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幸運値に極振りしてしまった俺がくしゃみをしたら魔王を倒していた件  作者: 雪下月華
第八章

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ダンタリオン地下迷宮ー2


 


 地下迷宮の入り口は切り出された石材が周囲を覆うように積まれ、暗がりを払う様に幾つもの松明が奥に向かって左右に並べられている。



 魔物の湧き出る地下迷宮と聞いていたのでもっと暗く静まり返っているかと思いきや、露店やお店が立ち並び結構な賑わいを見せていた。



 「セレナ、本当にここが地下迷宮への入り口なのか?」


 「えぇ、そうですよ」


 「にしてはなんか盛り上がってないか?」


 「あぁ、彼らは腕試しや出稼ぎに来た冒険者たちです」


 「冒険者?」


 「えぇ。地上付近の瘴気の薄い場所でも弱い魔物は生まれますから、彼らに討伐を依頼しているんです」


 「なるほど」


 確かに聖リヴォニア騎士団が管理しているとは言え、全てを彼等だけで処理するにはこのダンジョンは広すぎるのだろう。


 聞くところによれば、魔物の討伐数や難易度に応じて賞金が出るらしく、また魔物から剝ぎ取れる素材はすべて討伐者にその所有権がある為、希少なアイテムを求め連日一獲千金を夢見る多くの輩が集まってくるのだという。


 「じゃ、迷宮内に魔物は殆どいないんじゃないのか?」


 「それは地上付近だけです。立ち入れる階層は冒険者たちのランクによって制限されているますから、下に降りれば降りる程その人数は減っていきます」



 「つまり、心配しなくても俺たちの足元には沢山の魔物たちが手ぐすねを引いて待っているって訳か」


 「そういう事です」


 「……それで、俺達はどの階層からスタートするんだ? まさか地上から降りては行かないんだろ?」


 「それでもいいのですが、ワンフロアを降りるのに戦闘が無くても一時間程度はかかってしまうので――」


 「かなり広いんだな」


 「えぇ、ですから一先ずは20階辺りに転移しようと思います」


 「あまり厄介なのがおらん所がいいの」


 「それじゃ特訓にならないだろうが」


 「パパ、ヴェル頑張る」


 「そうか、ヴェルは偉いな」


 どこぞの誰とは違ってヴェルいつでもひた向きである。


 いつも以上に張り切っているヴェルの頭を優しく撫でてやると、少女は嬉しそうに目を細め微笑んでいた。


 その様子を羨ましそうに見ていたドワ娘は何を思ったのか突然俺の傍らにすり寄ってきて身体を押し付け上目遣いでヴェルのモノマネをし始めた。


 「――パパ、フレデリカも頑張る」


 「な、なんだよ、急に! 大体誰がパパだ!」


 「フレデリカも特訓頑張る!」


 「で?」


「ほら、わらわも偉いじゃろ」


 「だから?」


「じゃから、思う存分頭をなでなでして良いのじゃぞ」



……はぁ?


何がしたいのかと思えば、そんな事かよ。


 「ほら、ほら」


 ずいずいと頭を差し出してくるドワ娘にどうしたものかと困っているとラフィテアがすっと後ろに現れ、ため息を付いたかと思うとそのまま有無を言わさずフレデリカの耳を引っ張り強引に俺から引き剝がそうとした。


 「あ、な、た、は何を馬鹿な事言っているのですか」


 「こ、こら、な、何をするんじゃ、耳長!」


 「わたしが撫でてあげますから、どうぞこちらに」


 「こ、こら離すんじゃ、は、離せっ! み、耳が伸びてしまうではないか」


 「この程度で耳は伸びません」


 「ったた。まったく茶目っ気という物がわからんのか」


 「どうしてラック様を困らせる事ばかりするのですか」


「何を言っておる。こやつは困ってなどおらんぞ、むしろわらわの胸のふくらみを感じて喜んでおったじゃろうが」


 「そんな訳あるか!」


 「本当かのぅ」


 いや、まぁ、まったく嬉しくないかと言えば嘘になるが……。


 って、何を考えているんだ、俺は!



 「――おう、待たせちまったな、って、セレナ嬢。これから地獄の入り口に向かうってのにこいつら随分と暢気なもんじゃねぇか」


 時間通りに現れた鼠族のラトゥは先ほどの恰好とは打って変わって、皮のマスクを被り額にはガラス製のゴーグル、背中には自分の数倍もあろうかという巨大な荷物を背負い、腰には短剣と松明、そしてランタンをぶら下げていた。


 「変に気負っているよりいいでしょ?」


 「ん? ま、まぁなぁ。でも遊びに行くんじゃねぇんだからよ。本当にこいつら大丈夫かよ」


 「どうでしょう」


 「おい、おい、頼むぜ、セレナ嬢」


 「ふふふっ、冗談はこれくらいにしておいて、それぞれ自己紹介くらいはしておいた方がいいわね。オルメヴィーラ公」


 「俺はオルメヴィーラの領主をしているラックだ。よろしく頼む」


 「おいら鼠族のラトゥ、ダンタリオン地下迷宮一番の案内人さ。地下迷宮の事で聞きたいことがあるなら何でもおいらに聞きな。因みに地下50階層まで降りた事がある案内人はおいらただ一人だけだからな」


 「そりゃ頼もしいな。セレナたちの調査団に同行したのがラトゥなのか?」


 「あぁ、そうだぜ」


 「ラトゥには調査の度に同行してもらっています。彼が居なければ未だに50階層には到達していなかったかもしれません」


 「へっ、まっ、そうだろうな。さすが分かってるね、セレナ嬢」


 得意げな顔のラトゥは鼻をピンと立てると人差し指で数度擦り、それから自慢の髭をキュッキュッっと引っ張り上げてみせた。


 「――んじゃ、挨拶も終わったことだし、オルメヴィーラの旦那、そろそろ出発するかい」


 「旦那って俺の事か?」


 「他に旦那なんていねぇだろ」


 まぁ、それもそうか。


 「ラトゥ、まずは転移装置のある場所に向かってください」


 「転移装置? なんだ、あれを使うのか?」


 「そのつもりです」


 「へぇ、今回は随分と気前がいいじゃねぇか。まぁ、でもこの人数ならその方が安全には違いない」 


 ラトゥはゴーグルを嵌めるとランタンに火をともし地下迷宮へと一歩足を踏み入れた。


 「では、私たちも行きましょうか」


 案内人のラトゥを先頭に俺、ヴェル、左右にラフィテアとドワ娘、そしてしんがりをセレナが務め、ゆっくりゆっくりと階段を降りていくとそこには広大な世界が広がっていた。


 「へへっ、オルメヴィーラの旦那。悪魔の住まうダンタリオンの地下迷宮へようこそ」








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