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朝日さんの面倒ごと  作者: 日の太郎
第1章
8/42

朝日さんは正義の味方ではありません

 朝日は困っていた。

 とてつもなく困っていた。

 ちょっと度がすぎた喧嘩程度だと思っていたのにまさかこんなことになっているとは。

 数メートル先で風切が倒れている立花を強姦しようとしている風景なんて見たくなかった。

 必死にあれは合意の上なんだと自分なりに考えようとするが立花の脇で「お姉ちゃん!お姉ちゃん!」と悲痛に叫ぶ女の子の声がいい感じに雰囲気を作り出している。


 (あっ、これはあかんやつね)

 

 あれに見つかったあとの展開はもう分かりきっている。

 しかし、それはなんとしてでも避けたい。

 そう思い、元来た道を戻ろうとする。

 いまから、先生を呼べばまあ、キスを奪われる...くらいで...おそらく...済むはずだ。

 もしかしたらプラスα少し奪われるかもしれないが。

 そう自分に言い聞かせながら空気の如くスッと草むらに戻ろうとするが、運が悪いことに女の子と目があった。


「あ、」


 しばらく女の子は朝日の方を見る。

 朝日も女の子の方をじっと見る。


「お兄ちゃん.......。お兄ちゃん...。お兄ちゃん! 助けて!」


 女の子が叫んだ。


「ああっ!誰かそこにいるのか!」


 風切もこっちに気づく。

 もうこれは無理だと思い俺は草むらから出て風切がいる方に歩いていった。


「なんだお前!何でこんなとこにいる!」


 唾を撒き散らしながら言う。

 こうなった以上、最悪の状況は避けられないだろう。ならばやることはできるだけ時間を稼ぐことだ。


「顔くらい知ってるだろ? 同じクラスなんだから」


 とりあえず無難にそう言ってみる。


「お前なんてしらね〜よ!邪魔するんじゃね〜!今いいとこなんだよ!」


 どうなら顔すら覚えてもらえてなかったらしい。


「そうかよ。そりゃ、ショックだね。もうクラス替えから時間が経ってると思ったけど記憶力悪いのかい?」

「お前みたいなザコ俺が覚えるか!俺は最高の能力者なんだ俺は誰よりも強い最強の能力者だぞ!」

「その最高で最強の能力者が立花を強姦か?聞いて呆れるな。それ、犯罪だぜ? 後悔することになると俺は思うけどな」

「さっきからグチャグチャうるせ〜〜んだよ!あ〜〜もう、頭きた。お前からまず殺してやるよ!」


 風切が武器の鉤爪を展開し朝日に向かって凄まじい速さで突っ込んでくる。


「お兄ちゃん!危ない!」


 女の子が叫ぶ。


「死ね!」


 そう叫びながら風切が朝日に斬りかかるが

 すんでんのところで風切の動きがピタリと止まる。


「は?」


 風切がそんな間抜けな声を出したかと思うと後ろの木に向かって吹っ飛んでいった。


「はあ、だから後悔するって言ったのに人の話はちゃんと聞いたほうがいい」


 上手く自分の能力が働いたらしい。あいつと話している時に罠を仕掛けておいて正解だった。

とりあえず、立花がいる方に向かう。


「お兄ちゃん、どうやったの!」


 立花の近くにいた女の子が聞いてきた。


「大したことはしてないよ。ただあいつの体とあの木を糸を透明にして結んでただけ」


 そう、朝日の能力は糸。

 体全身から糸を出すことができる。

 それを上手い具合に操って、風切と木をさっき結んででおいたのだ。


「でも、後ろに飛んでったよ!」

「それは、糸が伸びきったところで伸縮性を変えたからだよ」


 朝日は糸の伸縮性や長さ、太さ、硬さ、色を自由自在に操ることができる。

 そう言う能力だ。


「お兄ちゃん、すごい!助けてくれてありがとう!」

「まあな」


 これは戦わなくて済みそうだ。

 朝日は戦うのが嫌いだ。

 別に相手を傷つけるのが嫌だとか平和主義だとかじゃなくて自分が痛い思いをするのが嫌なだけである。

 どうしても戦わなくてはいけない時以外は極力さけている。

 とりあえず、風切が上手く罠に掛かって良かった。あとは風切を風紀委員会に受け渡して先生に知らせれば万事解決だ。


「ふ〜〜。楽に終わりそうで助かったぜ。お前らも災難だったな」

「うん、凄く怖かった」


 目に涙を浮かべて女の子が言った。


「だろうな」


 女の子に同情しながら気絶した立花を抱えてその場を去ろうとしたが


「イテェな〜〜〜〜〜〜〜〜あ!」


 後ろからそんな声がした。

 振り返ると風切がボロボロの姿で立っていた。糸の強度はかなり硬くしておいたから人間には切れないはずなのだが?


「お兄ちゃん!あいつね。変な機械持ってるの!なんか能力を無効にできるやつ!」


 それで糸を無効にしたわけか。


「テメェ〜〜〜〜!殺す!絶対殺す!」


 風切がまた突っ込んでくる。が、また後ろの木に向かって吹っ飛んでいった。

 仕掛けた罠が一つだなんて一度も言っていない。

 それよりあの能力を無効にする機械、他の仕掛けた罠が無効にされてないところからおそらく認識したものしか無効にできないらしい。

 しばらくしてから風切がさらにボロボロになって出てきた。どうやら今度は体に仕掛けられた罠を全て解除したらしい。


「コケにしやがって〜〜〜〜!」


 俺は糸を体から出すが途中から出てこなくなる。俺の能力自体を無効にしたらしい。


「これでお前もただの人間だ〜〜!」


 そう叫びながらまたまた突っ込んでくる。

 どんだけ突っ込むの好きなんだよ。

 もうその攻撃、フラグでしかない。

 案の定、凄まじい勢いですっ転ぶ。

 と言うのもコンクリート塀と木の間に糸を足元くらいの高さで張っておいたのだ。

 朝日自身の能力を無効にしたのに糸が消えないと言うことはどうやら朝日は能力を発動できないが、 すでに出した糸は無効にならないらしい。

 風切が鼻血を出しながら立ち上がる。


「#&/_¥$€%#☆1♪→1¥€$%」


 もうすでに正気ではないようだ。

 何を言っているのか全く分からない。

 そして、今までにない凄まじいスピードで突っ込んできた。

 もう一足飛びで朝日を切れると言うところでまた転ぶ。今までにない凄まじいスピードだったぶん凄まじい勢いで転んだ。

 それを見た俺と女の子はプッと吹き出してしまう。

 しかしこのままじゃ、きりがないので風切が立ち上がる瞬間を狙い左ポケットに入った機械を蹴りで破壊する。

 能力を使えることを確認すると風切を抵抗素早く縛り上げ横のコンクリート塀に叩きつけた。

 ピクピクと痙攣しながら風切が倒れる。

 どうやらやっと気絶したらしい。

 流石に8位と言うだけなかなかしぶといやつだった。朝日は特に何もしてないけど。


「ふう、やっと気絶したか」

「お兄ちゃん、強いね!」

「いや、あいつが勝手に突っ込んできて自爆しただけだろ」


 女の子にそう話していると


「私が来た意味はなかったようだな」


 そんな声が聞こえた。声のした方を見るとそこの空間が歪みある人物が出て来た。

 学院長仙崎(せんざき)(かおる)である。


「なんでこんなところに学院長が居るんです?」


 朝日は学院長に言った。


「いや、なに。風切が不審な動きをしていたんで尾行して現行犯で捕まえようと思ったんだが....。その必要は無かったな」


 やれやれと言う感じで風切の方を見る。


「居たんだったら、助けてくださいよ。どうせ今のを見て楽しんでたんでしょう」

「まあ、面白かったよ。今の」


 ククッと学院長が笑う。


「やっぱり〜。俺はか弱い生徒なんですよ。女の子も居たのに、なにかあったらどうするんですか」

「何かあるもなにも朝日、おまえが倒したじゃないか」

「俺は出来れば戦いたくないんですよ」

「その辺は前から変わらんな。まあ、後のことは私に任せろ」


 そう言うと携帯電話を出してどこかに電話する。


「お兄ちゃん、あの人知ってる人?」

「ああ、いろいろお世話になってるんだよ」


 学院長とはあることがきっかけで知り合いになったのだがそのあることは話すと長くなるし面倒くさいのでまた今度にする。


「朝日、ここにすぐ風紀委員会が来るように手配した。風切の処遇についてはそちらに任せよう。その女の子と立花に関しては私が病院まで贈りとどけるとしよう」

「ええ、お願いします」


 そう言うと俺は後のことはを学院長にまかせてその場を立ち去った。

 こうして今回の事件は幕を閉じた。

 その後、女の子は病院に戻り、立花は念のために入院したが心配はないらしい。風切に関してはこの事件の他にもいろいろな犯罪が明るみに出て能力刑務所送りになった。

 朝日はと言うと特に変わった事はなく、強いて変わった事を言えば学院長の計らいで学院順位が968位から900位に上がったくらいだ。これでしばらく決闘をしなくて済みそうである。

 そんなこんなで朝日の一日が終わった。

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