エニグマの忌み子ー1
サブタイトルは変更するかもしれません(´Д`)
胸に傷を負いベッドの上でしばらく安静にしていた俺なのだが、セレナたちが王都に向けて出発するまでただのんべんだらりと過ごしている訳にもいかなかった。
理由は非常に簡単で、またもや目の前に問題が山積していたからだ。
まず、エンティナ領についてだが、俺は当然オルメヴィーラ領の領主である。
エンティナ領の事ももちろん大事だが、いつまでもオルメヴィーラ領を離れているわけにもいかない。
かと言って、今の状態のエンティナ領から去ろうものなら、領民たちが困窮する事は火を見るよりも明らかだ。
しかし、そもそもの話だ。
俺が勝手にエンティナ領を統治していいのか、という話にもなってくる。
この件に関してはセレナがユークリッド王に直接話を通すと言っていたが、それもどうなるかはわかったものではない。
どちらに転ぶか……。
まぁ、どっちに転ぶにせよ、追って通達が来るまでは仮領主としてやっていくしかないわけだ。
そんなこんなで今後についてどうするべきかラフィテア、ドワ娘の知恵を借り色々と相談に乗ってもらっていた。
「――いますぐこの地を離れるのは問題があると思いますが、ある程度落ち着きを取り戻したら、ラック様はオルメヴィーラ領に一旦お戻りになられた方が良いと思います」
「そうか。……ドワ娘はどう思う?」
「そうじゃな。オルメヴィーラ領も今が一番大事な時じゃ。エンティナ領にかまけているのも良いが、やはりおぬしがいるといないでは領民たちの心持も変わってくるとは思うぞ。それにまだおぬしが正式にエンティナ領の統治を任されたわけではないのじゃろ?」
「そうだけどな、ただ――」
「おぬしの気持ちも分からんわけではない。しかし、おぬしがこの地を離れたからと言ってここを見捨てるわけではあるまい?」
「当たり前だ」
「ならそこまで気にする必要もないじゃろ」
「そうか」
「ですが、やはりラック様がエンティナ領を離れるとなると、この地の代表となる副官は立てておいた方が良いかと思います」
「副官か、……そうだな」
「なに、なんなら耳長、おぬしがこの地の副官になってエンティナ領に残るという手もあるぞ」
「わ、わたしは、ラック様のお傍でやるべき仕事が沢山ありますので。そういうあなたこそ、いつも暇そうに過ごしているのですから適任なのではありませんか?」
「なんじゃと! なぜ婚約者のわらわがひとりこの地に残らねばならないのじゃ!」
「おい、おい、二人とも――」
でも、そうだな、俺もずっとここにいるわけにもいいかないし、やはりラフィテアの言う通り代理となる副官は必要になってくるか。
いがみ合っている二人を他所に適任者はいないかとしばらく思案してみたが、この世界であまり知り合いのいない俺には思い当たる人物は出てこなかった。
「なぁ、ラフィテア。誰か適当な人物に心当たりはないか?」
「そう、ですね、いるにはいるのですが……」
「なんだか歯切れの悪い言い方だな。なんて人なんだ?」
「はい、彼の名はオズワルド・モンスレー。ロメオ様がまだ剣王として前線に立っていた頃、参謀としてロメオ様を支えていたお方です。ロメオ様の退役後もシエル様と同じくこのエンティナ領に仕えていたのですが、ロメオ様が亡くなりしばらくしてこの地を離れてしまいました」
「そのオズワルドがいまどこにいるか知っているか?」
「いえ、わたしは存じておりません」
「そうか」
「シエル様なら、……もしかしたらご存じだったかもしれませんが」
となると手掛かりはなしか。
「ただ――」
「ただ?」
「古くからエンティナ領に仕えていた者なら、誰か所在を知っている人間もいるかもしれません」
それに期待するほかないか。
「ラフィテア、わかる範囲で良い。ここで働いていた人たちに一通り声を掛けてくれないか? 事情を話せば力を貸してくれる人もきっといると思うんだ」
「分かりました。いま直ぐにでも当たってみます」
「あぁ、よろしく頼む。……それからドワ娘、お前にもちょっと頼みたいことがある」
「なんじゃ?」
「クロマ商会と連絡を取って、急ぎここに来るように伝えて欲しいんだ」
「そんな事か。お安い御用じゃ」
「二人共、暫く俺はここから動けない。また忙しくなるとは思うけどよろしく頼む」
「かしこまりました」
剣王の参謀オズワルド・モンスレーか。
エンティナ領の為にも是が非でも力を貸してほしい所だが、はてさてどうなることやら。
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