ダンタリオン地下迷宮ー4
一部改稿:精霊魔法→精霊術に名称を変えています。
「――魔法には大きく分けて二種類存在します」
「二種類?」
視界の開けた場所に拠点を設置した俺は俺はアイテムボックスから取り出した切り株状の椅子に腰かけると、ラフィテアから魔法の講義を受けていた。
「そうです。ラック様分かりますか?」
「えーっと支援魔法と攻撃魔法とかか?」
「残念、違います。もっと根本的な違いです」
「根本的な違いか」
支援、空間、遠距離、火属性、回復とかそう言った魔法の区分の事を言っているのではないらしい。
「……ごめん、わからない」
「わかりました。では、もう少し根本、いえ、原理の部分からお話ししましょう」
「あぁ、頼むよ」
「ラック様、魔法を行使する際に必要となる力の源が何かはご存じですよね?」
「魔力だろ?」
「そう正解です。魔力とは魔素の集合体であり、魔力が膨大なほど強大な魔法を行使することが出来ます。その魔力の元となる魔素、これはこの世を作りし神が与えた万物の根源をなしている力と言われ、この地に存在するすべての物が有しています」
「すべての物?」
「そうです。草木、動物、人、大地、風、光、ありとあらゆるものに存在します」
「んじゃ、目の前で燃えている薪にも俺の短剣にも魔素があるってことか」
「はい。魔法を使うときには魔力が必要であり、それは誰しもがもつ力である。ここまではお分かりですか?」
「あぁ」
「先程の問い、魔法には二種類存在する。……その答えは、自らの魔素を使用し魔法を行使するか否かにあります」
「自分以外の魔力で魔法を使うなんてこと出来るのか?」
「出来ます。万物の力を借りて行使する魔法の事を我々は精霊術と呼んでいます」
―ダンタリオン地下迷宮20階層―
迷宮に設置された転移装置を使い降り立ったその場所は、そこが同じ迷宮内とは到底思えない程がらりと様変わりしていた。
至る所からシダ植物やツタが生い茂り、辺りは樹木や木の芽、甘ったるい花の蜜、湿った落ち葉の匂いが混ざり合い充満していた。
ダンジョンと言うよりはジャングルという表現がこの場合は最適だろう。
「ここが20階層なのか?」
「驚いただろ、旦那。あぁ、そうさ。ここは通称“迷いの密林”。ダンタリオンの地下迷宮は一つ階を降りただけで、その姿をがらりと変えちまうのさ」
「それにしても違い過ぎるだろ。なにが一体どうなってるんだ」
「さぁな。そいつはおいらにも分からねぇ」
「本当にここは地下なのでしょうか。こんな太陽もない場所にどうしてこの様な植物が育っているのかしら」
確かにラフィテアの疑問はもっともだ。
「エルフの姉ちゃん、そりゃ簡単な質問だぜ。このフロアーに来て何か気づいたことはねぇか?」
「気づいた事?」
……なんだ。
この鬱蒼とした森以外に一体何があるって言うんだ。
ぐるっと見回すが、やけに湿度が高い以外これと言って変わったところはない気がする。
いや、変わった景色しか広がっていない。
……ん?
いや、そうか。わかったぞ。
「なぁ、ラトゥ。なんでこの階層はこんなに明るいんだ?」
――そう。
先ほどまで俺たちがいた場所は光の届かない地下深く。
そして今いるのはそこよりもさらに遥か深部。
だと言うのに、ここは昼間の様に明るいのだ。
「ほら、足元や天井をよく見てみな。この階層は辺り一面にヒカリ苔っつう植物が大量繁殖してんだ。だからこうして一日中明るいのさ」
「ヒカリ苔ですか。初めて見る植物ですね」
「これを地上でも繁殖できれば、色々と利用価値はありそうだな」
「けど、ダメなんだな」
「駄目?」
「あぁ、何故かこの階層から持ち出そうとすると、こいつらあっという間に全部枯れちまうんだ」
「そりゃ残念だ」
とは言え、色々役に立ちそうだし少しばかり持って帰ってみるか。
アイテムボックスに入れておけば大丈夫だろうし、時間があるときに研究してみるか。
という感じで無事20階層に付いた俺たちは開けた警戒しやすい拠点ポイントを見つけると早速腕慣らしをすべく奥へと足を進めた。
植物の生い茂る階層という事もあって、ここに出現する魔物は植生系もしくは虫系が殆どである。
植生系はその名の通り、植物の性質を持っており花や葉、果実、樹木など植物そのままの姿に擬態した魔物ものから、その姿を野犬のようなものに変えた者までいる。
とは言え、基本的に植生系は一部を除き動きが遅く耐久性も低いため、対処するのは比較的容易である。
唯一、毒などの状態異常は怖いが、俺の調合した解毒薬も十分用意はあるため、そこさえ気を付けていれば経験値稼ぎには持ってこいの相手と言えよう
全員を引き連れて周囲を小一時間程散策し出現する魔物を一通り把握すると、ドワ娘とヴェルの指導をセレナに任せ、俺はラフィテアに魔法について講義を受けていた。
「な、なぜ、わらわがこ、こんな虫共に、お、追い回されねばならんのじゃ!」
ラフィテアの講義に真剣に耳を傾けていると、遠くから地面の揺れと共にドワ娘の叫び声が近づいてきた。
「おっ、頑張ってるじゃないか、フレデリカ王女」
「お、おぬし、わらわにばかりこんなことをさせておいて、そんな所で何をしておるのじゃ!」
「何をって勉強だよ、勉強。それにわらわだけって、一緒にヴェルもやってるだろ? おーい! ヴェル、あまり無理するんじゃないぞ!」
「うん、わかった!」
ヴェルはあの大仰な剣を片手に持ち地面を引きずりながら、こちらに向かって楽しそうに手を振っている。
「なに無駄口をたたいているのですか? ほら、早くしないとこの子達に踏み潰されてしまいますよ」
「お、鬼め! セレナ、おぬしは鬼じゃぁぁぁ!」
そう叫びながらドワ娘たちは目の前をあっという間に走り抜けていく。
そしてそのすぐ後ろには大群の甲殻虫とその背に立つセレナの姿、群れを成した奴らはまるでアイドルを追いかけまわすファンの様に彼女の後を必死になって追いかけまわしていた。
ハッキリ言って俺やラフィテア、セレナにとってこの階層の魔物は相手にもならない。
しかし、俺達のレベルに合わせた階層まで一気に突き進んでしまうと、ドワ娘やヴェルには難易度が高すぎる。
なのでまずはこうして二人のレベルアップを図り、それに合わせて下の階層に進む計画を立てたのである。
御覧の通り二人の面倒はセレナに見てもらっている。
俺が特訓してもいいのだが、自己流よりはやはりプロに指導してもらった方が成長も早いだろう。
それに俺にはやりたいことがあったしな。
こうして多少時間の出来た俺はこの機会に魔法を習得すべくラフィテアからマンツーマンの指導を受けることとなった。
この作品を少しでも「面白い」「続きが気になる」と思って頂けたら下にある評価、ブックマークへの登録よろしくお願いします('ω')ノ
またブクマ、評価してくださった方へ。
この場を借りて御礼申し上げます(/ω\)




