朝日さんは草刈りをしています
大空朝日は部室で暇を持て余し、マンガを読んでいた。
無元にあんな風に言ったのはいいが特にすることもないし、廃部の危機を脱するいい考えも思いつかない。
無元にはこの間、最悪誰かに名前だけ置いて貰えばいいと言ったのだが無元はそれでは納得いかないらしい。
そんなこんなで今はマンガを読むにいたっている。
ちなみに朝日はマンガやアニメ、ゲームの類は大好きだ。
家の自室はマンガやゲームで溢れかえっている。
その一部を部室にも持ち運んでいると言うわけだ。
5巻を読み終わり6巻を本棚に取りに行く。
「ええっと、6巻は・・・」
そんなことを呟きながら探していると
トントン!
ドアからノックの音が聞こえてきた。
無元が部室に戻ってきたのかと思ったがそれにしては早すぎるし、まず無元はノックなんてしない。
だとしたら誰が一体こんな辺境の部室にくるのだろうか?
というのも、この部の部室は学院のかなり辺境にある。
朝日達の教室である2年D組は学院の本館である第1号館にある。そこから一旦外に出て学院でもっとも古い第8号館の端も端、かつて理科準備室として使っていた場所をつかわせてもらっている。
普通の学校生活を送っていたらまずこないし、たとえ来たとしてもこんな奥までは来ない。
こんな場所よっぽどの理由が無い限り来ないのである。
そして、そんな場所に来る人を朝日は無元以外には一人しか知らない。
「朝日く〜ん、いますか〜?」
ガラガラとドアを開けてその人が入って来る。
「寧々先生。何か用ですか?」
そう、我らが2年D組の担任もとい今はミステリー研究部顧問の九童寧々先生である。
「朝日くんならきっとここにいると思いましたよ」
ふふふ、と可愛く笑いながら俺の向かいのソファーに座る。
「決闘は見に行かなくてもいいんですか?」
「別に見に行く理由もないですし、機龍とは話したこともありませんから」
「友達を増やすことはいいことですよ」
「そんなこと分かってますよ。だけどまだ転校初日じゃないですか。友達になれと言うほうが酷ってものですよ」
「まあ、それもそうですね」
「で、先生何の用でここに来たんですか?」
そう聞くと
「ええ、実は朝日くんに頼みたいことがありまして」
この先生が来る時はだいたい面倒なパターンが多い。
その予想はどうやら当たったらしい。
「それで、頼み事というのはここら一体の芝刈ですか・・・」
言われるがままに先生について行くと第8号館の裏に連れていかれた。
そこは草がぼうぼうに生えている。
第8号館の東側の裏は昔、美しい庭があったらしいが第8号館があまり使われなくなってからはいたる ところに草が生え、その見る影もない。
「そうです。察しがいいですね」
そう言うと草刈り鎌と軍手を出してきた。
「そう言うことで、今日はここの草刈りをします!」
「なんでまたミス研がそんなことしないといけないんですか」
「仕方ないのです。生活委員会の方でもう一度この美しい庭を再生して生徒の生活を豊かにする案が通ってしまったらしいのでやるしかないなです」
「なら、生活委員会がやればいいじゃないですか?」
「私もそう思いますが生活委員会は今、競技祭に向けての学校環境作りに忙しくてこちらには手が回らないみたいなので私達がやることになりました。大丈夫!先生もやりますから!」
そんなことを言いながら麦わら帽子に軍手をはめ、長靴を履いた先生が草刈りを始める。
「はあ〜。面倒くさい」
心底、面倒くさいと思ったが仕方なく草刈りをはじめる。
これは無元と一緒に決闘を見にいけばよかったかもしれない。
スマホの時間を見ると16:05だった。もう決闘が始まっている頃だろう。
「先生、もし決闘で機龍が負けたらどうするんですか?」
「唐突に聞いて来ましたね」
少し気になったのだ。
「そうですね〜。生徒間の非公式決闘なら私にもなんとかできるんですけど今回どうやら公式決闘みたいなんですよね。そうなると私には正直どうすることもできません」
「公式決闘⁈よく決闘委員会が許可したな!」
学院で行われる決闘は大きく分けて二種類ある。
非公式決闘と公式決闘だ。非公式決闘はいわば練習試合だ。決闘ではお互い対価を出すのがルールで 負けた方はそれを守らなければならないが非公式決闘では対価は形だけみたいなもので守る人はよっぽど真面目な人くらいだ。だが、公式決闘となると話が違う。公式決闘は決闘委員会と言うところが仲介し、公式大会と同じようにやる。そして、そこで出される対価は絶対に守らなくてはならない。守らないと最悪の場合、退学が言い渡される。だから決闘委員会がそうそう簡単に公式決闘の許可は出さないのだが。
「風切くんの権力はどうやら決闘委員会にまでおよんでいるそうです」
「それは、また大変そうな事態ですね」
「ええ、一般の生徒の権力がそこまで及んでいるのは由々しき事態です」
草をザックザック切りながら先生が言う
「だけど、私は機龍くんが負けるとは思いませんよ」
「それは、またどうして?」
「この学院が珍しいと言うだけの理由で一カ月前に能力を発現させただけの人を転校生として受け入れると思いますか?」
「あいつに何かあるんですか?」
「ふふ、気になります?」
「・・・まあ」
「なんと機龍くんは転入試験の時に学院長に勝ってるんですよ!」
先生が自慢そうに言う。
ちなみに学院長は強い、かなり強いのだがその学院長が負けるのはよっぽどだ。
「へー。それはスゲーな」
「そうでしょ。だから私も機龍くんがそんな簡単に負けるとは思っていないわけです」
そんなことを話していると闘技場から歓声が聞こえて来た。
どうやら決闘はもりあがっているらしい。
「ほらほら朝日くん、手が止まってますよ」
「あー、はいはい」
とりあえず今は草刈りに集中しよう。じゃないと終わらない。
(と言うかこの量は絶対に今日じゅうに終わらないだろ)そんなことを思いながら草刈りを続ける朝日であった。
誤字、脱字がありましたら申し訳有りません