エニグマの忌み子ー18
「――えーっ、また今回もボクの出番ないの!」
「なんだよ、出番って」
領地対抗戦に向けて特訓すべくダンタリオン地下迷宮に出発しようとしていると、ノジカが不貞腐れた顔でぶつぶつと文句を言っていた。
「今回もボクだけ留守番何てずるいと思わない?」
「別に俺たちは遊びに行くんじゃないんだぞ」
「そうかもしれないけどさぁ」
「――なんならノジカ、おぬしもわらわ達と一緒に行くか? これから魔物がわんさかおる迷宮の地下に潜っていくのじゃ。きっと楽しいぞ」
「えっ!? あ、あぁ、そ、そうだねぇ。……あっ、でもでも、ボク、ラックに頼まれた仕事がまだ山の様に溜まってるんだった」
「なんじゃ、行かないのか。つれない奴じゃの」
「ノジカさん、シーナとセドの事もよろしくお願いします」
「えっ、あぁ、うん、任せてよ」
「しばらく戻って来れないけど、ノジカ、頼んだぞ。何かあったらツールナスタ領に連絡入れてくれ。クロマ商会に言えば、魔導帆船の一台や二台飛ばしてくれるはずだ」
「わかったよ。……そうだ、ラック。ツールナスタに行くならルゴールドには気を付けてね」
「ルゴールド? ……誰だ、それ」
「忘れちゃったの? ツールナスタの領主だよ」
ツールナスタ領主、あぁ、確かそんな名前だったっけか。
「なんでそのルゴールドに俺が気を付けなきゃならないんだよ」
「ゴトーの街でのこと覚えてるでしょ」
「もちろんだ。そう言えばノジカ、お前ゴトーで監禁されてたんだよな」
「そうだよ」
「そんな事もあったな。……ってそうか。ルゴールドってのはあのバーデンの父親なのか」
「そういう事。あそこの領主も息子に似てあまりいい噂を聞かないんだ」
バーデンに俺の正体はバレてる。となると、ルゴールドの耳に入っていてもおかしくはない。
こっちは対抗戦で優勝しなきゃならないんだ。
面倒な事にならないといいが……。
「わかった。一応注意はしておく」
「うん、その方が良いと思う。――それは、そうとフレデリカ。その髪どうしちゃったの?」
「なんじゃ藪から棒に。別にただのイメージチェンジじゃ」
「そうなの? それにしても随分思い切ったよね」
「そうかの?」
ドワ娘のトレードマークであった銀色の長いポニーテール。
以前は腰のあたりまであった美しい髪も今は肩のあたりまでしかない。
後ろで束ねられた髪の毛は黒のヘアバンドで結ばれ、子犬の尻尾の様にちょこんと飛び出したそれは、小柄なフレデリカに良く似合っていた。
「――そんなにじろじろ見て、わらわに惚れ直したのか?」
「はいはい、そうだな」
「なんじゃ、冷たいの」
朝から気にはなっていが、女性にとって髪をバッサリ切るのは一大決心らしいから触れようかどうか迷っていたが、どうやら本当にただの気分転換らしい。
「そういう訳だから、ノジカ、後の事は頼んだぞ」
「なにがそういう訳なのさ。はぁ、まぁ、いいか。ボクはここでボクにしか出来ないことをやるよ」
「助かる。……そうだ、学校の件も頼んだぞ」
「わかってる。すごいの建てておくから。今からラックの驚く顔が楽しみだよ」
「そりゃ、期待できそうだ」
「任せておいて。その代わりボクとの約束も忘れないでよね」
「わ、わかってる」
「約束? ラック様、約束とはなんの事でしょうか?」
「え? 約束? いや、あの、その、何でもない」
「なんじゃ、あからさまに怪しいの」
「パパ、約束、約束っ」
「別に何でもないって」
こいつらの前でノジカとデートの約束をしたなんて、死んでも言えるか!
「オルメヴィーラ公、そろそろ出発の時間です」
ナイス! セレナ!
「そ、そうだな。セレナの言う通りだ。うん、よしっ! 出発しよう!」
「胡麻化したな」
「胡麻化しましたね」
「みんな、早く帆船に乗り込め! すぐ出るぞ」
「――ラック様、詳しいお話は道中でゆっくりと」
「は、はい」
ラフィテア、フレデリカ、ヴェル、そしてセレナ。
領地対抗戦に出場すべく五人を乗せた魔導帆船は帆を広げ地下迷宮ダンタリオンに向けて出発した。
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