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カンドニア

斗真は中心街から少し外れた建物の間の影から顔を覗かせた。

突然人前に出現したりしたら大騒ぎになるのではないかと思っていたが、その辺は和人…ウェアウィザードも考えてくれていたようだ。


「どのみち、この格好で歩いたら注目されるだろうけどね…。」


街並みも人々の格好も中世ヨーロッパ寄りだ。

そのため斗真の制服はかなり異質だ。

仕立て良く見えるから、ガラの悪い人達に絡まれる可能性もある。

『魔術師防御』は一戦闘分しか効果時間を持たないので、プレイ完了まで効果が及ぶ『グループ防御』の魔法を念のためかけておく。


視界の隅にキャラクターシートが浮かび、生命点が98に変化する。

確認が終わるとシートは景色に溶けるように消えた。


このゲームにはマジックポイントはない。

したがって魔法を使うと生命点が減る仕組みになっている。

斗真は魔術師だが、これは治療師や細工師の使う術にも共通する。

更にこのゲームは他職の術も使()()()()()()()ルールとなっている。

ただ成功率が低かったり、消費生命点が大きくなるので、多用は避けたいのが実状だ。


(治療師の椎名が掴まらないとなると、回復用ポーションは用意しておきたい…。それと、制服を少し隠せる外套も欲しいな。)


斗真はさきほどから椎名宛にメッセージを送ったり、電話を掛けたりしているのだが、既読になることも繋がることも無いままだ。

「戦闘中か…? うーん…。」


代わりにウェアウィザードからは長文メッセージと画像が届いていた。


―――このシナリオをプレイする上での注意点

①シナリオが終了すると、この世界の冒険は同時に終了。

 気が付けば俺の部屋にいるってことになる。

②スマホのバッテリー残量はシナリオの終わりまで減らない。

 途中で繋がらなくなっても困るし。

③特別にウェアウィザードの権限の一つを斗真に付与する。

 それはオリジナル魔法の創造!!

 ただし、俺に事前申告してOK出したものに限る。

 バランスブレーカーな呪文は許可出来ないからな。―――


「この世界の神っぽいメッセだな。(みわ)だけに。」


添付されていた画像はカンドニアのマップとアランらしい痩せぎすの青年の肖像画だ。

「アランさん…と言うか、眼鏡を取った新井先生の写真みたいに見えるな…。茶髪だけど。」


(アランがこの街の人なら、周囲の人や領主に聞き込みすれば居場所が判明するだろうが、シナリオに絡むとなると短期間逗留しているNPC冒険者という可能性もある。アランの件は冒険者ギルドか宿屋で聞き込みかな…。その前に魔術師ギルドで必要なアイテムを買おう。)


そのまま斗真はスマホを操作する。


『RRR…はい、こちらウェアウィザード。』

「何だかソレ慣れないな…。あと冒険中と言うより、普通に電話してる日常感がスゴイ。」

『ああ、そうだねぇ。都度都度スマホ描写も何だし、TRPGのリプレイっぽくしてみるか。』


WW :で、何? 街の情報とか?

斗真 :うん。第一にマップは貰ったので主要な建物の位置とかはわかったけど、他の情報が欲しい。

    第二は行動の宣言。これから魔術師ギルドで買い物後、冒険者ギルドでアランについて確認する。

    第三は魔法を作りたい。

WW :オッケー。まずカンドニアの街情報ね。

    港から王都へ伸びる道のおよそ中間に位置する中規模の街になるな。

    開けた平地で、高い塀で囲まれている。

    王都までの主要な道からは少し外れているけれど、行商や都に運ぶ荷も通るので、

    宿場や露店街は賑わっている。町は宿場で主に潤っている感じだね。

    自警団もいるけれど、人の出入りが多いので夜は喧騒も絶えない。

斗真 :巻き込まれる前に移動したいところだな。

    ライブRPG状態ってことは、ダメージ受けたら痛いんだろ?


和人の部屋で、キャラクターシートにダメージ値を走り書きしているのとは訳が違うのだ。

斗真は10ポイントのダメージを受けたりしたら、痛みのあまりうずくまり、次の戦闘行動なんか取れないのではないかと予測を立てていた。


WW :いや…だるくなって身動きがとりにくくなるくらいだと思う。

    足を痛めて移動が出来ない とかになると、クエストの遂行が難しくなるし。

斗真 :それくらいなら…まぁ。

    でもする必要がない戦闘なら避けていきたいもんだな。

WW :経験値もないゲームだしな。

    第二の宣言はこの後行動に移していいよ。

    前回のクエストが冒険者ギルドの依頼だったから、登録証は持っていることにしよう。


ウェアウィザードが言うと、キャラクターシートの”魔法の品々”にギルド登録証が書きこまれる。


WW :で、作りたい魔法って?

斗真 :うん…存在感を失くすというか…存在感が薄くなる魔法を作りたい。

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