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ぽんちゃん、ぽんぺんぷんぴんぱん!!  作者: I
Average DayLife (だいたいの一日)
1/4

ぽんちゃん、そんな出会いはびっくりするでしょ!






幸福になる方法は、自分で実験してみなければ分からない。

  ────ジークムント・フロイト 








文字が小さすぎて、読めなぁ〜〜〜〜い!!!


  ────ハズキルーペのCM featハリウッドザコシショウ









『きゅ、...っるめるん── ッぽぅ〜ん! ! 』





 朝。目覚まし時計が鳴るよりも早くに起きた。まだ夢見心地だけど、カーテン越しの温い朝日がわたしを現実にたらしめる。

 気持ちいい一日を予感させる。おはようを口ずさむ。



『きゅぅぅううッ......! おッ〜はッようっだっぽぅう〜っん!♪!』



 ん、──おはよう って返事する。挨拶はコミュニケーションのはじまりだ。微笑みあえば、それだけで幸せな気分になる。


 からだを起こす。羽毛布団を退け、和らげに目を擦って視界を明るみにしていく。




 そういやわたし、誰と挨拶したんだろう。





『ぽんっっっぽうん♪!!!! ぽゅっううぅぅ....ぅっつううぅぽっッ!!! !!!!!!


    !!!!ぽ!!!!』






 日常生活感にまとめあげられた自部屋に、ひときわメルヘンチックな生命体がなんか空中浮遊している。

 なんかもう全部見なかったことにしておトイレ行こっと。










 当たり前だった日常生活。時々その代わり映えの無さにうんざりすることはあったけど、今に思えば結構好きだったんだ。


 休日、何事も無く家族と過ごす日。

 LINEで友達と通話してたら、長引いて夜遅くまでになっちゃう日。

 わたしのことを歌っているアーティストを探して、Youtubeの再生ボタンと[関連する動画]からぴんとくるサムネイルを(今日もダメか)ってなるまで押し続ける日。

 みんなで集まった時に(わたしもオシャレもっとしなきゃな)って少しコンプレックスを覚えちゃう日。

 朝早くから親に最寄り駅まで送迎してもらって、友達と途中合流したりして目的地「取り敢えず東京」を知ったかぶりして楽しんだり。


 都会は息抜きで行くところじゃないな、と人混みと濁った空気を一日中で体感した。ただそんな東京の夜遅くの帰り、

 「いや......結構疲れたねー。次遊ぶ時は家にしよっか」

ってプラットホームでの別れ際で本音を吐いた子もいて、一生仲良くしたいと思ったりした。



  確かに実感だけでいうと変わり映えは無かった。でも箇条書き風に思い返してみれば、それなりに変化の見出せる日々で輝いていたんだ。後になって説明可能な日だからといって、楽しかった感情だけは本物なんだ。


 振り返るうちに、人生はミニマルミュージックだということに気付いた。ふたつだったり複数の音が同時に流れているように聴こえるけど、実はそれぞれテンポがほんの僅かに異なっている。

最初はなんかくだらない雑音の繰り返しとしか思えないけど、その違いは長く続くほどに顕わになっていって、そこに気付きだすと途端にすべてが結びつく──楽曲そのものを越え、──虚像のような音が想像のなかで膨れあがる。

 日は全て同じなようで、でも確実に少し違う日を過ごしている。それは日々となって積み重なっていき──いつか寿命が来た時、自分の人生を振り返ってみて「ああ、よかったな」って納得がいけばいいなと思った。

虚は、虚構かもしれない。でも意味付けとはそういうものだ。後で意味を押し付けて、自分なりに納得すればいいじゃないか。





今。  今?





 夕暮れ。廃工場の隅っこ。わたしは隅に追い詰められて号泣している〈終滅群〉を、冷たい色合いのブレードで突き刺し、


、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、

ぶ””っ...ッしゅ”うぅぅ── っぅ”う,うぅ”’ううう”ウウ!!!!!!!!!!!!!!




淡い墨のような[濃縮現実]を返り浴びる。凄まじい勢いの飛沫(しぶき)


 ぶわっぁ、っとわたしも号泣する。〈終滅群〉は砕け散る夢のように霧散する。

 

「......ぽんちゃん」

『ぽぅよ〜ぅん?』

「絶対に人選ミスだよ。わたし......嫌だもん、こんなの」


 どういう現実❓。

 変身が溶け去り、いつも通りの学制服に戻る。もっとも、どっちが『いつも』かは曖昧になりつつある。日常社会の歯車として鋳造されるいつもの時間と、────魔法少女的な存在でいる時間とで。


 あまりにも濃い現実の匂いが残っている。それこそ死なんかよりもっと現実味があって、必然的に〈存在それ自体>を強く意識してしまう。

 わたしがいるということ。世界があるということ。

 国という在り方。理性という現在主流の枠組みでしか物事を考えていないこと。

 もっとシンプルに、誰かが死んでいる今日に生きているわたしがいるということ。


 あまりにも強い実感に、気分が悪くなってきた。



 肩の上にひっついているぽんちゃんは、敵の残滓を見つめ続けている。


『その現実臭が大事だぽん。現実の原液みたいなものだから濃いのは仕方ないけど、それだけが虚構のような状態の君を繫ぎ止める』


「でも...ほんとにキツいって」


 魔法を行使するためには、現実を知らなくてはならない。それでも、鋭敏に感じちゃうんだ──現実を。 昔インターネットで見たリアルタイム世界人口を、肌身に感じさせられる。

 今、地球のどこかで名前も知らない子どもが死んだ。それもほんとうにいっぱい。同時に新しい生命が産まれた。人口爆発は紛争地域で荒野を踏み躙る兵隊をつくるため。

 こんな知覚は、まだまだ序の口だ。

 ──〈終滅群(アザーエンド)〉。現実の底に蠢く、群論系の悪意。敵の正体。

 戦い抜くことができるだろうか。




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