナは軽やかに身を翻すと、風魔法の足場を作りあっという間にオーガの上空へと達していた。



 

 「黒き闇、漆黒の粒子となってすべてを包め、“黒靄―ダークヘイズ―”」



 寸での所で攻撃を躱した俺は唯一の魔法であるダークヘイズを発動する。



 以前よりも黒靄の効果範囲が広がり、丁度俺一人分の全身を隠せるほどの大きさになっていた。


 何度も試し分かったことがあるのだが、この闇魔法ただの煙幕、という訳ではなかった。



 このダークヘイズは霧や煙とは違いあらゆる光を完全に遮断する為、こいつの陰に入ってしまえば俺以外の相手は対象物を視認出来なくなってしまうのだ。



 初期魔法だがなかなか有用である。


 もちろん弱点もあり、風で簡単に消えてなくなってしまうし効果時間もそれ程長いとは言えない。。


 だが、俺の戦闘スタイルとは抜群に相性が良い。



オークとの間に黒靄を展開した俺は一瞬の隙も見逃さずセレナと逆の左方向に回り込む。



 オークに振り払われ黒靄はすぐかき消えてしまったが、奴は完全に俺の姿を見失っていた。



 こうなれば俺たちの勝ちはもう約束されている。


 いくら自慢の筋肉と言えど、ここを突かれて平気な奴はそういない。 



呼吸を合わせたかのように無防備な両目を目掛け左右から同時に二本の刃がオークを襲う。


 鼓膜が破れそうなほどの絶叫。


 突然視界を奪われたオークは怒りと痛みで大声を上げると持っていた鈍器を辺り構わず振り回し暴れ狂い始めた。



 もちろん今の一撃であのタフなオークを倒せるとは思っていない。


 俺とセレナは眼球に突き刺さった剣を引き抜き遠く飛び退くと、後方に待機していた二人に合図を送った。



――精霊術



 ドワ娘の魔法によってオークの足元は体半分が埋まるほど深く崩れ落ち、ラフィテアの魔法は天井を貫く様な巨大な風の竜巻を生み出しオークの身動きを封じたのである。




 「ヴェル、いまだ!」



 漆黒の竜殺しを構えたヴェルは真正面から勢いよく飛び込むと巨大な竜巻ごとオークを真っ二つに切り裂いたのである。




 「――いやぁ、お見事! 痺れるねぇ。 さすがセレナ嬢の連れだけはあるってもんだ。あの変異種のオークを難無く倒しちまうんだからよ。へへっ、こいつの牙と角は高く売れるんだ。いや、今回はついてきて本当に大正解だったてもんだ」 

 

 


 さっきまで岩陰にこそこそ隠れていたというのに、真っ二つになったオークを見るや否やまるで自分が倒したかの様に獲物に一番乗りである。



 「相変わらず欲張りな奴じゃな」


 「ラトゥはラトゥの仕事をちゃんとこなしているからいいんじゃないか? おかげでこうして迷うことなく最短距離で進むことが出来てるし、取れた素材は全部報酬としてくれてやるって約束したからな。それよりも随分と連携が取れてきたんじゃないか?」



 「そうですね。色々と細かいミスもありますが、ようやく形になってきたと思います」



 セレナは剣についた青色の血を振り払うとすっと鞘に剣を収めた。



 基本的にこのパーティーでは俺とセレナ、そしてヴェルが前衛を務めている。


 ドワ娘は完全な後衛でラフィテアは後衛と前衛両方立ち回れる中衛といった所だろうか。


 

 領地対抗戦では例年個人戦の他にチーム戦もあるらしく、個々のレベルアップも必要だがチームワークも同じくらい重要となってくる。



 「……しかし、変ですね」


 「変? なにか気になる事でもあるのか?」


 「いえ、多分私の気のせいだと思うのですが」


 「なんだよ。何かあるなら言ってくれよ」


 「以前調査団を引き連れこの階層まで来た時は道中もっと多くの魔物と遭遇したと記憶しています」


 「魔物の数が少ないって事か?」


 「……えぇ」


 「まぁ、確かにこの階層に来てからまだ数度しか戦闘してないもんな」


 「ラトゥ、どう思います?」


 「ん? あぁ、まぁ、そう言われてみりゃそうかもしれねぇな。けど、奴らが少なけりゃそれに越したことはねぇんじゃねぇか。……って、今回セレナ嬢たちはそれじゃ困るのか」


 「それもそうなのですが、何か嫌な予感がします」



 嫌な予感ね。



 「予感も結構じゃが、ここで考えていても答えは出んのじゃろ?」


 「そう、ですね」


 「なら前に進むほかないじゃろ。わらわとしては一刻も地上に戻りたい所じゃがの」


 「何言ってるんだ。あと一ヶ月はこの地下迷宮から出られないからな」


 「ラック様、セレナ様の感は良く当たります。くれぐれも慎重に」


 「あぁ、わかった。ヴェル、あまり俺から離れるなよ」


 「うん。ヴェル、ずっとパパの傍にいる」


 「狡いぞ、ヴェル! わらわも~、パパの傍にずっといる~」


 「誰がパパだ、誰が」


 「フレデリカ、こんな時にふざけないでください」


 「ふざけてなどおらんぞ、耳長。わらわはいつも本気じゃ」


 「まったくあなたって人は。……ラック様、どうやらお客様が到着のようです」


 「そうみたいだな」


 「こんな所にまで客人とは難儀な事じゃ」


 「冗談を言っている場合じゃねぇぜ、旦那たち。こいつら群れを成すリザードの一種だ」


 「団体さんのお着きとは魔物が少ないのではなかったのか?」


 「そう言うな。セレナの心配が杞憂ならそれに越したことはないんだ」


 「一戦終わったばかりだというのに、やれやれじゃな」













この作品を少しでも「面白い」「続きが気になる」と思って頂けたら下にある評価、ブックマークへの登録よろしくお願いします('ω')ノ


また、ブクマ、評価してくださった方へ。

この場を借りて御礼申し上げます(/ω\)


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